それからはスープのことばかり考えて暮らした

著者 : 吉田篤弘
  • 暮しの手帖社 (2006年8月発売)
4.04
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  • Amazon.co.jp ・本 (269ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784766001303

それからはスープのことばかり考えて暮らしたの感想・レビュー・書評

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  • やっと読んだ―!
    吉田篤弘、初読み。
    ブクログでちらほらと名前を見る機会が多くて気にはなっていたけれど、やっと読めた。

    うん、分かるなぁ、評価が高いのも人気があるのも。
    このほっこりしたゆるーい感じ。
    昭和を感じさせるレトロな描写。
    なんてたって夜鳴きそばだもん。
    これ、全部計算なのかな。絶妙なゆるさがうまいなぁ。

    でもスープ美味しそう??
    ベールに包まれたまま終わってしまったような。
    なんとなく辰巳芳子さんの滋味深いスープを想像しながら読む。
    手間ひまかけたあんなイメージかな。
    具体的な事考える方がやぼってもんかな。

    スープも良いけど、安藤さんの作ったサンドイッチを食べてみたいな~。
    サーモンとアボカドをバケットで挟んで・・・、なんてサンドイッチも良いけど、最近ちょっと原点回帰。
    きゅうりとハムのサンドイッチって美味しいなぁとしみじみ感じる。
    それと挽きたてのコーヒーがあれば最高!
    って、スープの本だった(^_^;)

  • なんとなく懐かしい街並みに、ゆったりとした空気が流れる。サンドイッチと教会と古びた映画館、そしてスープ!
    読んでいるとどこからか美味しそうなスープの香りが…本の中から、たまらないスープの香りが漂ってきているんじゃないかと思ってしまう程、もうすっかりこの本の世界観に魅了されてしまった。特別な事件は起こらない。ごくごく普通の日常と小さな出会い、そして小さな幸福。それがたまらなく愛しく思えた一冊だった。

  • すきだなあ、としみじみ感じてしまう小説。

    仕事をやめて、引っ越してきた町で、美味しいサンドイッチ屋さんを知ったオーリィ君は、毎日サンドイッチを買いに行き、お気に入りの映画の上映があればそれが何回目でも映画館に行く。

    大家さんのマダムや、サンドイッチ屋の安藤さん、安藤さんの息子のリツ君、映画館でよく見かける緑色の帽子の老女、宙返りのうまい森田君など、愛すべき登場人物たちとの交流にいやされました。
    なんていうか、ほや〜ん、ってかんじ。サンドイッチはおいしそうだし、スープはもっとおいしそうだし、恋愛のエッセンスはちょうどいい分量だし、読み終わったあとはすき!と心の中でさけびました。
    オーリィ君は26歳くらいで、安藤さんは40歳前くらいかな?あおいさんはたぶん60歳くらいで、マダムはたぶん40代?

  • おいしそうな食べ物が出てくる小説だと聞いて、読んでみた本。
    サンドイッチ店のオーナー安藤さんが作る特別じゃないけれど格別においしいサンドイッチや、主人公のオーリィ君がみんなと作り上げたスープは、確かに是非とも食べたくなった。

    吉田篤弘さんの作品は今回初めて読んだ。
    淡々とした文章なのに穏やかで、読み終わると おいしいスープを食べた時のように、気持ちがほっこりとして自然と微笑んでしまう。
    大きな事件は全く起きないのだけれど、日常のちょっとした風景の描写や、登場人物の間で交わされる会話に、「へぇ」「ふうん」「なるほど」と驚きや発見や深さがあって、目を離せず読み通してしまった。

    登場人物がみな魅力的で、その人との関わり方がなんとも素敵。癒される。こんな風に毎日を生きてみたいと思った。
    「かもめ食堂」の世界観に近い気がする。

    この人の作品をたくさん読んでみたい。
    まずは月舟三部作の他の作品を。

  • とある町に越して来た青年オーリィ君。商店街のはずれにある「トロワ」のサンドイッチに魅了され、通い詰めるうちに店主の安藤さんとその息子の小学生、リツ君と言葉を交わすようになる。オーリィ君は昔の日本映画も好きで、映画館へ足を運び同じ映画を繰り返し観る。それは彼が恋をした銀幕の女優に出会う為だった。あたたかくてささやかな日々が、やがて彼に時を越えた出会いをもたらす。

    オーリィ君や安藤さん、リツ君が暮らす町、この物語の世界では、私が生きる世界と比べて時間がゆっくりと流れているような気がした。私たちはいつも時計を気にして、時間に追われる日々を送っている。しかし物語の人々にはそんなせかせかした様子は見られず、朝日が昇り、働いて、映画を見て、日が暮れて1日が終わる、その流れを受け入れ、ゆったりとした気持ちでそれを繰り返しているような気がした。また物語自体が過去へ向かっている為に、時間の流れにブレーキがかかっているように感じた。オーリィ君が観るのは昔の映画ばかり。リツ君は幼い頃に亡くなった母親を想って十字架を見上げる。オーリィ君の下宿の大家である屋根裏のマダムは、過去に結婚していた時のお義母さんへの憧れを口にする。そのような過去への志向性が時間の感覚を鈍らせているのかもしれない。

    この物語にはサンドイッチに始まり、おいしそうな食べ物がいくつか登場する。身近で素朴な食べ物ばかりだが、どれもおいしそうに描かれていてとても魅力的だった。おいしいものを口にすると、誰でも心がほぐれて笑顔になる。ゆったりとした時間の流れとおいしい食べ物で現実世界を忘れさせ、ほっこり癒してくれる物語だった。

  • 「くらしの手帖」に連載されていたのを、何話か読んだ記憶があった。やわらかいタッチを好ましく思っていたが、連載中に生活環境が変わり、雑誌自体を読まなくなってしまった。

    あらためて人に勧められて思った。そういえば結末はどうなったろう。


    もしかしたら、一度終わりまで読んでいたのかもしれない。私はお話の好き嫌いに関わらず、結末を覚えていないことがままある。

    ***
    描かれているのは、おそらく秋から冬にかけての季節なのだけれど、不思議と温度を感じさせない。

    思い描いていたのは、ちょうど今くらいの季節。何も用事が入っていない春の昼下がり、窓の外にある薄曇りの空。ほとんど枯草ばかりの地面に、黄色い花がわずかに咲いているような。色彩が豊かなわけではないが、寒々しい景色でもない。

    読み返したら、冒頭に「毎日のようにうす曇りの空がつづいて」とあった。季節はともかく、空模様に関しては、最初に数回書き出しただけのイメージが最後まで読み終わっても続いていたということか。これってすごい技術なんじゃないかしら。

    ***
    文章がやわらかい、という印象は変わらなかった。漢字の混ぜ具合と、言葉選びによるものだろうか。

    それに加えて、上下左右、もしかしたら行間にもたっぷりと余白を取った装丁が効いている。普段なら「紙幅かせぎ」だと感じることが多いのだが、本書に対してはそう思わなかった。あるいはこれも、薄曇りの空を保っていた要素の一つなのかもしれない。

    ***
    舞台は日本の郊外なのだけど、どこかヨーロッパのような雰囲気がある。というか、「しょうゆ臭さ」が無い、というべきか。夜鳴きそばの描写も含めて。
    唯一、お味噌汁の場面だけが例外。

    ***
    タイトルはスープだが、むしろサンドイッチのおいしさが際立っている。

    ご縁があったのか、読み終わった数日後においしいパン屋さんを見つけた。安藤さんの技術は無いが、パンがおいしいので、もう何を挟んでもおいしい。合わせるスープは、まだ無い。

  • 毎日の食事を作る過程で、こんなにゆったりと時間の経過を気にせず、食べてくれる人が、ただ美味しいと言ってくれるだけの為に作れたら、どんなに質素なものでも、十分に胃と心が満たされるだろう。
    ふんわりした食パンにたっぷりの具材が挟まったサンドイッチと、最初の一口からため息が出る様な飾り気のないスープ。
    読んでいる自分もその町をぶらぶらと歩いている様な気持ちにさせる。
    トロワでサンドイッチを買い、月舟シネマで昭和初期の映画を見て、暮れなずむ商店街を帰るともなく歩いてる。
    せかせかと先を急ぐこともなく
    遠回りしながら、ほんの少しのワクワクを見つける。
    やさしい文章にゆったりと身を委ねることができる。
    挿絵も可愛らしい。あくせくと毎日を過ごす中、この本を読むだけで違った時空間へ運んでくれる。まさに癒しの本。

  • 路面電車の走る街に引っ越してきた青年、大里ことオーリィ。
    アパートの大家のオーヤさん。
    おいしいサンドイッチの店「3(トロワ)」(店主が安藤。で、アン・ドゥ)。
    オーリィがスクリーン越しに一目惚れした昭和映画の脇役あおいさん。
    〈月舟シネマ〉ポップコーン売りの青年。遠回りをしなくなったお姉ちゃん。
    彼らの作りだす、どこか懐かしい物語。

    吉田篤弘は初めて読みましたが、とても良い文章を書く。
    「それからはスープのことばかり考えて暮らした」
    口に出して読みたくなる日本語、良いな

  • けしてつまらないわけではなく、むしろ文体なんかは好きな感じなのに、イマイチ乗れなかった。
    おもしろくないわけじゃないのに、夢中になることもなくただ淡々と読んでしまったな。

    サンドイッチやスープがさほどおいしそうに感じられなかったのがいちばんの敗因でしょうか。
    とても雰囲気がいいだけに残念。

  • 具材やベース、煮込み時間やスパイス…
    あれをああしてこれをこうしてう~ん?、美味しいスープを作る為には
    さて、どうしたらいいものだろう?

    ふっと我に返ると
    今、自分の思考がスープに占領されていた事に気がつく。

    何かに夢中になる。
    何かに恋焦がれる。
    何かに心奪われる…

    それはそれは心満たされる瞬間で、とても幸せな事だとは誰もが知ってる事だから、
    物語には夕方の台所にお母さんが立った時の様ないい匂いが常に漂っている。

    人が口にするものを作る料理と言う作業は
    人を大切に思い、
    人を喜ばせたい、
    他人を思いやる行為が形になったもの。

    青年が作るスープを「美味しい」と喜んで口にする周囲の人達の温かさもまた心に沁みる。

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