創造農村: 過疎をクリエイティブに生きる戦略

制作 : 佐々木 雅幸  川井田 祥子  萩原 雅也 
  • 学芸出版社
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  • Amazon.co.jp ・本 (272ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784761532093

作品紹介・あらすじ

その土地の自然と人間の持つ創造性によって、新たな文化、産業や雇用を生み出そうとする「創造農村」の動きが、日本各地へ広がろうとしている。本書では、アートや食文化による地域再生、オルタナティブツーリズムによる都市農村交流など、各地の自立した試みを紹介するとともに、条件不利地域に秘められた可能性をひらく。

感想・レビュー・書評

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  • 大阪樟蔭女子大学図書館OPACへのリンク
    https://library.osaka-shoin.ac.jp/opac/volume/620512

  • 農業に関わってきたが、農村のことはあまり考えたことはなかった。
    「創造農村」ということは、どんなことか?
    を学んでみる。

    【概要】
    内的持続的発展から、創造都市に発展し、それがさらに創造農村と展開している。
    大量生産、大量消費、大量廃棄の時代から、生産技術の向上とグローバル化と情報の洪水化によって、農産物やあらゆるものが、過剰生産と過剰供給が進んでいる。
    飢餓を前提とした食料政策の転換がはかられる時は、二十数年前にあるが、実行されていない。人口は都市に集中し、交通の便が良くなることで、若者たちは都市で働くチャンスを求め、地方と農村は、過疎が急激に進んだ。
    さらに日本は、人口減少と高齢化を迎えている中で、この問題を解決するには、クリエイティブで、人と人のつながりがあるアートフルなコミュニティ作りが求められている。

    【創造農村の調査項目】
    その地域における最適値とは何か?を探ることが重要な意味を持っている。
    ① その地理的状況、人口動態、つまり 基礎データ。
    ② 地域資源とは何か?
    ③ まちづくりの基本とコンセプト
    ④ 地域文化振興などの取り組み事業の状況
    ⑤ 特徴的な条例など
    ⑥ 創造的事業を進める団体、NPO
    ⑦ 産業大学民間の交流
    ⑧ 特記事項。
    確かに、このフォーマットは必要である。

    【創造農村のアプローチ】
    創造農村の早くからの取り組まれている事例からのアプローチの方法論
    「人・土地・村の三つの空洞化」さらに その土地に住む「誇りの空洞化」をどう解決するかにある。
    ① 創造的人材の獲得とオフィイスや環境づくり。
    徳島県神山町 グリーンバレー
    アートインレジデンス、ワークインレジデンス
    やりがい重視の仕事観。
    ソフトコントロール(ゆるい管理)
    仕事ではなく、居住地を決める。アウトドア。
    ② アートによる自然再生 
    越後妻有トリエンナーレ。→ 瀬戸内国際芸術祭
    中之条ビエンナーレ
    直島からの芸術発信。アートの島。アートの島。
    ③ 伝統芸能を創造産業化する。
    →わらび座、たざわこ芸術村
    古代から未来に続く民族の想像力
    和風ふりかけでなく、土俗的パワー。
    人々の生活の根っこの部分と共鳴する・共振するもの。
    篠山らしさ。一般社団法人 ノオト
    ④ 日本で最も美しい村 →北海道美瑛町;「小さくとも輝く自治体」
    小さな町の素敵な音楽会木曽音楽会 木曽学研究所 
    木曽町のまちづくり条例
    元気作り、暮らし作り、ものづくり、人づくり、まちづくり。
    ⑤ クリエイティブツーリズム ワインツーリズム
    ⑥ 食文化による在来作物の復活
    山形県鶴岡市 食文化創造都市
    「よみがえりのレシピ」奥田政行 アルケッチャーノ
    知憩軒、菜あ つけもの処本長
    山形在来作物研究会
    ⑦ 女性による起業 農産物直売所、農産物加工場、農村レストラン。
    自分たちで、労働対価を得るようになる。嫁口座ができる。
    一般的互酬性

    【創造農村の定義と思想的系譜】
    佐々木はいう「地域の自然環境や伝統文化が持つ本物の固有価値の再発見・再認識」により「住民の自信と誇りが回復する」。

    農村および地域を「創造の場」にすることで、セレンディピティ(新しい価値を発見する能力)が生まれる場とする。By チャールズランドリー
    リチャードフロリダは、創造階級の重要性を強調した。
    それが、創造都市論の源流となってくる。
    ランドリーやフロリダは、あくまでも人間を主体とした創造都市論となる。
    佐々木は、「市民一人一人が創造的に働き、暮らし、活動する都市」と創造都市を簡潔に定義している。

    創造農村は、豊かな自然と生態系を保存する固有の条件があり、固有の地域に伝えられている伝統的な文化がある。そして住民参加の地域自治組織の確立。
    創造農村の源流は、ジョンラスキンとウイリアムモリスに遡ることができる。
    生命を維持する自然環境を最も重視し、生命を充実させるものとしての学術・文化の重要性をラスキンが強調し、実践した。
    土地は、二つの価値がある。食料とエネルギーを生み出す価値があり、鑑賞と思考の対象となって知力を生み出す価値がある。とラスキンはいう。
    →ナショナルトラスト運動の指導理念となった。
    ラスキンを師としていたモリスは、「美しいものを作るべき人は、美しい場所にすまなければならない」という。
    →ラスキンやモリスの影響を受けた 宮沢賢治は、羅須地人協会を設立して、「農民芸術概論綱要」を著した。創造農村の先駆者とも言える。

    日本的な思考としては、自然と生態系から、人間の創造性が生まれるという創造都市論が必要であり、その実戦の場は 農村にあるとも言える。
    佐々木が、グローバルな視点で、思想的な源流を明らかにして、自然の豊かさと生態系を重んじた日本的創造都市論と創造農村を提案した。

    大都市
    情動、社会的関係、習慣、欲望、知識、文化回路からのスキルの集まりを収蔵する社会環境。そのために予測できない偶然の出会いやチャンスがある。そこでは、創造的な生き方ができるものでしか、生き抜けない。
    心の充実を図るアートや音楽などの創造的な仕事が今後の大きな推進力となる。

    過疎であるから、創造的になる。
    デマンドバス、スーパーやガソリンスタンドの地域住民の自主運営。
    デイサービス、ごみ収集のシステム化
    ヒューマンサイズの地域づくりが求められている。
    創造農村ワークショップ。そして、創造都市ネットワーク。

    物理的距離(もの)、社会的距離(こと)、心理的距離(こころ)。
    日常生活における問題解決における個人にとっての新しさ 小文字の創造性
    芸術や科学をはじめとする社会にとっての新しさを生み出す 大文字の創造性

    生物多様性とは何か?それをどう生かしていくのか?
    生態系サービスは、基盤サービス、供給サービス、調整サービス、文化サービス。
    存在価値ではなく、サービスとしてどう展開するか。
    生態系の多様性と文化多様性の両者の絡み合い。多様性の総和が多いほど生き残ることができる。

    都市住民の考える理想的な田舎暮らし(農的暮らし)
    都市住民は農産物の生産ではなく、農村体験や農への一時的参加で充実した時間を過ごす自己実現に関心を持っている。
    佐藤可士和は 農業ではなく、農を楽しむ アグリライフを提案。
    カルチュラルランドスケープ
    宇治茶は、宇治だけで生産されていないようになってしまったのは、なぜか?
    ワインは、食文化や対人関係を豊かにする。地域に根付いた生産とワイン畑の景観
    → ワイナリーツアー
    地域生態系や付随する文化も含めて、地域全体をマーケティングする「プレイスブランディング」農村の地域アイデンティティを作る。

    創造農村の系譜を十分に理解して、地域における最適化のイベントを組み立て、それを支えるキーパーソンの重要性と、地域からの情報発信と持続性が鍵を握る。

    日本的な創造農村は、実際の実績があり、その実績から何を学び
    どう広げていくのかが 重要な意味を持っているのだろうね。

  • たまにはまじめに。笑


    沖縄・読谷の事例を確認するために読破。

  • 貸し出し状況等、詳細情報の確認は下記URLへ
    http://libsrv02.iamas.ac.jp/jhkweb_JPN/service/open_search_ex.asp?ISBN=9784761532093

  • 神山町に行く前の予習として、該当箇所のみ、つまみ読み。

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著者プロフィール

1949年生まれ。大阪市立大学名誉教授、同志社大学客員教授、文化庁地域文化創生本部主任研究官。金沢大学(1985-2000年)、立命館大学(2000-03年)、大阪市立大学(2003-14年)、同志社大学(2014-19年)などで教授を勤める。京都大学大学院経済学研究科博士課程修了、博士(経済学)。文化経済学会〈日本〉元会長。国際学術雑誌City,CultureandSociety(Elsevier)初代編集長。一般社団法人創造都市研究所・代表理事。創造都市研究の世界的リーダーで、ユネスコ創造都市ネットワークのアドバイザーも務める。著書に『創造都市の経済学』勁草書房『創造都市への挑戦』岩波書店、編著書に『沖縄21世紀への挑戦』『創造都市と社会包摂』水曜社『創造農村』学芸出版社などがある。

「2019年 『創造社会の都市と農村』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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