水の透視画法

著者 :
  • 共同通信社
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感想 : 16
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  • Amazon.co.jp ・本 (336ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784764106321

作品紹介・あらすじ

日常に兆すかすかな気配を感じて、作家は歩き、かんがえつづける。突然の大地震と大津波、眼にしたことがないそら恐ろしい光景。それは結末ではなく、新たなはじまりなのか。ことばから見はなされた現代世界を根源から省察する珠玉の作品群。

感想・レビュー・書評

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  • 新聞を広げて縦にすると、
    活字がサラサラと砂粒でも落ちていく様に見えてしまう。
    政治、経済、事件、事故…

    昨日の新聞を今日のものだと言われても、きっと私は気付かない。

    「もっとNEWSに関心を持たなきゃダメだ…。」
    そう言われるから開くけど
    こぼれる活字は止まらない。

    でも、その中で必死に紙面にしがみついてた記事が
    辺見さんの『もの食う人々』であった。

    あのコラムだけは
    ピンピンと跳ね回っている言葉を追うのが楽しくて
    夢中で読んだものだった。

    あれから数年、
    病によって少し体が不自由になってしまった著者。

    その言葉にかつての様な激しい躍動は見られぬものの、
    沈黙の自己内部からふかりふかりと浮かび上がってくる、透明な思念にもまた、力強く打つ鼓動を感じた。

    それは、辺見さんのかつての言葉が、私の脳や記憶に対して新鮮な刺激を与えてくれたとするなら、
    本書では
    心の奥底へと静かに沈殿しつつある言葉の様な。

    どちらにしろ<生きた言葉>であることに疑いの余地は無い。
    私の心にしっかりしがみつき、逃げていかない所を見ると。

  • 日常からすくいとられた断片が深遠な世界に到達する、上質の作品。

  • 『もの食う人びと』を読んだ時の強い印象が残っていたので買ってあった『水の透視画法』だが最近の日本の状況を憂う気持ちが共有できるのではとの思いから読み始めてみた。
    病気をされて動く範囲がかなり狭くなったなかでの辺見さんのより鋭くなった視点から日本の状況を観察しその憂いを書き付けた文章はエッセイストが書いたエッセイというより思想家が書いた軽い文章といった感があるくらいだ。
    今の日本の政府の右傾化、好戦と思われても否定できない法の改悪・新法の設立、学校や社会にはびこるいじめ、暴力などなど目に余る日本の状況に思いを馳せ、憂いを表しながら一番気にしているのはことばの弱体化という気がした。
    はっきりと明記はしていないが、今の世の多くの問題にかんしてのメディアやメッセージを発する事をなりわいとしてい人たちの鈍感さ、問題を直視すrことからの逃避を大きく憂いているような感じをうけた。本人の意図したところとはずれた感想かもしれないが、僕は読みながらも自分が微力ながらできる事はなにだ?と考えさせられた。
    そんなちょっと重いが示唆に富んだエッセイ集を読むBGM
    に選んだのはPat MethenyとBrad MehlauのDuo作品"Metheny Mehldau" 。Jazzはまだまだ生きてるな。

  • ルポライターがエッセイストになられると読むほうがつらい。

    病気のことは別にして。

  • 高校時代に
    もの食う人々て受けた衝撃を、またじわりと味わいたい。

  • 日常を切り取る言葉の凄味に呆然としてしまいました。

  • なぜ予約したのか?で読んだ。
    初対面の作家で 作者の背景も知らず 読み 言葉の深さにおそるおそる読み進んだ。完読できなかったけど面白かった

  • 思考すること
    今、一度自分の中に
    取り込んで

    思考すること
    今だからこそ
    足を地につけて

    思考すること
    腹をくくって
    今日からを
    生きるために

    今のこの時代に
    辺見庸という思想家が存在するのは
    現代の 一条の光 かもしれない

  • 辺見庸の言葉は心底まで突き刺さりますね。

    辺見庸は何をしたのか?というのを考えた。
    辺見庸は書いたわけだが、それ以上のことは?
    著書のなかで、辺見庸が傍観者の振る舞いをしていたことが、意図的に強調されているとも思えるように書き綴られていることがあったわけだが、
    それが疑問だ。書いただけなのか。行動が伴わない思想は不毛じゃないのか。

    辺見庸は孤独なのか。あるいは自由か。無力か。深いあきらめか。

    あとに進むにつれて、諦観の境地に達してしまったのかと感じるようになった。老いが辺見庸をそうさせたのかと。

    あとがきを読んでも分からないですね。
    辺見庸は何を望んだか。何のために書いたか。誰のために書いたか。
    「自分のため」という答えがあるかもしれないけれど、そこから何らかの変化が生まれるか。諦めを深めるばかりでは・・・みたいなね。

  • 「ハトにさえおびえる小さな黒い犬」が出てくると、安らぐ。
    一編一編が重い。

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著者プロフィール

小説家、ジャーナリスト、詩人。元共同通信記者。宮城県石巻市出身。宮城県石巻高等学校を卒業後、早稲田大学第二文学部社会専修へ進学。同学を卒業後、共同通信社に入社し、北京、ハノイなどで特派員を務めた。北京特派員として派遣されていた1979年には『近代化を進める中国に関する報道』で新聞協会賞を受賞。1991年、外信部次長を務めながら書き上げた『自動起床装置』を発表し第105回芥川賞を受賞。

「2022年 『女声合唱とピアノのための 風』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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