水の家族

著者 :
  • 求龍堂
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本棚登録 : 394
感想 : 23
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  • Amazon.co.jp ・本 (309ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784763006356

作品紹介・あらすじ

死者の視線が、平凡な家族の、ある過去と現在を照らし出す。忘れじ川の水とともに浄化されていく魂の救済を描いた、生と死の壮大な叙事詩。作家による再構成をした新生版。

感想・レビュー・書評

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  • 長野に移住して文壇と一線を画した丸山氏の自然描写の簡潔で美しい文章に酔った。私は自然を知らない。何度も辞書をひいて意味を確認した。水は神聖でしかも色っぽいものだ。川の水音が聞こえてくる本。

  • ストイックな文体で水がめぐるその活動のすべての描写が清々しい。。というか掃き清められたお寺にひとり参拝しているような清らかな気分になった。
    八重子との描写は生々しすぎて、私にはちょっと重かった。

  • これは、私が死に、彷徨う魂魄となった私が草葉町を俯瞰する叙事詩である。

    隔離され守られているさえ感じられる箱庭。それにおける生命は、絶え間なく行われる循環、大水車のように輪廻し、水の動きに重なり均等を保つ。
    私は省みながら、私もまた水の一部と知り、先憂も後悔も失われ、涙は再び遍く永劫の均等を約諾する。

    この話自体もひどく均等が保たれ、また歳を重ねてから再読してみたい、そう思いました。

  • 家族よりひとり離れて、さまよったさきに死んでいった主人公の
    魂が語り部なのですが、内容は非常に異常な世界で
    殺人。不貞。裏切り。堕落等々ひどい内容ですが
    文体が非常にうつくしく読みやすい文体です。
    なんとなく、非常に印象に残る作品。生と死って
    こういうことなのかと思われる。

  • 死者の視線が、平凡な家族の、ある過去と現在を照らし出す。忘れじ川の水とともに浄化されていく魂の救済を描いた生と死の壮大な叙事詩。作家による再構成をした新生版。

    夜の経済ニュース番組で三浦しをんが本作を激賞していたので読んでみた。物語が始まってすぐ主人公がとんでもない目に遭う。書かれている内容自体は通俗的という気もするが、その表現力や構成力にぐんぐん惹き込まれた。久しぶりに格調高い、芸術性に富んだ純文学に触れた気がした。名前だけは聞いたことがあるという認識だった丸山健二、他の作品も読んでみようか。
    (B)

  • 流れるような文章で、不思議なリズムに引き込まれました。
    内容は衝撃的なので、なんとも言い難いのだけど、なぜかすんなり読めてしまう魅力があるような。

    言葉の選び方のセンスを分けてほしいな

    May?, 2013

  • 人の持つ多面的な力は本人が気付けなくても確かにそこにあり
    この世界の密度は押し広がる。
    水は汚され清められただ流れて行き、
    それぞれに理由があり意味は無く力にあふれ亡くしながら
    生まれ死んで行くんだろう。

  • 思わずかなりの部分を音読してしまった。そういう力のある作品。

  • 「水の家族」(丸山健二著)は、30歳を目前に死んでしまった主人公が、雨粒や鳥のふんなどに化けて生まれ故郷をさまよう、不思議な小説です。一行の詩と、数行の散文で構成され、独特のリズムが読む者を引き付けます。

    「文章がすごく美しいし、力強い」と語る三浦さん。「まず最初に語り手が死んでしまうというのも面白いし引きがある」


    続きはこちら
    annex ~三浦しをん~:スミスの本棚:ワールドビジネスサテライト:テレビ東京 http://www.tv-tokyo.co.jp/wbs/blog/smith/2013/04/post146808.html

  • 水の家族、というタイトルからわたしが想像したのは家族小説だった。
    読んでみると、なるほど、家族小説ではあるけれど、
    そして家族小説のようにいろいろな家族にとっての大きな事件があるけれど、
    ちょっと普通とはちがう。

    竹林で水色のノートにつっぷして野たれ死んだ男の魂が、
    水と調和し、水蒸気とともに舞い上がり、
    自分の町と家族をみつめる。
    死者の魂からは怨念やうらみつらみはない。
    ただ詩的に、つまらなく感じるギリギリの線を小説として作り上げて
    話をつなげているような感じ。


    猟奇的な殺人事件の描写よりも、
    小説全体がずっと長く心にのこる。

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著者プロフィール

1943年、長野県飯山市に生れる。国立仙台電波高等学校(現在の国立仙台電波工業高等専門学校の前身)卒業後、東京の商社に勤務。66年『夏の流れ』で第23回文學界新人賞を受賞。同年、同作で芥川賞を受賞し作家活動に入る。68年に郷里の長野県に移住後、文壇とは一線を画した独自の創作活動を続ける。また、趣味で始めた作庭を自らの手による写真と文で構成した独自の表現世界も展開している。近年の作品に長編小説『我ら亡きあとに津波よ来たれ』(上・下)。『夢の夜から口笛の朝まで』『おはぐろとんぼ夜話』(全3巻)、エッセイ『人生なんてくそくらえ』、『生きることは闘うことだ』などがある。

「2020年 『ラウンド・ミッドナイト 風の言葉』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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