さもなければ夕焼けがこんなに美しいはずはない

著者 :
  • 求龍堂
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本棚登録 : 43
感想 : 10
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  • Amazon.co.jp ・本 (112ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784763011084

作品紹介・あらすじ

安曇野にこもり、ただ一人の力で執筆と作庭に明け暮れる小説家のエッセイ。

感想・レビュー・書評

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  • 絶えざる変動が当たり前の世界にあって花の季節のみをふり返ってはならないと諭す

  • 安曇野に移り住み、いまやガーデニングならぬ庭園作家としての活躍が目立つ、孤高の作家の独特の美学と内面的なつぶやきを綴る12か月のエッセイ集。実に極私的な庭作りへの思いと独自の美学、そして文学論が語られる。 老境を迎えた孤高の作家の眼は、自己の行く末も見据えながら、自ら手がけた庭の中の生の謳歌を讃え、季節の移り変わりの悠久を見定める。語るのは、冬の静謐、高揚する春の訪れ、夏の虚脱、そして紅葉に彩られる秋の絢爛だ。まさに人の一生にも匹敵する庭の移り変わりが、生の喜びも滅びの美学ももたらすという。本書のやや抒情的なタイトルは、冒頭に置かれたヨハン・ペーター・ヘーベルの『アレマン詩集』の一節から取られたものだが、未来を語るその詩句の先に、著者は自ら予感する死の影を重ね合わせているのではないかという気がする。

  • 作家の庭愛に驚き。生き甲斐であり、修行である。私もバラを植えてみようか。

  •  丸山健二さんの、人生観を反映した作庭エッセイだ。著者の作品は若いころによく読み、エッセイや小説、かなり影響を受けた作家の一人だ。『千日の瑠璃』や『争いの樹の下で』等、もっと評価を受けても良い作家の一人だと思う。本作も強烈な個性が存分に表現されており、インパクトは十分だ。

     肉体を酷使する、深く思索する、美を感じる。人が人らしく暮らすうえで重要な3つの要素だと思う。著者は作庭と作家作業でそれを満たし、僕はサイクリングと読書でそれを満たしたいと考えている。

  • 「この世に存することの唯一の命題は、ひたすら生き抜くことのみであって、決してほかの何かではない。」生きる勇気と元気を貰った。

  • 13/01/28 

  • 安曇野で執筆と庭作りに明け暮れる小説家の随筆です。
    植物を通して導き出された言葉がすばらしい。

    1か月ごとに語るテーマが違っていて、(以下、目次より)

    3月「鳥だって、この世を生きているかぎりはいろいろある」

    10月「紅葉がもたらす陶酔の一日を
       くぐりぬけることができさえすれば
       上出来の生涯と言えるのではないかと、そう本気で思う」

    12月「本来具わっているその力を信じ、万難を排して
       その力を発揮しようとする者たちの輝きは
       バラのそれをはるかに上回る見事なものになるだろう」

    著者の理想とする庭は、、、
    四季を通じての花いっぱいの空間のを作る事が目的ではなく、
    年に数日間ほど力一杯咲いて見せてくれればそれで充分と
    いう意味の事を言われています。

  • よくよく磨がれた刃物で皮膚を風が通るように触れると、その爽やかなタッチに、痛いというより何か起こったのか分からないことがある。サムライの神経が爪の先まで神経鋭く美を深く一瞬にして見つめつくす。
    もう、怖いです。しかし何度も覗いてみたい本。

  • 2011/06/07 文教堂で見かけて以来気になっていたIT批評の出版社サイトをのぞく→意外にもそこにWEB丸山健二

  • [さもなれば夕焼けがこんなに美しいはずはない]

    Author [丸山健二]
    Publisher [求龍堂]
    Reading Date [Thu.Mar. 10 , 2011]
    Contents 
    ・われわれにとって何かよい未来があるにちがいない。
     さもなければ夕焼けがこんなに美しいはずはない。
      ヨハン・ペーター・ヘーブル『アレマン詩集』の一節より

    ・本物の美は必然的に進化と深化の道をたどらなくてはならず、
     それを可能にするには飽くなき追求と地道な努力の積み重ね
     以外にあり得ない。美は無限であり、底なしであって、
     ために、ひとたびそこに足を踏み入れ、本道を歩むことの
     醍醐味を味わってしまった者は、二度と抜け出せない。

    Impressions 
    ・タイトルの美しさと園芸が好きなので、
     手に取ることになったこの本。
     初めて丸山健二氏の本を読んだが、
    「全ての芸術は偶然の産物であるとする説は
     、どうやら正しいのかもしれない」という
     芸術観はどうなんだろうと、ちょっと考えてしまう。

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著者プロフィール

1943年、長野県飯山市に生れる。国立仙台電波高等学校(現在の国立仙台電波工業高等専門学校の前身)卒業後、東京の商社に勤務。66年『夏の流れ』で第23回文學界新人賞を受賞。同年、同作で芥川賞を受賞し作家活動に入る。68年に郷里の長野県に移住後、文壇とは一線を画した独自の創作活動を続ける。また、趣味で始めた作庭を自らの手による写真と文で構成した独自の表現世界も展開している。近年の作品に長編小説『我ら亡きあとに津波よ来たれ』(上・下)。『夢の夜から口笛の朝まで』『おはぐろとんぼ夜話』(全3巻)、エッセイ『人生なんてくそくらえ』、『生きることは闘うことだ』などがある。

「2020年 『ラウンド・ミッドナイト 風の言葉』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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