マクナマラ回顧録 ベトナムの悲劇と教訓

制作 : 仲 晃 
  • 株式会社共同通信社
3.43
  • (0)
  • (9)
  • (12)
  • (0)
  • (0)
本棚登録 : 74
レビュー : 8
  • Amazon.co.jp ・本 (581ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784764103832

作品紹介・あらすじ

ベトナム戦争は誤りだった。ケネディ、ジョンソン政権の国防長官として戦争を指揮した著者が、30年近い沈黙を破ってついに語った世紀の告白。当事者ならではの生々しい証言、未公開資料、極秘電報などで、アメリカが泥沼の戦争に入り込んだ経緯を再現しつつ、21世紀への教訓を探る。全米騒然のベストセラー。

感想・レビュー・書評

並び替え
表示形式
表示件数
  • 2009年7月6日に逝去した、ベトナム戦争時の米国国防長官のロバート・マクナマラの回顧録。随分前に購入していたのですが、その厚さに躊躇して長く放置していたのを、逝去のニュースをきっかけに読み切りました。

    繰り返されるのは、政権にはベトナム以外にも多くの懸案事項を抱えていたことと、誰も地政学的に深い知識を持った専門家がおらず、内部での検討が浅かった(!)。今となっては実感の伴わない東アジアのドミノ理論(ベトナムが共産化すると、他の地域も相次いで共産化されてしまう)を疑いもなく受け入れて判断の根拠としたことが嘆かれている。ベトナム専門のチームを構成すべきであり、ベトナムの専門家の参加を引き入れるべきであった、と言うが、それはまさにフォード自動車という民間企業から政権に入るにおいて求められたものではなかったかと思われるのである。その場、その場では出来る限りのことをした、また更迭(自身では更迭とは認めていないが)の前には北爆やベトナム介入の縮小まで提言した、と弁明している。

    おそらくはまじめでかつ頭のよい人だったのだと思う。将来に失敗の研究ができるようにと文書を編纂させたこと(いわゆるペンタゴンズペーパー)や、ケネディ大統領への絶対的とも感じる忠誠の表明、ジョンソン大統領に対してもレスペクトを決して失わない様は彼の矜持であるのでしょう。

    それにしても、自身が深く関与した悲劇については冷淡です。300万のベトナム人が死んだと書きながら、死んでいったものたちへの直接的な謝罪の弁はなく、同じ書で年老いてなお健脚で登山を行なった写真を掲載し、「できることならこれからも死ぬまでスキーと登山を楽しみたいものです」と書いてしまうのは、やはり傲岸という印象を受けてもやむをえないと感じるところです。

    1982年にアインシュタイン平和賞、オックスフォード大学から名誉学位授与時に「彼は剣を鋤に鋳直す」をいう文言を受けたと写真のキャプションに書くのも同じです。過去の過ちに殉じて黙すべしとは言わないものの、ここで書くべきところではないのではと思うのです。

    ベトナムを描いた名著と謳われる『ベスト&ブライテスト』で、自身を痛烈に批判したハルバースタム(すでに逝去)が、1965年時点でさえベトナムからの撤退はアメリカの名声を失い、共産主義の圧力を高めることになると反対している記事を書いていると書くところもまたプライド高き性格からなのでしょう。

    とはいうものの、全体的には誠実たらん(特に事実に対して)としているところは認められるところかと思います。不思議な印象の本でした。
    米国国防長官というのは個人が責任を取るには重過ぎる職責であるのかもしれません。

  • ロバート・マクナマラという人には、結構、興味がある。20代でハーバードのビジネススクールで教え、その後、第2次世界大戦中に統計関係の仕事で戦略策定にかかわり、大戦後、フォードの再建を行う。そして、その社長になった数週間後、ケネディ大統領からの要請により国防長官になる。そのとき44才。国防長官退任後は、世銀の総裁として活躍。という、すごい履歴の持ち主。
    が、一般的には、ベトナム戦争の責任者と認識されていて、ベトナム戦争は「マクナマラの戦争」と言われるくらい批判の対象。この圧倒的なエリートの人の頭のなかがどうなっているのか、というのに以前から興味をもっていた。
    その人のベトナム戦争回顧録なので、95年にこの本が出版され、97年に翻訳がでたときは、当然、興味もあり、読もうと思った。でも、なんとなく先延ばしにしていたら、数年まえに「フォッグオブウォー」という彼のインタビュー映画を観て面白かったので、読もうと思って、本を購入したのだが、やはり、そのまま放置。と、いうなかで、「今だ」という感じがしたので、ついに読んでみた。
    さきに、映画をみていたので、「あっ」と驚くところは少なかったのだが、やはりこれは今読むのに必要だったので、これまで読まなかったんだな、と思った。
    頭が良いだけじゃ、だめなんだという典型として論じられることが多いマクナマラさんだが、読んでみると、大統領への忠誠心とか、率直な提言力などなどが組み合わせられても、ベトナム戦争は防げなかったんだろうな、と思う。
    不確定な状況のなかで、判断することの難しさ、頭の良い人たちの集まりでも、グループシンクに陥ってしまう事の不思議さ。かなり痛いものがある。

  •  ベトナム戦争を行っているアメリカ側で国務長官の見方で書いたものである。ケネディがキューバのカストロをギャングを雇って暗殺しようとした話はなぜか抜けているが、ベトナムへ支配について、回顧録当時はほとんど貧しい知識のままに戦争を継続していたという悲しい事実を書いている。

  • ベトナム戦争時のアメリカ国防長官、ロバート・マクナマラの国防長官在任中の回顧録。
    生い立ちから第二次大戦、学界、フォード自動車、そしてケネディ大統領によって国防長官に任命されるまでを簡単に纏め、それ以後はベトナムの泥沼にはまっていく過程を述べています。
    本書を読んでもっとも強く感じたのは、米政府の「逡巡」そして「稚拙」ですね。
    天下のハーバードで博士号を取ったマクナマラだけでなく、それに匹敵する頭脳とキャリアを有する有能な政治家・官僚・軍人たちでさえ、大いに悩み、迷い、決断できず、為すべきことをせず、大惨事を引き起こすとは!
    ベトナム戦争だけでなく、キューバ危機や第三次中東戦争、更には国内の公民権運動など様々な大問題によって押し潰されていく米政府の苦悩が判ります。
    ケネディだけでなく、その後のジョンソン、ニクソンと大統領が代っても解決できなかったのは、ベトナムの深刻さももちろんですが、該当部門の未経験者を高官に多く登用する米政府のあり方が問題ですね。
    なんせマクナマラは若い頃(第二次大戦中)に軍に勤務(会計専門家として爆撃作戦の立案を補佐)した経験があるとはいえ、軍事行政には事実上まったく未経験で国防長官となり、いきなりベトナムやキューバの大問題を背負わされたのだから!
    現地(ベトナム)の情勢を判断するためとはいえ、一体何度サイゴンに高官を派遣すれば気が済むんだか(呆
    大統領を批判せず、自身の失敗を率直に認めているものの、読者には失敗の全責任がジョンソン大統領にあるように思わせるのはさすがですねw

    それにしても、ボー・グェン・ザップやグェン・バン・チューを「ザップ」「チュー」と呼ぶのは、ベトナム人のファーストネームとラストネームを解ってないのかね?
    ハーバードの博士もこんなものかw

    ニン、トン♪

  • その時代を生きた人の生の記録は往々にして、冗長さが目立つし、これもそうなのですがそれでも最高に面白い。

  • 悲劇のインドシナを更に混迷へと向かわせたアメリカの責任は大きいと思います。

  • 『このことばはたぶん軍部にはきびしすぎたかも知れませんが、』
    とか日本語としておかしい所が多い。訳者あとがきはしっかり書けてるのにね・・・
    映画フォグオブウォーを見ることにします。

全8件中 1 - 8件を表示

ロバート・マクナマラの作品

マクナマラ回顧録 ベトナムの悲劇と教訓に関連する談話室の質問

ツイートする