構造設計を仕事にする: 思考と技術・独立と働き方

制作 : 坂田 涼太郎  山田 憲明  大野 博史  村田 龍馬  木下 洋介  名和 研  多田 脩二  鈴木 啓 
  • 学芸出版社
3.75
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レビュー : 1
  • Amazon.co.jp ・本 (272ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784761527174

作品紹介・あらすじ

安全とデザインを両立させ、理論を土台に建築を創造する仕事。その思考と技術、修業時代から独立、働き方まで、構造家の素顔を活躍中の16人に見る。難しい計算の仕事だけではない、建築家と協働し美しい架構を見出した時のワクワク感、安全への使命感、チームワークの醍醐味と達成感が味わえる。構造設計の世界へようこそ。

感想・レビュー・書評

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  • これからの進路に悩んでおり、構造設計の仕事とはどんなものか覗いてみたかったため、4日ぐらいかけて読了。

    ~~3 OUT PUT~~~~~~~~~~~~~~
    ① それぞれ自分に求められる役割が、その時の他者との関係でつくられるのだと考えています。
    ② 構造設計の醍醐味は、「形」に骨を通す感覚を味わえること
    ③ プロジェクトを通じて考えたことや活動内容を対外的に発信することも必要であり、そのような労苦を尽くす覚悟を持たずして構造設計事務所の活路は見いだせない。

    ~~感想~~~~~~~~~~~~~~~~~~
    構造設計者の生き方を覗くことが出来た。
    彼らに「安定」などといいう言葉が似合わなく、強いて言えば「学び挑戦し続けること」にこそ「安定」を見出しているよう感じた。
    憧れの山田憲明さんは「時代を超えて後世に引き継がれる建築には、背景や物語にも普遍的な魅力がある」と言っており、「木材を使って大きな構造物をつくるには、背景や物語が重要なのだ」ということにも大変共感した。
    この本の結びで金箱温春さんは、ゼネコンや組織設計事務所などで働くにしろ、アトリエ設計事務所で働くにしろどっちでも構わないが、自らが発信をしていく覚悟がないならば構造設計事務所なんて来ても居場所はないぞ、というようなメッセージが残されていたので非常に身が引き締まる想いになった。

    自分はまだ構造設計の魅力を肌で体感しておらず、構造設計の道に進む覚悟が未だに整っていないけれど、3月までに内々定を押さえておきつつ、あと1年かけて構造設計事務所でのアルバイトを経験しておくことは選択肢としてあるかもしれないと思った。直前になってどうしてもアトリエ構造設計事務所の道に進みたければ、就職先の内定を取り消してもらうことも考えたい。
    自分の中で大切なのは、自分の選択に責任をもつこと。子供が出来て大人になった時に、「お前の学費を払うために働いているんだ」という言い訳をつかないような選択したいと思う。

    ~~内容~~~~~~~~~~~~~~~~~~
    ¶0:序 構造設計の世界へようこそ──職能の歴史をひもとく | 小澤雄樹
    ・古くなった建物も、構造さえ健全であれば適切なリノベーションを施すことで何度でも蘇る。
    ・海外ではArchitect教育とEngineer教育は完全に分離しているのに対し、日本では建築家教育と構造家を含むエンジニア教育が、同じ建築学科の中で包括的に実施されている。

    ¶1 合理性だけでは成り立たない、構造の世界 | 坂田涼太郎
    ・自動車や飛行機、船などのプロダクトデザインよりも、建築はより私小説的に作られていると感じた/人の所作や感覚に大きく左右される側面があり、社会にとっての存在の意味が問われる。
    ・線引きのしづらい曖昧な感覚を取り扱う意匠は自分には向かない
    ・計算結果が建築の意匠とどう関わっているのか
    ・「なぜこの構造になったのか」論理的に説明できなければならない。
    ・完全な断熱や効率の良い空間配置、最も経済的な断面構成を実現すれば、必ずいい建築物ができるかというと、そうでもない。
    ●豊かな世界があるのは、人の感性が加わるからです。

    ¶2 木構造の追求──歴史・地域・思想・技術をつなぐ | 山田憲明
    ・建築プロジェクト自体が1つの物語/建築の物語を紡ぐ手助けをすることも構造設計者の重要な役割
    ・構造設計の仕事の物語の幅をどこまで広げ、どれだけ追及するかは、自身のスキルと環境次第です。/「建築のコンセプトやデザインまで深く関わりたい」「技術的に掘り下げて研究開発したい」と思っても、提案や開発するスキルだけでなく、それを必要としてくれる建築家、プロジェクトにかけられるコストとスケジュール、サポートしてくれる専門家、といった環境も揃わなければやりようがありません。仕事とはスキルと環境の鍛錬、その結果(業績)が相互に作用しあって構築されていくものだということ
    ●時代を超えて後世に引き継がれる建築には、背景や物語にも普遍的な魅力がある
    ・独立を目指した理由は、定年退職がなく裁量で仕事を続けられること
    ・大工を中心とした木構造を目指していくべきだという思考
    ●貴重な木材を使って大きな構造物をつくるには、背景や物語が重要なのだという木構造に対する考え方

    ¶3 手計算とコンピューターで、「形」に骨を通す | 三原悠子
    ●構造設計の醍醐味は、様々な建築家と一緒に仕事ができること、建築家が生み出す「形」を大きく掴み、工学的に肉付けし、実際につくることで、「形」に骨を通す感覚を味わえること
    interview 構造家との仕事の魅力 | 青木淳
    ・構造計算が計算のための計算ではなく、現実のモノをつくるための計算である
    ・建築家によって「建築」が意味することが違うように、構造家によって「構造」の意味は違うように感じています。だから、まずは一つひとつの仕事において、その構造がどのような位置づけに落ち着いていくことになるだろうかが見えてくるまでは構造家を決めずに、それが見えてきた段階で、その位置づけと相性がよさそうな構造家にお願いしようとしています。

    ¶4 形を決める仕事、形が変わる働き方・家族 | 大野博史
    ・一見すると複雑な形と架構をした建物でも、統一したディティールや一貫したルールを見出した時の興奮はなかなかのもの
    ・問題解決によって少なからず建築の形が変形し、再編成されていました/形を整える役割
    ●正解は1つではないという考えは、/無数の正解の中から何をどのように選択するかが、設計内容に個性として現れる
    ●「構造設計は不等式の世界である」
    ・社会人(構造家)としての価値判断は最初に就職したときの影響を強く受けます。
    ★それぞれ自分に求められる役割が、その時の他者との関係でつくられるのだと考えています。所属する集団の中でその役割を探し、自分なりのものを発見していくことで、本当の意味でその肩書を全うすることが出来る。

    ¶5 故郷で構造設計を仕事にする──地元の仕事から海外プロジェクト、そしてこれからの被災地復興 | 黒岩裕樹
    ¶6 海外に日本の構造設計を輸出する | 礒崎あゆみ
    ・スイスの素敵な所は、アトリエ事務所と組織事務所の区別が薄く、まちの規模も小さくて、まちの建物の多くが顔の見える建築家によって建てられている。自分たちが住む町を、自分たちの手で作っているという実感があります。

    ¶7 成長する構造設計事務所──年齢も事情も異なる人たちが高度な仕事を続ける場所 | 桝田洋子
    ・30代の10年間は力を蓄える時期と位置づけ、勉強しながら猛烈に働いていました。
    ・リノベーションでは、我々がこの時代を預かる感覚があります。/30年後にはもっと優れた技術が生まれているかもしれないので、取替えやすい形にしておく/このような特殊な技術があるおかげで、営業はしなくても仕事の依頼がある。
    column 構造事務所の働き方改革 | 武居由紀子

    ¶8 意匠から構造設計へ──より自分らしい建築との関わり方 | 村田龍馬
    ・自分の考えをシンプルな言葉でわかりやすく書くことは、自分の考えを整理することにほかならず、仕事をする上で最も重要な技術のひとつ
    ・設計を引き受けるなら必要な時間を確保したうえで全体を把握して設計しなければならないし、それが出来ない状況であれば一切設計に関わるべきではない

    ¶9 アトリエ構造設計事務所のすすめ──技術を軸に自立した人生を選択する | 木下洋介
    ・(会社などでは)経験を積んだ人たちが徐々に管理職になり事務としての設計を離れていく
    ・工学という先人が積み上げた理論を土台としている点が魅力
    ・(独立は)あるとき自分で決断するものですが、少なからず周囲がそんな雰囲気になったり、プライベートの状況から「今しかない」タイミングが来ることもあるかと思います。
    ・耐震補強自体がデザイン上も重要な要素となる
    ・木造梁のみでは経年により屋根のたわみが大きくなってしまうこと、接合部のゆるみにより生じる不具合等の木造特有の問題/このように木造にはほんの少し異種構造を混ぜることにより、木造の持つ魅力や利点を活かしながら、木造の可能性をさらに広げることができます。

    ¶10 新しい構造設計事務所のかたちをつくる | 萩生田秀之
    ・すべての分野でトップレベルの知見を1人で維持するのは困難です。/お互いを補完しあう人材がいます。様々な個性によるチームワークに魅力を感じ、独立ではなくパートナーシップを選びました。
    ・自主性とは、まずは設計する建築を自己の延長線上において自分の作品を想うこと、クオリティを上げるために手を抜かないこと、クリエイティブな思考をすることを意味します。
    ・安全性を確認しながら、架構の美しさと、移転への対応という2つの要求に呼応すること
    column 構造家とのコラボレーション | 山梨知彦

    ¶11 構造設計を学び続ける楽しさ | 松尾智恵
    ・構造設計とは教わるものではない。/どの本を見るといいのかは、先輩たちの行動を観察して選別しました。
    ・物事の先を見通して知ることを「予見」と言いますが、川口衛先生のもとで設計に従事してきた経験から感じることは、この「予見」する能力と「判断力」がとても大事ということ。構造エンジニアは、自身の「予見」に基づいて検証を重ね、数々の「判断」を通じて設計を洗練させていくからです。

    ¶12 すごろく的巡り──偶発的機会でつながるよこ道・わき道からの構造 | 名和研二
    ★「できる」ということの臨界点が単に構造解析の結論のみでないこと。そこでの表現も変わり、どういう方法で作るのか、どういう人が作るのか、ということに構造が寄り添う方法もあるということ
    ●「ちゃくみこうほう」/「いいアイデアを出す」ということが大事だとすると、その案を自分が出せるのが一番いいのですがなかなかそうはいかないこともあります。でも、例えば場の空気が悪いなと思ったら窓を開けてみるとか、のどが渇いてきたかなと思ったらお茶を買ってくる(茶汲みする)とか、そういうことで雰囲気が変わり結果的にいいアイデアがその場から生まれるんじゃないか。いいアイデアを出す会議で機能すること。そのように建設における構造を位置付けるならば、自分でもやれることはある。
    ★現在うまく機能していない一見捨てられている領域を「拾い」、より「広い」活動領域を社会に獲得していくことのお手伝いです。

    ¶13 構造デザインの実践と教育の両立 | 多田脩二
    column 構造教育における人材育成 | 斎藤公男
    ¶14 ローカルエンジニアリングと構造デザインの挑戦 | 山脇克彦
    ・地元で一般流通される建築材料を地元職人の技術で建設可能な工法で作り上げるローカルエンジニアリングのやりがいに目覚めました。
    ・一見難しい架構も、実績のあるありふれた材料を用いながら、その理解に設計者と施工者が節点を見出す協働ができる点、ローカルエンジニアリングの醍醐味です。

    ¶15 世界共通言語としての構造設計を武器に | 金田泰裕
    ・建築の分野には、実践知己な技術やルール(力学や法規)に関する知識と、歴史や哲学に基づく思考という2つの異なる能力が必要とされる
    ・情報買われた社会で、単なる「知識」の詰め哀れでは太刀打ちできない
    ・建築に関わる設計者、施工者までもが同じ教育を受けるという日本のシステムは珍しく、それは実務の設計環境におけるコミュニケーションの円滑さと、お互いの領域への歩み寄りによる発想の豊かさに貢献しています。
    ・法規と施工技術、資材の流通は、その場所に立つ建築の在り方に関わる制約であると同時に、「そこにしかできないもの」という特異性を見出す鍵でもあると思っています。
    ・同じ構造形式でも「合理性」の意味が国によって全く変わってきます。

    ¶16 良い建築は綺麗な骨組みでできている | 鈴木啓
    ・数学は苦手で苦労してきました。/大切なのは力学現象をイメージし推測する能力で、これは日々の訓練で培うことができます。

    column 構造設計者の生き方 | 金箱温春
    ●効率化され整った設計体制のなかで活動するか、自由度のある中で苦労しながら活動するか、それには優劣はなくそれぞれの生き方があり各自が決めていけばよい。
    ★プロジェクトを通じて考えたことや活動内容を対外的に発信することも必要であり、そのような労苦を尽くす覚悟を持たずして構造設計事務所の活路は見いだせない。

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著者プロフィール

坂田涼太郎構造設計事務所

「2019年 『構造設計を仕事にする』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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