読む心・書く心: 文章の心理学入門 (心理学ジュニアライブラリ02)

著者 :
  • 北大路書房
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  • Amazon.co.jp ・本 (132ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784762822797

作品紹介・あらすじ

題名をみて「国語の参考書か入試攻略本かな」と思う人がいるかもしれない。本書は,文章を読んだり書いたりする時に,頭の中で何がおこっているのか,読む・書く時の心のしくみについて知ってもらうための本である。この本を読むことで読む時書く時に,自分の心を見つめるまなざしが変わってくるはずだ。

感想・レビュー・書評

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  • 認知心理学をもとにした読解、作文のハウツー本。と言ったら、叱られるだろうか。

    しかし、個人的な成功体験をもとに指導されるよりも、認知科学的なエビデンスをもとにハウツー指導する本書の存在はある意味、貴重だ。参考文献、引用文献もしっかり挙げられており、研究書としての位置付けも出来る。

    ・読解能力の高い人ほど、新しい単語に出会うと推測によって意味をとらえて新しい語を学習し、語彙を増やしていくことができる。

    ・P83批判的読みチェックリスト(語の用法は明確であるか、証拠となる資料・事例は十分に整っているか、論の進め方は正しいか)は、書くときの参考にもなる。

    ・P95書く過程の解剖図 中でも、プランニング、翻訳、推敲の往還。

    ・書き出しで悩まない。

    ・ワープロを用いた作文についての心理学研究を見ると、ワープロを使用すると、あらたなプランニングをすることが少なく、読み返すだけのことが多くなるという指摘もある。

    ・3つの変える。1.読み方・書き方のやり方を変える。2.読む・書く文章のジャンルや内容を変える。3.違う目的や場所で読むように変えてみる。

  •  文章理解や執筆という活動を心理学の立場を用いながら書いたもの。とはいえ、あんまり心理学心理学していないので、そんなに深く考えなくてもいい感じ。そのぶん、「心理学」という点に惹かれた場合には、若干ガッカリする可能性もあったりなかったり。

     秋田さんは繰り返し、本書の内容と「受験国語」との差を意識されるようなことを述べていますが、十分「受験国語」に対応した内容だと思うんだけどなあ。もちろん、受験参考書ではないので、これを読んだからといって、国語の偏差値が上がるわけでもないだろうけど。
     たとえば、「受験国語」の指導者が本書を読んで、その指導に取り入れていくっていうのは、むしろアリなんじゃないかと。

     薄い本だけど、いろいろ書いてます。お子様ランチも食べてみると意外においしくてお腹も一杯!とかそういう本。


    【目次】
    序章 読者のみなさんに伝えたいこと
    1章 読むことはつなぐこと
    2章 理解を確かめる
    3章 書くことは気づくこと
    終章 「読み方上手」「書き方上手」になろう

  • ヘルマン・ヘッセ「少年の日の思い出」を読んでいるとき、中学生女子から、「文字を追っていても全く内容が頭に入ってこない」との感想を受けて、読もうと思った一冊。彼女とは逆に、文章の内容が、頭に入ってきているとき、何が起こっているのか、参考になればと思った。そして、とても参考になった。

    p24に「目で字面を追っても、ぜんぜん頭に入らないという経験をしたことがあるかもしれません。それは、読む気がしない、気が散っているなど、読み手が積極的にかかわれないときです」とある。この本自体は、「読む」「書く」というのが、どういった心の働きによって出来ているのかを説明する本なので、なぜ「読み手が積極的にかかわれない」のか、モチベーションの仕組みについては、残念ながら分からない。ただ、一語一語を繋げて、文を理解し、さらに一文一文を繋げて、文章を理解していく「読む」ことのプロセスについて、とても分かりやすく理解できた。(ボトムアップ処理というやつ)

    個人的に一番なるほどと思ったのは、p13のタイトルの付け方によって文章の解釈が変わるという実験と、p47の文章構造の知識によって、構造の整った文章ほど記憶に残りやすいという話。どちらも話自体は、知っていたのだが、最初に挙げた中学生の感想と合わせて改めて、なるほど、と思った。
    この本では、『水戸黄門』と『ドラえもん』が例に上がっていたが、「お決まり」の展開があって、これからきっとこうなるだろう、という期待があるからこの二つの物語は、ワクワクしながら楽しめる。ある意味、「少年の日の思い出」のような物語に対して、単純に言葉や表現が難しかったということもあろうが、こうした物語的な期待が持ちにくかったことも内容が入って来ない理由の一つだったのだろう。(トップダウン処理というやつ)

    この手の文章理解に関わる認知心理学は、大学生のころにも勉強したはずなのであるが、すっかり忘れていることも多かった。とても分かりやすい入門書なので、人といっしょに読み書きをする機会のある人や、自分自身の読解力に限界を感じている人が、自分たちの読みを振り返るための入門書として、おすすめだと思う。

  • 【貸出状況・配架場所はこちらから確認できます】
    https://lib-opac.bunri-u.ac.jp/opac/volume/491921

  • ・内的辞書、生活に最低限は3,000語、新聞は1年間3万語、このうち頻出が1.5万語、小6までで2万語
    ・ウィンブルドンとライブハウス、ラケットとギター、読み手の知識で理解が変わってくる
    ・様々な要約。削除、言い換え、自分言葉
    ・様々な推敲。行間効果や調和逸脱という逆テクニック

  • 文章を読む・書く際に、どんな認知機能をもって「読んで、理解する」「書き、推敲する」を行っているのかを認知心理学の観点から解説してくれる本。なぜ読みにくいの?なぜ書きにくいの?といったところも理由・実験結果つきで中高生にも理解できるように書かれているので理解しやすかった。

    ”文章は「はじめ・なか1・なか2・まとめ・むすび」で構成されており、なか1,2を考え、まとめ・むすびを考えている間に、はじめと題が思いつく、という書き方がスムーズ”
    など、学校で習ったことがあり頭のどこかでは知っているけれども忘れていることを思い出させてくれる。

  • 認知心理学に基づいた読み方・書き方ストラテジーの解説。中高生向けに書かれており非常に読みやすい。

  •  名著の名高い本書であるが、本当に名著だった! 素晴らしい!
     読書心理学、また文章執筆心理学の基本が実に分かりやすく書かれている。また、批判的思考の方法、方略の分析法、論文を書く際の効果的な方法等々、今日の私に必要なことがこれでもか、と書かれていた。もう、ありがたいことこの上ない。
     この本から研究に対するヒントも得られた。また、研究の方法に関する情報も得られた。もう、どれだけ感謝してもしきれないくらい、役だった本である。

  • 教職課題の参考図書として読んだ。
    読みやすいし具体的が新鮮。
    教える側としても、学ぶ側としてもとても為になりそう。

  • 読む時と書く時の、人に心理を表している。
    人は読む時は既有知識を使って、推測しながら読んでいる。
    読むということは能動的であると説いている。
    他、文章構造による推測、ルールによる推測、接続詞から推測するなどを紹介してくれている。
    第2章では批判的読書の説明。
    第3章では、書く過程での心理を教えてくれます。分は中1、中2、まとめ、はじめにという順で書くと書きやすいとおしえてくれる。
    あとは推敲、診断。自分できづいて直していくことが大事だ。
    良書である。

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著者プロフィール

学習院大学教授,東京大学名誉教授

「2024年 『新しい時代の教職入門〔第3版〕』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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