小説『ろう教育論争殺人事件』: バリアフリー・コンフリクトとそのゆくえ

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  • Amazon.co.jp ・本 (496ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784762830396

作品紹介・あらすじ

ろう教育界は,昔から口話法と手話法の間でめまぐるしく揺れ動いてきた。近年でも,口話併用を認めるか否かに関する「手話-手話論争」が激化した。「手話の万能視」は,ある種の人々を救う一方で,ある種の人々を苦しめる。本書は,フィクションという表現様式を通して,コミュニケーション論争の軋みをつぶさに描き出す。

◆主な目次

 まえがき
 登場人物の紹介
 小説『ろう教育論争殺人事件』が生まれた背景

 プロローグ 手話法の駆逐

第I部 ろう教育論争
 一章 ろう文化宣言
 二章 デフブラボー
 三章 ろう児の人権救済申立
 四章 ろう学校盗難事件
 五章 ろう学校体罰事件
 六章 母子カプセル
 七章 モンスターペアレント
 八章 『ろう教育史ぶらり』
 九章 通知表文面事件

第II部 カタストロフィ
 十章 川に沈む
 十一章 恨みに沈む
 十二章 海に沈む
 十三章 火に沈む
 十四章 谷に沈む
 十五章 憂いに沈む
 十六章 闇に沈む

 エピローグ メビウスの帯

 注
「注」の参考・引用文献
 あとがき

感想・レビュー・書評

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  • 途中で読むのをやめようと『何回つぶやいただろうか』

  • ろう教育における聴覚口話法、手話法といったコミュニケーション論争について、子どもの実態に合わせた具体例が述べられていて分かりやすかったし、小説にするとこのような感じになるのだなあ、と思った。 ただ、後半の殺人事件の部分については登場人物が入り組みすぎていて、殺人事件とコミュニケーション論争の繋がりも無理やりすぎる部分はあるなあ……と思ってしまった。 今後ろう教育に携わる人としては、どちらかの方法にこだわることなく、子供の実態と将来を見据えて、コミュニケーション方法を模索することが大事かなあと。

  • 初めて見た時に、「絶対に売れないだろう」と余計なことを考えてしまった。

  • 自分の考えを整理できた

  • 何とも重苦しい気持ちで読了。

    ろう教育論争の歴史や現場のいまを小説仕立てで問題提起したものだが、教育現場(ろう学校)における「手話法」賛美派と「聴覚口話法」賛美派の対立が先鋭になり殺人事件にまで発展するというストーリーでやるせない。「口話も手話も必要」と考える先生たちの日和見的な態度ももどかしい。

    それにしてもと思う。長く続いた論争なら、その成果をもって、とっくに決着していてよさそうなものだが…。社会の無関心も問題の解決を困難にしている一因かもしれない。著者がいうように聴覚障害教育のユニバーサルデザイン化が必要なのだろう。

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著者プロフィール

脇中起余子(わきなか・きよこ)
新生児の時に,薬の副作用で失聴
京都大学大学院教育学研究科博士後期課程中退
龍谷大学大学院文学研究科博士後期課程修了
京都府立聾学校教諭を務めたあと,筑波技術大学に着任
主著・論文
日本におけるキューについて(2)―京都府立聾学校におけるキューの歴史― ろう
教育科学会誌,60(1),25-49. 2018 年
「9 歳の壁」を越えるために―生活言語から学習言語への移行を考える― 北大路書
房 2013 年
助詞の使い分けとその手話表現―副助詞・接続助詞+接続詞を中心に― 北大路書房 
2012 年
助詞の使い分けとその手話表現―格助詞を中心に― 北大路書房 2012 年
「視覚優位型,同時処理型」の生徒に対する指導について―算数・数学の授業におけ
る試み― 聴覚障害,734(5 月号),4-11. 2012 年
聴覚障害教育 これまでとこれから―コミュニケーション論争,9 歳の壁,障害認識
を中心に― 北大路書房 2009 年
からだに関わる日本語とその手話表現 第1 巻・第2 巻 北大路書房 2008 年
よく似た日本語とその手話表現―日本語の指導と手話の活用に思いをめぐらせて― 
第1 巻・第2 巻 北大路書房 2007 年

「2018年 『小説『ろう教育論争殺人事件』』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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