〈当事者〉をめぐる社会学―調査での出会いを通して

制作 : 宮内 洋  好井 裕明 
  • 北大路書房
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レビュー : 5
  • Amazon.co.jp ・本 (232ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784762827303

作品紹介・あらすじ

フィールドワークや質的研究での〈当事者-非当事者〉の対人関係論的な視座を越え,社会的装置・舞台・制度といった〈場〉へメスを入れる。「研究する側」と「研究対象とされる側」の間に横たわる厳格な二項対立ではない「境域」のありようを考察しつつ,調査研究における実証性の意味をあらためて問う。

感想・レビュー・書評

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  • 【もくじ】
    はじめに(宮内 洋)  

    第1章 共在者は当事者になりえるか?――性風俗店の参与観察調査から(熊田陽子) 
     1節 はじめに
     2節 当事者とは何か――訴訟から研究行為まで
     3節 調査地での経験
     4節 共在者、同時代者から考える「おんなのこ」と私のあり方
     5節 共在者と当事者
     6節 おわりに

    第2章 いかにして「性同一性障害としての生い立ち」を持つことになるのか――実際のカウンセリングの録音・録画における「自分史をやる」活動に焦点を当てて(鶴田幸恵)
     1節 はじめに
     2節 性同一性障害の「当事者」とは誰か?
     3節 性同一性障害のカウンセリング
     4節 「自分史をやる」活動
     5節 おわりに

    第3章 当事者へのかかわりと当事者としての「実践」を考える
    ――社会運動論・環境社会学の私的な経験から(西城戸 誠)
     1節 はじめに
     2節 当事者とのかかわりを考える
     3節 「当事者とは誰か」をめぐって
     4節 当事者に寄与するということ
     5節 当事者としての「実践」――実践的研究に向けて
     6節 まとめにかえて――再び、対抗的相補性

    第4章 「当事者ではない」人間に何ができるのか?
    ――農業・農村研究における実践性と当事者性(松宮 朝)
     1節 農業・農村において「当事者ではない」ことの意味
     2節 農村へ
     3節 島根県石見町でのフィールドワーク
     4節 北海道道央大規模水田地帯でのフィールドワーク
     5節 「当事者」の声をどのように「加工」したのか?
     6節 農業・農村研究の「当事者」としてかかわり続けること

    第5章 あなたも当事者である
    ――再帰的当事者論の方へ(樋口直人)
     1節 当事者論をめぐる違和感―問題の所在
     2節 当事者論をめぐる疑問
     3節 日常のフィールド化とフィールドの日常化
     4節 当事者と出会って当事者になる

    第6章 「私」は「あなた」にわかってほしい
    ――「調査」と「承認」の間で(中根成寿)
     1節 フィールドワークにおける三人称の不可能性について
     2節 障害者家族の親の当事者性とニーズについて
     3節 「抵抗」から概念が生まれること――2つの手紙
     4節 「承認の欲望」に調査者はどう向き合うべきか?
     5節 親は本人になれず、調査者は当事者にはなれない、けれど…

    第7章 底に触れている者たちは声を失い‐声を与える――〈老い衰えゆくこと〉をめぐる残酷な結び目(天田城介)
     1節 〈当事者〉をめぐる社会学の構想
     2節 極限状況で耐え難きを耐え、忍び難きを忍ぶ
     3節 認知症を生きる人びとによる自らを守ろうとする営み
     4節 〈当事者〉と〈傍観者〉の隔たりにおいて

    第8章 メディア表現は〈当事者〉の敵なのか(石田佐恵子)
     1節 マスメディアと〈当事者〉との関係
     2節 メディア表現への批判――ニュースの分析から
     3節 〈当事者〉がつくるメディア表現の可能性
     4節 世界への〈再接続〉と〈当事者〉性の回復

    第9章 差別問題研究における2つの当事者性(好井裕明)
     1節 はじめに  163
     2節 被差別の立場にある人びとを当事者とすること
     3節 差別する可能性がある人びとを当事者とすること
     4節 差別問題の社会学は何を目指すべきなのか

    第10章 〈当事者〉研究の新たなモデルの構築に向けて――「環状島モデル」をもとに(宮内 洋)
     1節 はじめに――〈当事者〉研究における誤ったモデル
     2節 「環状島モデル」とは何か―〈内海〉を中心に
     3節 “海図”の喪失と再入手――〈内海〉からの脱出に向けて
     4節 「環状島モデル」における〈重力〉・〈風〉・〈水位〉
     5節 まとめにかえて――〈当事者〉研究における研究者の位置について

    あとがき(好井裕明)

  • どこか屁理屈にも聞こえるけど、こうして日々対面している状況を常に思考し続けることこそが学問だ、と大学人に言ってほしいような論集。例えば今のも含めてシゴトで関わる状況がまさに「当事者」をめぐるそれ。けれど指摘されているような被差別の非差別を「聖別化」なんて現実あり得ないわけで。なので無思考に哀れんだり、その「当事者性」たるを確固としたものにするため汗水なんてのもなんかオカシイ。そういう意味で、価値創造型の支援を含む調査での思考が薄かったこと、それが物足りなかったところ。

  • 読んで良かった。
    あのような考え方は突き詰めれば自分に還ってくるのは必然で、それをどのように処理するか、どのように向き合うのか。
    好井先生の文章が飛び抜けて読みやすい。

  • 社会調査における参与観察法の重要性を考えるときに,
    「当事者」とは何かを検討してあるとよい。

    本書は,ずばり「当事者」についての整理なので面白い話が多い。

    特に,再帰的当事者についてが,社会調査における入れ子構図をよく表しているかもしれない。

  • 研究者が研究を行えるのは、対象者が研究者にその場を共有することを許しているからであり、それがなくなれば、研究者と対象者との人間的なつながりも、研究そのものも頓挫してしまう。

    これを知って、「なるほど。すべての人間関係に言える仕組みだ」と思った。
    わけも分からず人間関係の軋轢に目を回してもがいていた私には、はっとする気づきだった。

    これからは、どんな人間関係も、この方程式をコンパスのようにあてがうなら、判断や決断がやりやすくなるかもしれない。

    そして「自己責任」を相手に要求することの恐ろしさ。
    それは相手を見下し、陥れる暴力とさえなりうる。

    自分の立場を立ちながら相手にできる限りの共感を示すことの大切さも、この本は教えてくれた。

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