- Amazon.co.jp ・本 (278ページ)
- / ISBN・EAN: 9784761531393
作品紹介・あらすじ
歴史的な建物を保存するだけでなく、現在の生活に活用しようとする行政、建築家、街づくり関係者必携。最新動向を踏まえた改訂版。現場で役立つ手引書。
感想・レビュー・書評
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茅葺屋根のところだけ抜粋して読了。イギリスやドイツの茅葺き技術気になる。さらりだけしか書いてなくてもっと突っ込んでいきたいところがいくつもあった。ここで生まれた疑問をきっかけにして知識の幅を広げていきたい。論文とかももっとネットで読めるようになればいいのになー。ドイツ語の文献も読解できるようになれればいいんだけど、グーグル翻訳もまだそこまでの性能ではないし、自分で頑張るしか無いな
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まちづくりにおける歴史的遺産(建物など)の活用の現状と課題について、現場で保存・活用等に携わっている専門家が具体的事例に基づき報告したもの。歴史的遺産を残し、活かしていく重要性は言うまでもない、という立場から出発しているので、「そもそも歴史的遺産の保存等は必要か」という観点からの議論はなされていない。写真多数。参考文献一覧あり。
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歴史的遺産の保存・活用とまちづくり<改訂版>/大河直躬、三舩康道ほか/東京書籍
伝建地区における歴史的遺産の保存(p.57)
・1976年より現在(2005.12)までに全国で36都道府県73地区が制定されている。
1)伝統的建築物群保存地区制度の特徴
・1975年の文化財保護法改正により「伝統的建築物群」が文化財の種別の一つに加えられた。
・「伝建地区」は、都市計画(都計外では、市町村の保存条例に基づき)として決定する。
・地区内の建造物等は教育委員会の許可なしには現状変更できない。
・市町村の保存制度あり。
・税制優遇措置あり。
→文化財保護制度と比べると、市町村の主体性、自主性を尊重し、まちづくりの視点を強く持った制度。
→歴史的個性が卓越する地域におけるまちづくりのための地区計画の一種とも言える。
2)保存計画
・1973年度より「伝統的建築物群保存対策調査」(調査費補助)として全国で142地区で実施済み。
・防災計画策定調査もあわせれば195件実施済み。
・「保存地区」では、「保存の方針」、保存すべき建造物(伝統的建造物)や環境構成物件(環境物件)を定め、その「保存の基準等」を記す。
・その他の一般の建造物の「修景の方針」、防災施設や管理施設、訪問者への利便施設等の「整備計画」を立てる。
・所有者等が行う修理・修景に対する経費補助や融資、資材提供等の「支援措置」の概略を決める。
3)修理と修景
・伝建地区内では、伝統的建築物のみならずその他の一般建築物の現状変更、土地形質の変更等、地区内で行われる行為のほとんどが許可申請の対象となる。
・ただし、その規制は主として外観上認められる位置、形態、意匠を対象としている。(内部など通常望見できない部分は及ばない。)
4)経費の補助と税等の優遇措置
・補助内容は、市町村が独自に決定する。
<補助>
外観の修理(2/3〜8割程度、限度額:600〜800万円)
外観の修景(6割〜2/3程度、限度額:400〜600万円)
※国費は、市費の1/2〜65%。
<税制優遇措置>
固定資産税:建造物=非課税、土地=軽減可。
相続税、贈与税:財産評価額の30%控除)
5)その他
<建築基準法の適用>
・条例により緩和することができる。(13市町村18地区で実施)
(構造、防火、採光・換気、道路内建築制限、建ぺい率、容積率、高さ等)
<防災の取り組み>
・防火水槽、消火栓等の防災施設整備を実施してる。
歴史的遺産を核とした住環境整備(p.92)
「街なみ環境整備事業」の特徴
・景観に関する条例、要綱、協定などによって一定のルールが設けられていることが事業採択の要件の一つとなっている。
・補助対象に「電線の埋設」や「住民による協議会活動」が含まれている。
成功事例紹介(p.215)
「黒石市中町(重要伝統的建造物群保存地区)」(青森県黒石市)
「門司区門司港(警官形成地区型)」(福岡県北九州市)
「会津若松市(景観協定型)」(福島県会津若松市)
「遠野市 遠野ふるさと村(国の補助事業の利用)」
「足利市(史跡中心の面整備事業の機会利用)」(栃木県足利市)
「長浜市 ?黒壁(第三セクター方式)」(滋賀県長浜市)
「新井旅館(NPOによる歴史的建造物の取得)」(静岡県伊豆市)
「伊勢市 ほはらい町(企業による権利の取得)」(三重県伊勢市)
「城崎町(商業地における模様替え工事)」(兵庫県城崎町)
「糸魚川市 雁木通り(高度化資金による雁木の復活)」
「浅草伝法院通り(東京都「地域連携型モデル商店事業」)」(東京都台東区)
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歴史を経た町並のなかの町家や洋風建築を修理して、外観を元の姿に戻すことが各地で行われています。歴史的な建物を保存し修復することは、以前ではかなり立派で有名な建物に限られていました。大規模な宗教建築、偉大な政治家が住んだ家などから始まり、芸術的な、あるいは歴史的な価値の大小がその選定の基準でした。保存の対象は20世紀に入ると次第に広がり、庶民の住まいである民家、明治時代の官庁や銀行等、さらには民家等が集まってつくりだした町並景観へと対象は拡大されてきました。文化財保護法の改正によって始められた文化財登録制度のおかげで、工場・トンネル・ダムのような近代の産業遺産も文化財として評価され、登録されるようになりました。歴史的遺産の保存は、近隣の人々の共感を土台にして進められているとともに、一方で世界的に多くの人々の関心を集めながら進められています。