ときめきに死す

著者 :
  • 求龍堂
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本棚登録 : 100
感想 : 10
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  • Amazon.co.jp ・本 (197ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784763006677

作品紹介・あらすじ

若きテロリスト、逃避した中年、レンガ色のムク犬-再生復活版Vol.2。

感想・レビュー・書評

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  • 「テロリスト」の青年と、彼の世話を頼まれた中年男の物語。ある日、大学時代の知り合いがやってきて破格の報酬を提示し、避暑地の山荘で青年の面倒を見てやってほしいと言ってくる。
    中年男は青年をテロリストだと決めつけ、自身の思うに任せぬ経済事情や離婚によるストレスの解消、あるいは果たせなかった野望の実現などを託し、精いっぱい支えてみせると意気込みます。
    しかし青年が素性を明かすことはなく、本当にテロリストであるかは判りません。途中やや弛緩する個所もあるものの、緊張感の高まりによって読者は青年がテロリストに違いないと思い、劇的な出来事を期待するようになってしまうのが本当に不思議です。これが小説というものなんでしょうか。
    ただ最近の流れとしては、この話の結末は終わりではなく、むしろ始まりであることも多いので、ここで終わり?という、消化不良な印象も拭えません。
    作家による再構成版だそうなので、元々の内容はわかりませんが、中年男がこの先(結末のあと)どうなるのか、とても気になりました。

  • 「?」のままで話が終わってしまうものが殆どで、また読みたくなるとは思えない。

  • ジュリーの魅力によるところが大きくやはり映画の印象の方が強烈ではあるが、世話役の心の機微が読み取れて好かった。再び映像化されるのであれば今なら主演は山下智久氏しかいないと思ったりするなどしてときめく。

  • 映画「ときめきに死す」は衝撃的だった。
    当時、新進気鋭の才気あふれる期待の星だった森田芳光監督は、映画のエンターテイメント性を追求し、また、常に挑戦者だったように見えた。中でも「ときめきに死す」は異色作であり、異端作でもあったように思う。全編を覆いつくす低体温と、ラストシーンの血の沸騰との鮮烈な対比が心に残っている。
    さて、本作「ときめきに死す」はその原作らしい。丸山健二さんは気にはなっていたのだが読んだことがなかったし、あの映画の原作を書いていたことも知らなかった。たまたまの同タイトルなのかな?と思って読み始めたのだけれど、たちまちのうちに物語の中に引きずり込まれてしまった。きっかけは映画だが、ここにはまったく違う物語があった。読み進むうちに思い浮かんだのは中村文則の「銃」だ。僕はあの小説が大好きなのだが、この作品はまさに「銃」。というかこちらが先なので「銃」が「ときめきに死す」だったということだ。思いがけず手に入れた「銃」であり「テロリスト」。それは主人公にとって日常からの「突破口」だった。
    往々にして、突破口は破滅的だ。だからこそみんなそれを見つけられないし実行できない。「誘惑」というのもひとつのキーワードだ。あちら側とこちら側、人はみな、境界の塀の上を歩いている。
    それにしても文章力がすごい。イメージのつながりと使用する単語については、並々ならぬ推敲がなされているのではないか?それともこういうのがすんなり出てくるところが作家たる所以なのだろうか。丸山健二という作家を読んでこなかったのが、いまさらながらに恥ずかしい。

  • 人生のレールから逃避した40過ぎの男、精悍な若きテロリスト、そして捨てられたレンガ色のムク犬の一週間に満たない日々。
    「一寸先のまばゆい光」を信じている青年に対する男の希望、憧れ、ときめき、、、日常を惰性に生きてる私はどう考えても男のサイドの人間だ。憧れるだけで行動できないな

    凶器の描写がとても綺麗。
    ピストルは「人差し指に力をこめるだけのあれ」、刃物は「一筋の光」

  •  読み終わった後の爽快感は何だろう。思わせぶりな緊張感を引き摺りながら続く物語、そして後味は決してよくない悲惨で曖昧な結末なのに。どこかしら前に向かおうとする元気が読後感に残る。

     疲れ果てた一つの生が再生するとき、生贄のように別の生が失われていく。その再生した生もいつかは同じように生贄になる運命かもしれない。所詮は自分より大きな力に支配されながら生き長らえていくだけの話なのだろう。ただそれでも、生き残ったという事実は自身のなかで一つのパワーとして人生を後押しする。それは望んだ方向に向かっていくとは限らないのだろうけど。みすぼらしい姿を晒すことになるのだろうけど。

  • 丸山健二は1943年12月23日長野県飯山市生まれの66歳、孤高・超絶の小説家。

    1984年に、このタイトルで沢田研二主演の映画を森田芳光が撮ったことをご記憶の方もおられるかも知れません。

    そのとき、そもそも元々は無頼派ロックンローラーこと内田裕也が、アル・パチーノ主演で自分も出るつもりでその映画化権を持っていたのに、沢田研二がどうしてもやりたいと懇願したので譲ったというエピソードは、いかにもほほえましいものです。

    ところで『夏の流れ』は、デビュー作でいきなり芥川龍之介賞を受賞した小説ですが、中2の時これを読んだ私は、何これ、こんな簡単な作文で賞が取れるの、などと若気の至りで不遜にも思ったものですが、その後、22、3歳の作者の丸山健二が、結婚もして子供もいる刑務官と死刑囚の両方の心情と死刑執行までの心の動きをまったく経験したこともないのにフィクションとして描いたということに強い衝撃を受け、人並み外れた想像力と創造力の意味を初めて理解したのでした。

  • 最初から最後まで、主人公にイライラし続けた。
    不快だった。

    多分、それが著者の狙いなんだろうな。
    上手い。

  • タイトルからして恋物語かと思えば……

  • いまの時代に読んでもあれな気がするけれど、
    ぐわーってなってどんってなる小説。の復刻。

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著者プロフィール

1943年、長野県飯山市に生れる。国立仙台電波高等学校(現在の国立仙台電波工業高等専門学校の前身)卒業後、東京の商社に勤務。66年『夏の流れ』で第23回文學界新人賞を受賞。同年、同作で芥川賞を受賞し作家活動に入る。68年に郷里の長野県に移住後、文壇とは一線を画した独自の創作活動を続ける。また、趣味で始めた作庭を自らの手による写真と文で構成した独自の表現世界も展開している。近年の作品に長編小説『我ら亡きあとに津波よ来たれ』(上・下)。『夢の夜から口笛の朝まで』『おはぐろとんぼ夜話』(全3巻)、エッセイ『人生なんてくそくらえ』、『生きることは闘うことだ』などがある。

「2020年 『ラウンド・ミッドナイト 風の言葉』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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