日本キリスト教史

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  • Amazon.co.jp ・本 (504ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784764274198

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  • キリシタン伝来に始まり、鎖国の際にも日本入国した宣教師シドッチ、そしてキリシタンの発見事件(くずれ、と呼ぶらしい)、明治期に至る幕末・維新後にも高札撤去までの迫害、1865年のプロテスタント最初の殉教者・市川栄之助。しかもこの時代はキリスト教式の葬儀は何と禁止され、罰金を科せられた!明治の初めには僧侶としてスパイの如く洗礼を受け教会に入ってきた人たちまでが多くいたなどとは、今では及びもつかない。「愛」という言葉は元々仏教では「欲望」に近い悪い意味だったとは、可笑しい。用語の世界ではキリスト教が勝利したのだ。足尾銅山事件、大逆事件、内村の不敬事件などの迫害の嵐が吹き荒れ続き、その中で、教育、福祉、市民運動、文学など幅広い分野でのキリスト教の良い影響力の拡大があったことが力強い筆で書かれている。しかしながら、15年戦争に限らず、日清・日露、第1次大戦などにおいてキリスト教界が軍国主義の旗を振っていたことが、おぞましい歴史として突き付けられた気がする。戦争末期の1944年8月20日の決戦態勢宣言文書が日本基督教団の名前で出ていたのには、吐き気さえ感じる。
    黒崎幸吉、本多庸一、海老名弾正、澤山保羅など、内面的倫理性を重んじる人たちを「陽明学的キリスト教」と呼んでいるのは、興味深かった。1933年の美濃ミッション事件については、初めて詳細な事実を知った。信教の自由を制限された中で苦労した子供たちを考えると心が傷む。一方、ゴー・ストップ事件で軍と警察が対立し、クリスチャン警察部長・粟屋仙吉の勇気ある態度は心強い。

著者プロフィール

1935年生まれ。立教大学名誉教授。専攻は、宗教学・宗教史学。著書に、『明治宗教思潮の研究』(東京大学出版会)、『内村鑑三』(岩波新書)、『内村鑑三日録』(全12巻)『日本キリスト教史物語』『近代日本のバイブル』『日本キリスト教史』(いずれも教文館)、『日本宗教史物語』(聖公会出版)、『聖書を読んだ30人』(日本聖書協会)、『中勘助せんせ』『聖書の日本語』『内村鑑三の人と思想』(いずれも岩波書店)など。訳書に、内村鑑三『代表的日本人』『余はいかにしてキリスト信徒となりしか』など。

「2019年 『文語訳聖書を読む 名句と用例』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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