民防空政策における国民保護 防空から防災へ

  • 錦正社 (2016年10月15日発売)
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Amazon.co.jp ・本 / ISBN・EAN: 9784764603455

感想・レビュー・書評

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  • 精神主義などの非合理性により多数の国民を無駄な死に追いやったなどの非難がなされて悪名高い防空法をはじめとしたわが国の民防空政策について、そこには国民保護としての側面があったのではないかという仮説を論証しようとした、自衛官の博士論文を書籍化したもの。

  • 防衛大出身の著者による博士論文である。民防空を中心に空襲全般について詳細な研究に基づく分析が行われており、興味深かった。空襲に対する民間の防空組織や訓練は、一方的に批判されがちなところを逆に批判しているが、論理的で説得力があった。
    「警視総監 坂信弥は「私の履歴書」(日経新聞)において「防火を放棄して逃げてくれればあれほどの死人は出なかっただろうに、長い間の防火訓練がかえってわざわいとなったのだ」と述べている。この一文は、さまざまな文献などで引用され、防空法に悪法のイメージをもたせる原因ともなっている」p5
    「住民組織なくして救護活動は、成り立たないであろう。国家総動員の末端組織で「人民支配の機構」とまで言われた家庭防空隣保組織(隣組)であるが「USSBS報告(米国戦略爆撃調査団報告)」にあるとおり、この組織がなければ、被害と混乱は、さらに大きなものとなったと言うことができる。現代においても、災害における住民組織の重要性を、我々はすでに多くの地震・津波災害から学んでいる」p51
    「(ドーリットル空襲)死者39人、焼失61戸」p77
    「(東京大空襲45.3.10)これは米軍にとっては大成功の作戦であった。それ以後の日本空爆において、同じ戦術をとっているにもかかわらず、投下した焼夷弾の割には米国側にとっては物足らない結果となるほど、3月10日の戦果は、極端に大きかったとされている(強い風、住宅密集地であったことが原因)」p79
    「(米軍は、隣組による消火活動を研究し)この活動を上回る戦術と兵器の使用法を実証試験により確認するという周到さがあった(投下密度の拡大と燃焼力の拡大)」p91
    「「太平洋戦争による我国の被害総合報告書」によれば、東京都の1944年の人口(7,271,001人)に対し、空襲による死者数(97,031人)の割合は、約1.3%である。「分散疎開」がなされていなければ、疎開した人471万人の1.3%が犠牲になっていたであろうと推定することができる。その数は、約61,230人となり、この命を確実に救ったと算出できる。沖縄の死亡率は、約19%であり、(本島外及び島内北部に)「避難」が進められていなければ、「避難」した16.5万人の19%、すなわち約3.2万人が犠牲になっていたと推測できる」p109

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著者プロフィール

1962年生まれ。防衛大学校卒業、海上自衛隊に入隊後、護衛艦「みょうこう」、技術研究本部(現防衛装備庁)、防衛省防衛政策課などで勤務、2010年から2017年まで防衛大学校防衛学教育学群准教授。この間、2011年放送大学大学院修了、2014年拓殖大学大学院国際協力学研究科博士後期課程(安全保障専攻)満期退学。博士(安全保障学)、2017年海上自衛官を2等海佐で定年退職。一方で地域活動に励み、横須賀市消防団、子供会会長、中学校のPTA会長を務める。現在は、町内会役員を務めるとともに地域の子どもに祭り囃子を教えている。
著書に『民防空政策における国民保護』(錦正社、2016年)、主な論文に「帝国海軍創設期の海兵隊」(『軍事史学』第54巻1号、2018年)、「軍艦『清輝』の欧州航海:明治十一年、軍艦初の欧州航海を支えたもの」(『軍事史学』第53巻1号、2017年)など。

「2019年 『初の国産軍艦「清輝」のヨーロッパ航海』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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