PUBLIC HACK: 私的に自由にまちを使う

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  • 学芸出版社
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  • Amazon.co.jp ・本 (208ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784761527198

作品紹介・あらすじ

規制緩和、公民連携によって、公共空間の活用が進んでいる。だが、過度な効率化・収益化を追求する公共空間はルールに縛られ、商業空間化し、まちを窮屈にする。公民連携の課題を解決し、都市生活の可動域を広げるために、個人が仕掛けるアクティビティ、しなやかなマネジメント、まちを寛容にする作法を、実践例から解説。

感想・レビュー・書評

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  • 「ビッグイシュー418号」を読んで紐解く。
    路上ライブやストリートダンスや大道芸などがどんどん規制されていて、私たちは決められたところでしかそういうことは出来ないと思い込んでいないか?

    公共空間は、工夫さえすれば、実は「私的に自由に使う」ことができる空間である。

    水辺でランチ、チェアを持ってビール缶を飲む、川が見える場所でBAR、くにたち0円ショップ、アーバンスペースディスコ、ストリートダンス、外朝ごはん、公園で寝袋野宿、芝生の上で映写機とスクリーン使って映画会、河川敷でカラオケ、路上ライブ‥‥これらは全部届け無しで利用可能です。

    やって良いこと、悪いこと、をどのように見極めていくか。法律は道路法、道路交通法、都市公園法、河川法などがあります。自治体ごとに違うので、確認する必要があります。詳しくは読んでもらうとして、法律をどう読み解くかが大切です。
    「何人も、交通の妨害となるような方法で物件をみだりに置いてはならない」→裏を返せば、通行の邪魔にならないスペースであれば、テーブルを置くことは禁止されていないこと。
    「場所を移動せずに露店や屋台を設置する場合をはじめ、道路の交通に支障が出る行為には許可が必要」→ビッグイシューのような手売りや、車両を用いた販売形態など、ただちに移動可能な用意で露店すれば許可は不要。
    (都市公園法)「占有行為には許可が必要」→私的な個人使用、グループ使用とみなせる内容(規模・時間)の行為(=自由使用)であれば許可不要。

    ただ、やはりというか、「通報される」と、警察は法律度外視して止めにかかってくるそうです。そうならないための対処法も書いています。

    法律は時代と共に変わります。
    公園でのボール遊び禁止、渋谷区でのハロウィン期間中の路上飲み禁止は、昔はありませんでした。自分で自分の首を絞めない。自分で禁止を作らない、ことが大切ですね。

    また、著者は公共空間の使い方のノウハウだけを述べているわけではなく、使うことはどういう意味を持つのか、きちんと提案している。また、自治体の先進的な取り組みも紹介している。やってみる、そのことが大切。路上ライブも、本来ダメだけど通報されたら禁止するというところも有れば、単に見つけるだけならば声かけて終わるところもある。法律が何を求めるているか、を踏まえての対応なので素晴らしいと思う。

    花見じゃなくても、気を向いた時に仲間を誘って「水辺ダイナー」なんて、気軽にできたら良いなぁと思う。

  • バルセロナに行った際、夕方5時を過ぎると市民が街に繰り出し、何をするわけでもなく、ベンチに座って談話したり、孫と祖父母であろうひとたちがただただ歩いていたり、犬の散歩をしたり、出会った人と挨拶をかわしたり、夕暮れまでの各々の時間、多くの人が街を楽しんでいるのが印象的でした。日本にはない景色だったし、とても素敵だなぁと思いました。
    この本を読んで日本人はそこにある素晴らしい自然とか時間とか季節の移り変わりを日常的に過ごし楽しむことを忘れているのかなぁと思った。日々忙しく働き、休みの日くらい家でゆっくりしたい、でかけるにしてもどこに、何をしに、などと目的を持って過ごす。昨日何をした?って聞かれたら特に何もしてないよって答えの部分にあるバルセロナのような過ごし方をしたいなと思った。

  • すごくよかった!

    今の社会では、お金を使って楽しむのが当たり前になっているけど、この本のように自ら遊びの場を作って楽しむのもいいなと思った。

    日本は公共空間の規制が厳しいけど、こんな風に自由にみんなが集まれる場所があるといいな。

  • 公共空間において、個人が自分の好きなように過ごせる状況を実現すること、「PUBLIC HACK」。システム的で想定された利用しか許されない公共空間よりも私的にまちのスキマや空スペースを利用して思い思いに過ごせるような公共空間を実現したほうが楽しいまちとなる。そんな発想で「PUBLIC HACK」の実践者、持続するコツが紹介される。

    近年、公民連携で賑わいを目的に民間事業者が公共空間を経済活動の舞台に変え、経済力のある市民や観光客を呼び込むことが多い。行政もお金を落としてもらえることになるが、幅広い市民への公共サービスを高める取り組みは起こりにくくなる。「PUBLIC HACK」により「私的にまちを自由に使っていいんだ」と感じる市民が増えれば、空間の管理者、利用者、地域の人の協力・理解ではじめてみんなの公共空間が実現する、とのことだった。管理者側はマニュアル作成の際、ほかの利用者の迷惑になってないかを判断材料として、一律禁止のような取り決めはしないほうがよいよう。管理者の影が薄いと利用者同士が公共空間での過ごし方・使い方を学び考えていくきっかけにもなるとのこと。まちを楽しく暮らせる場にしたい。行為が行われているまちの現場そのものが価値ある、という指摘は意識しておきたい。

  • 街の中のパブリック空間を自由に使っている様が非常によかった。

    人の何気ない行動が、パブリックの使い方や場を作り出す様を解説していて、非常に楽しく読めた。

  • 公共空間において、個人が自分の好きなように過ごすための実例が書かれていた。
    何事においてもお金を消費してサービスを受けることに違和感を感じなくなっている現代人にとって、外で無料でできることの多さを教えてくれる。

  • 街を自由に使うことについて。
    街の広場に興味を持って読んだ何冊かの一冊。

    読み進めるうちに自分の興味のあるのは「街の広場が人々の営みや文化に与える影響。或いはその逆」にあるなとまとまってきた。

    この本で触れられている「目的がなくてもいられる街へ」「街をつかうのに大義名分はいらない」というテーゼには大きく共感する。

    街を使うといういみで重要なのはスケートボードだよなぁ。街を滑走するのは気持ちよさそうだ。

    街を自由に使うということについて考えていくと公・パブリックということに行きつくと思う。

  • たくさんの事例が紹介されていて楽しい。
    なんだかちぐはぐ感のあるたくさんの規制や制限について、
    その規制や制限がなぜ設けられたのか、
    本質、理由をきちんと理解して、
    うまく寄り添って付き合っていく。
    柔軟。寛容。多様。

    自己責任なら何やってもいいでしょ!という
    スタンスともちょっと違うのもよかった。

    ごくごく私的なハックに始まり、
    公民連携の話まで繋がっていったのもよかった。
    やっぱり、公共の力って大きいと思うので。

    中間解のない極解が多いなと感じる最近の社会で
    少し呼吸が楽にできるようになりそうな、
    そんな本でした。

  • 街のスキマを活用して私的に関わっていく実践の事例集。
    野外シアター、長しコタツなど。野外作品展なども取り上げてほしい。

  • ざざっと読んだ。公共空間が面白く魅力的な場所になるためには杓子定規にならない寛容さが必要で、さまざまな人を受け入れられる余白があるべきなんだなあとおもう。自分はそういう場所を管理する側の人間なので色々と思うところがある

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著者プロフィール

水辺のまち再生プロジェクト事務局。1981年大阪生まれ。大阪大学大学院工学研究科ビジネスエンジニアリング専攻、経済学研究科経営学専攻修了。ともに修士。2005年から水辺のまち再生プロジェクトに参画し、大阪市内の河岸空間や橋の上、河川水域を活用したイベントを数多く実施。近年は、水辺をはじめ路上や公園、公開空地などの公共空間に視野を広げ、「自由使用」の視点にたった生活目線の実践・提案を行う。2007年株式会社大林組に入社、不動産開発・コンサルティングに従事。2015~2018年に出向、エリアマネジメントに従事。現在は育児のため休職中(2019年時点)。2017年よりNPO法人とんがるちから研究所研究員。地域の担い手育成のための調査・研究、演習を行う。共著書に『あたらしい「路上」のつくり方-実践者に聞く屋外公共空間の活用ノウハウ』(DU BOOKS)。

「2019年 『PUBLIC HACK』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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