臨床心理学における科学と疑似科学

制作 : スコット・O. リリエンフェルド  ジェフェリー・M. ロー  スティーブン・J. リン  Steven Jay Lynn  Jeffrey M. Lohr  Scott O. Lilienfeld  厳島 行雄  横田 正夫  齋藤 雅英 
  • 北大路書房
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レビュー : 2
  • Amazon.co.jp ・本 (461ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784762825750

作品紹介・あらすじ

臨床現場などの実務場面で,あるいは出版やTV番組,広告の中で,研究に基づいた確固たる基礎を持たないまま使用されている治療や心理技法が存在する。これらについて,実証主義的な科学的根拠に基づき公平なジャッジが下される。本書は,科学的に支持された技法から,そうでないものを区別するという重要な役割を果たす。

感想・レビュー・書評

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  • サイモンシンの代替医療のトリックの、心理学版があったら楽しいですよね?
    ちなみにアメリカで一番使われる査定はウェクスラーですが、日本ではロールシャッハらしいですよ(^O^)/ビバ、ロールシャッハ(^O^)/リリエンフェルドを読むと、そんな、気持ちが一気に覚めます(^O^)/

  • 大学院授業で使用。企画はいいのだけど,背後にある科学哲学が古い。翻訳があまり良くない。


    <第2章 臨床家が疑似科学的手法を用いる理由:臨床的な判断に関する研究からの知見>
    アセスメントには思い込みの要素がかなり入り込んでくる可能性が高いが,わりと一般的なバイアスによるものが大きいために,臨床経験が少なくても似通った判断になるという。経験が関係するのは,その場への慣れ具合程度のものなのだろう。昔から思うことだけど,臨床分野にかかわらずどんな分野でも,経験主義ではなくて求道的である方がいい。経験主義は上の人間が偉そうぶる構造になるから。政党なんかその典型かも。

    *****
    …臨床経験の長さは,最新の訓練を受けていないことの大体にはならないことになる。(p.17)

    …アセスメント法や治療介入法が実証研究によって支持されているかを知るために,臨床家はそのような研究に関する文献に精通しておくべきである。(p.29)
    *****


    <第3章 論争の的になる疑わしい査定技法>
    「そんだけ言うなら,証明責任を果たしなさい!」ということをいくつかの疑わしい方法を挙げて論じている。ロールシャッハはうちの院生も勉強中のようで,この章でケチョンケチョンに言われることをあまり気分よく思っていないようだった。それをどれだけ真摯に受け止め,科学的な対応をするかで結果が違ってくる。インクの染みを見て何かが「見える」のは,ある側面では知覚の働きによるものであるのだろうから(ギブソンもそんなことに触れている),全く非科学的だとするにも無理がある。認知との兼ね合いでの理論化を目指せば,何らかの打開策は現れるのではないか。「既存=完成されたもの」などと鵜呑みしないで研究すればいいのです。


    <第5章 解離性同一性障害:多重人格と複雑な論争>
    歴史的には,20世紀初頭には少なかった報告数が後期になると増大し,しかも交代人格の数も増え,幼児虐待経験の随伴を訴える報告が増える。自伝的記憶の欠落についての自己報告は「はい」と応えることになることが殆どであるため,その解釈は慎重にすべきである。また,各人格は相互独立なのか,単なる変位形なのか,その共存の仕方は未解決である。解離性同一性障害で問われるべきはその実在ではなく病因である。医原性が原因であることもあるが,概ねそれ以外の社会認知的要因である可能性が高い。第10章よりも訳の工夫が見られる。

    *****
     …,心的外傷後モデルの支持者のなかには,これらの知見は心的外傷後モデルとも合致しうると主張するものもいる。…,この主張は,これらの交代人格に関する独立した証拠がなければ,心的外傷後モデルの反証可能性に関する問題を生み出す。つまり,もし交代人格の数が治療を通じて減少するかもしくは一定にとどまれば,治療による解離性同一性障害の改善もしくは潜在的な悪化を食い止めたとの考えを心的外傷後モデルの支持者は主張できる。対照的に,交代人格の数がセラピーを通じて増加するという結果は,心的外傷後モデル支持者には心理療法によって潜在的な交代人格が見事に表出されたものと解釈されてきた (Gleaves, 1996)。このように,起こりうるすべての結果と矛盾しないモデルは,反証不可能であり,科学的有用性に問題があるため (Popper, 1959),心的外傷後モデル支持者はどのような証拠によってこのモデルを反証することができるのかを明示する必要があるだろう。(p.103)
    *****


    <第8章 過去の出来事の想起:心理療法における問題となる記憶回復技法>
    ほぼ直訳で読みにくい。p.191にはred and green moving mobilesに対して「赤や緑色で動く自動車」という訳をつけているが,mobileはモビール(上から吊るしてユラユラするおもちゃ)であって,automobileと間違ったんだろう。
    記憶想起がどのようにして成立するのかという理論の研究が,臨床心理学でも重要になるのは間違いない。


    <第9章 心的外傷後ストレス障害の新奇で論争となっている治療法>
    PTSDには認知行動療法ベースがよろしいらしい。で,アカンとされるのは,EMDR,思考場療法,非常事態ストレスデブリーフィング。EMDRにおいて,眼球運動は効能とは関係なく,そのプロセスに含まれる曝露法(認知行動療法ベース)によるものらしい。ということはEMDRのEMは要らんということだ。「EMDRにおいて効果的なものは新しいものではなく,新しいものは効果的ではない」というMcNally (1999) の決めゼリフは,他のアカン方法にも当てはまりそう。この章も懲りない悪訳。


    <第10章 アルコール依存症の治療法に関する論争>
    克服した経緯を持つ者に端を発する「職人」と,訓練を受けた「臨床家」のアプローチの違い。とはいえ,裏付けに乏しいアプローチを用いている限り,その違いは不明瞭となる。様々な方法の有効性・無効性が述べられているものの,無作為割り当てができない以上,準実験的な方法によって,心理療法阪の「適性処遇交互作用」を検討するより他にないというのが恐らく結論。しかし,訳がヒドイ。
    「この用語の暗黙の均一性にもかかわらず,短期の介入法は非常に多様である。(p.251)」
    原著では,
    「Despite the implicit uniformity of the term, brief treatments are quite heterogeneous. (p.294)」
    同じ意味のことを自分ならどうやって書くかを考えて,意訳すべき。


    <第12章 注意欠陥/多動性障害の子どものための実証済みの治療法,有望な治療法,および実証されていない治療法>
    ADHDの適応的側面というのはないんだろうか? 何ができれば治療とか正常化とか言えるのだろうか? 門外漢の僕にはそこがピンと来ない。薬物治療が効果的であっても,少なくとも日本の臨床心理士が採りうる方法ではない。ADHDは世界的に見られる現象だろうということで各国が検討を進めているらしいが,この著者は上から目線でものを言っている。ホメオパシー療法についてそれがヨーロッパのウェブサイトを引き合いに出し,次のように言う。
    「このサイトではADHD以外の疾患に対するピクノジェノールの効果を検討した文献リストへリンクしているが,それらはすべてヨーロッパの雑誌で,その多くは外国語で書かれているため,消費者がそのデータを利用したり,独自に再検討したりするのはかなり難しい。(p.294)」
    英語圏でない人たちは英語を頑張っているんですけど…。その苦労を理解していれば,こんなことは言えないでしょうに。こういう人たちは,自分自身が「人を悩ませている原因」になり得るといったことはきっと考えていないんだろうな。そんでもって,相変わらず訳がヒドイ。
    「多くの治療法はそれを支持する推薦状があるだけで,証拠がないにもかかわらず真剣な考察を推奨する。ADHDに関する現行の知識には,なんら理論的・論理的関係のないものもある。(p.291)」
    原著では,
    「Many enjoy only testimonial support and some present no theoretical or logical connection to current knowledge regarding ADHD that would recommend their serious consideration in the absence of otherwise compelling evidence. (p.348)」
    僕の修正案は以下。「多くの治療法はただ推薦のような支持にしがみついているに過ぎない。中には,ADHDに関する現行の知識と何ら理論的・論理的関係を全く示していないものもある。これらは,他に有力な証拠がないにも関わらず,そのひたむきな考えを押し付けようとするのである。」

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