和菓子の意匠―京だより

著者 :
制作 : 井上 隆雄 
  • 京都新聞企画事業
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  • Amazon.co.jp ・本 (159ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784763806420

感想・レビュー・書評

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  • 読んで、見て、そして食べたくなります。お菓子を買うのが楽しくなりました。
    京都の和菓子、上生菓子を月ごとに、季節とともに紹介しています。 表題の通り、そのお菓子のデザインの意味、形状や、模様や、色彩の意図、 職人がこめた思いが和菓子の奥ゆかしさのなかに伝わってきます。洋菓子のような煌びやかさはないものの、まさに侘び寂びの世界。地味に思っていた和菓子の秘めた華やかさに魅了されました。

    和菓子の美しい姿が見られるものの、その写真が少しさびしい気がします。まあ、でも写真集ではないのだから仕方がないかしら。
    もう少し美しい上生菓子を眺めたい……
    そのため、お店へ行きたっぷりとお菓子を見つめ、店員さんに季節のお菓子などを伺い、購入してきてしまいました。さらに、薯蕷饅頭のシンプルな焼印や紅模様にさえ心が動かされました。今までは、ただ、美味しいお饅頭だったのが、今では気になる一品。

    さて、この本ですが、最後に和菓子用語ミニ辞典がついていました。 その中から、一つ、おかきなどの原材料にもよくある、「寒梅粉」
    ~『粳米の餅を乾燥させて低温で焼き、粉末にしたもの。』
    恥ずかしながら、私は酸味を加えるための梅ぼしを粉にしたものだと思いこんでいました……
    勝手な思い込みは自分の世界を狭くしますね。

    お饅頭一つも、作りての心意気が伝わってくると、さらに美味しそうに見えてきます。口に運ぶのがもったいないようにも思えてしまいます。
    茶道のお稽古も始めようかしら。

  • <京の和菓子で綴る歳時記>

    茶道の月刊誌に1年間に渡って連載されたものに少々手を加えて書籍化したとのことである。
    睦月は松、如月は梅、と旧暦月名にそれぞれの月にふさわしい言葉を沿え、それにちなんだ茶席の和菓子を紹介していく。普段のおやつというよりも、ちょっとよそいきの上生菓子である。

    和菓子は料理とは異なり、「旬の素材」があるわけではない。色や形、故事来歴に基づき、すなわち意匠で四季の移ろいを感じさせるのが、和菓子の季節感である。

    本書では、月々のキーワードが1つに絞られている。もちろん、その月をそのひと言で網羅できるわけではないが、敢えて1つに絞ったことで、その言葉の持つ広がりを感じさせ、延いては和文化の持つ奥深さにも誘う仕掛けともなっている。
    京の和菓子は、「ざんぐり」という言葉に象徴されるように、あまり作り込みすぎず、見る人の思いや想像に委ねる部分が多いように感じられる。かっちりとそのものを写し取る具象画というよりは、抽象画を思わせる。余白が多いと言ってもよいのかもしれない。

    雪から芽を出す緑を表す「下萌」は、弥生のほのかな「ぬくもり」を感じさせる。卯月の「花筏」は、川面に浮かび流れていく花びらを象る。
    こうした意匠はお茶を楽しむ人々と、和菓子屋の主人たちのやり取りの中で洗練されてきたものである。
    時代が移り、こうした意匠がなかなか通じなくなり、和菓子屋の主人が工夫を凝らしても客にわかってもらえないことも増えたという。その乖離をいくぶんでも埋められればというのが著者の思いでもある。そのため、ある程度お茶を知っている人向けであるのかという印象も受ける。
    時代を超えて残ってきた意匠は、眺めるだけでも美しい。だが背景を知ればより奥深く、味わいも一層増すものだろう。

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