行列のできる児童相談所 子ども虐待を人任せにしない社会と行動のために

  • 北大路書房 (2019年11月5日発売)
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Amazon.co.jp ・本 (304ページ) / ISBN・EAN: 9784762830846

作品紹介・あらすじ

児童相談所は閉鎖的な機関であるため,一般市民から理解されにくい。現職の公務員が実情を語るのも相当ハードルが高い。本書では,10数年にわたって児童福祉司ならびに一時保護所の児童指導員をしてきた著者が,専門家が書かない,書けない児童相談所の「裏側」をつぶさに描き出し,子ども虐待という問題の本質に迫る。



【メディア紹介】

2020年2月2日付産経新聞におきまして,

エッセイストの犬山紙子氏にご書評いただきました。



「知る」が「守る」の第一歩



……私たちにできること、それはまず「知ること」だ。知れば何が問題で、何を変えるべきかが見えてくる。……児童虐待や児相に関する情報は、一般に知られていないことも多い。例えば、通報された後の児相の動き。多くの人は異変を感じても「思い過ごしであの家族をバラバラにさせてしまったらどうしよう」と躊躇してしまうが、通報後にどんな手順で対処されるのかを知れば、「子供を守るため」に通報できる。

……実態を知らないと、「子どもを守りたい」という気持ちは同じでも、その思いが明後日の方向に使われることもある。その一つが虐待のニュースがあると必ず起きる児相パッシング。そうなると児相にクレーム電話が相次ぎ、ただでさえ人手不足なのに、子供を守るための時間がクレーム処理にとられてしまう。

……もう悲しい思いをする子供を見たくない、そう思う方はぜひ本書を読んでほしい。何をしても無駄だという絶望から抜け出せるはずだ。私たちが動けばこの状況を変えられる―そして子供を守り育てるのは、全ての大人の責任だと思うのだ。



【主な目次】

第1章 児童相談所の行列のもと

第2章 警察官の行列

第3章 支援と介入にならぶ人

第4章 裁判・マスコミの行列とクリスマスイヴの児童虐待死事案

第5章 児童相談所一時保護所の行列

第6章 里親を希望する人の行列

第7章 行列のできない児童相談所づくり

感想・レビュー・書評

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  •  「行列ができる」というタイトルから、ある地域の児童相談所が画期的な取り組みを行い、相談者が絶えず、結果として虐待が減少した、というプラスのイメージを勝手に抱いていた。実際は、行列ができるほどに業務に追われる児童相談所職員の話である。
     ここ数年に限った話ではないが、虐待による通告は増え続けている。しかし専門家である児童福祉司や児童心理司といった職員は不足している状況が続いており、マンパワーの増強が求められている。
     本書では学者の視点ではなく、実際に現場の最前線で児童福祉支援に当たっていた筆者の生々しい記録と、叫びが聞こえてくるようである。
     家族関係への介入に至る苦悩や緊張感、様々な施設間における押し付け合いとも取れるやり取りなど綺麗事だけではない一面を知ることができる。
     巻末には資料として法令と簡易な用語集が収録されているため、入門書としての使用も可能だろう。
     児童福祉の実態把握に近づくためにも読んでおきたい一冊である。【図書館】

  • 「児童相談所」は、その性質上、閉鎖的な機関であるため一般市民から理解されにくい。また、現職の公務員が実情を語るのも相当ハードルが高い。

    本書では、10数年にわたって児童福祉司ならびに一時保護所の児童指導員をしてきた著者が専門家が書かない、書けない児童相談所の「裏側」を描き出し、子ども虐待という問題の本質に迫る。(出版社より)

    児童虐待をしてしまった親の約7割が、自身の子どもの頃に実親から虐待被害にあっている。

    虐待の被害をなくすためには、"人任せ"にしないこと。
    支援が必要な子ども期に適切な支援を受けられるようにすること。



    ■メモ:
    ・児童相談所の社内的役割は、その時代の社会的要請によって変化する。

    ・子ども期の大切な時期に、厄介だからと他人任せにするのではなく、大人がしっかりと責任を持って子どもを見て子供に学び、子どもとともに育ち、必要なときに支援することが必要である。

    ・支援が必要な子ども期に適切な支援を受けられていない。

    ・罪のない子どもにとって、楽しいことも辛いことも共感できる人がいて、家庭養育、家庭的養育ができる環境であれば、里親か施設かに対立軸を作る必要はない。

    ・児童虐待が減少しない理由:
    1.人任せにしている
    2.大人の都合による対応をしている
    3.社会的構造の欠陥による問題がある

    ・社会構造の欠陥を補完するために、社会福祉の制度がある。

  • 岐阜聖徳学園大学図書館OPACへ→
    http://carin.shotoku.ac.jp/scripts/mgwms32.dll?MGWLPN=CARIN&wlapp=CARIN&WEBOPAC=LINK&ID=BB00599432

    児童相談所は閉鎖的な機関であるため,一般市民から理解されにくい。現職の公務員が実情を語るのも相当ハードルが高い。本書では,10数年にわたって児童福祉司ならびに一時保護所の児童指導員をしてきた著者が,専門家が書かない,書けない児童相談所の「裏側」をつぶさに描き出し,子ども虐待という問題の本質に迫る。(出版社HPより)

  • 東2法経図・6F開架:369.4A/I57g//K

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著者プロフィール

井上 景(いのうえ たかし)
京都府出身
龍谷大学大学院社会学研究科修士課程修了 
修士(社会福祉学)、社会福祉士
金沢市役所職員として児童相談所開設準備室、金沢市こども総合相談センター(児童相談所)、大阪府庁職員として大阪府子ども家庭センター(児童相談所・一時保護所)の児童福祉司・児童指導員、甲南女子大学総合子ども学科講師を経て、現在、西日本こども研修センターあかし 研修企画専門員。
〔主要業績〕
「中核市等児童相談所設置における課題:奈良市の児童相談所設置準備にみる課題」甲南女子大学研究紀要Ⅰ(第55号)2019年
「児童福祉司養成に必要な実務の専門性とスキル:児童相談所スーパーバイザーの視点」金沢星稜大学人間科学研究(第11巻第2号)2018年

「2019年 『行列のできる児童相談所』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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