みらいめがね それでは息がつまるので

  • 暮しの手帖社
4.02
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本棚登録 : 438
レビュー : 43
  • Amazon.co.jp ・本 (192ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784766002126

感想・レビュー・書評

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  • 評論家の荻上チキさんのエッセイに絵本作家のヨシタケシンスケさんがコラボ!
    荻上さんの体験にはシンパシーを感じるところもあったし、その体験ゆえに考え方や行動を広く柔軟であろうとする姿勢は尊敬する。
    ヨシタケシンスケさんの作品は初めてだったけど、ユニークな上に味わい深くて良かった。こんな作家が売れるなんて日本も捨てたもんじゃないなと思った。

    以下、気になったところを引用。
     「僕は、パレードを見ると、涙が出る。自己分析するに、どうも自分は『多様萌え』なようだ。異なる者同士が、それぞれ自由に行進していている姿を見るだけで、涙腺が緩む。」
    「確かに新しいメディアは、社会に新しいトラブルを持ち込む。でも、それによって救われる人もたくさんいる。片面ばかりを見てはいけない。それが一体、人に、社会に、どんんな役割を果たし得るものなのかを見なくちゃなと思う。」
     「(前略)人生は全てが教材になる。ゲームでも、ユーチューブでも。」
     「ライフストーリーをどのように語るのか。過去をどう捉え、今をどう評価し、未来になにを望むのか。そのイメージが崩れた時、人は危機に瀕する。今までの自分や、世間の『べき論』と比べることで、否定のループに陥っていく。」
    「何もかもに、その考えを押し付けるな。何も知らないくせに、勝手に噂するな。何もしないくせに、土足で踏み荒らすな。何も疑わないままに、そこから査定するな。こうやって生きているんだ。何が悪い。」

  • 庶民の生活を独特の感覚で見続ける荻上チキさんとヨシタケシンスケさんのコラボ本。
    視点を変えれば(めがねを付け替えれば)生活の見え方も変わることを教えてくれる。

    荻上チキさんは、子供の頃いじめに遭ってきたので、他人を平気で全否定するような意見に敏感になったことや、ウツになって悩み苦しんで生きてきたことを公開している。
    ラジオやテレビでの発言と変わらぬ優しく丁寧で少し控え目な語り口は本書でも同じです。

    最初のエッセイ「女の子の生き方」で、チキさんが多様性というものにすごく敏感なことが分かります。
    自分が子供だったころ「女の子らしくしなさい」という男の都合のいい女性像の押し付けが世間に蔓延しており、それが幸せになるための常識だった。
    ディズニー映画でも昔はそうだったが、近年はアナと雪の女王でもわかるように「ありのままの姿で自信を持って生きる」ことを良しとするように変わった。
    子どもに影響力の大きいディズニー映画について、そんなこと考えたこともなかったので改めてチキさんは鋭いなと感じた。

    大学でテクスト論を学んだことがチキさんの思考能力の基礎になってるようだ。
    作品や作者の時代背景などを検証し「これが正解」という読みはやめる。
    人それぞれの読み方があるのだから、さまざまな立場から読むという思考実験を繰り返す。
    うまく要約できないが、このような接し方を鍛えたようだ。
    勝手に作り上げた「正解」以外はダメという排除の姿勢はありません。

    本書はあくまでも荻上チキさんのエッセイがメインですが、各エッセイから感じ取ったヨシタケシンスケさん目線の世界がセットで楽しめるという構成になっています。

  • 夏頃に図書館で予約し、漸く回ってきた本。
    荻上チキさんのお名前は知っていたが、どんな方かはよく知らなかった。

    暮しの手帖に連載されていた物をまとめた本。
    世の中で、影になっている部分やマイノリティと言われる様々な'当事者'に会い、寄り添いながらその問題の核心について、私達に分かりやすく伝えてくれている。
    ご本人も、小中学校時代に酷いいじめを経験し、人との距離感を掴むのが苦手だと書かれている。当事者の事をより深く理解しようと仕事量が増えてしまい、鬱病になったことも。今は病気と上手く付き合いながらお仕事を続けられているそうだが…。

    全体的に重いテーマなのだが、そこにヨシタケシンスケさんの小話的マンガが添えられていることで、フッと抜けるような安堵感がある。
    ヨシタケさんの書かれたイラストあとがきは、「そう!そうだよね!」と何度も頷いてしまった。最後のオチもさすが!2020.1.8


    以下本文より

    ○ 何かの属性を持つなら、このように振る舞わなくてはならないとする規範の数々。自分の人生に関係のない他人が、遠くから自分の人生を勝手に査定し、嘲笑うために規範性を振りかざすなら、それは「呪いの言葉」にほかならない。
     どんな規範の言葉に呪われ、苦しめられてきたのか。自分と合わない相手と、規範で縛られて無理に付き合っていないか。人生のどのタイミングでも、重荷を下ろすことは赦される。114ページ

    ○ 小説経由だろうとテレビ経由だろうと、ネット経由だろうと同じこと。それをどう血肉化するかは、これから何を学ぶかによって変わるんだろう。166ページ

    ○生きづらさを取り除くこと。現在の社会のノーマティビティ(規範)を疑うこと。外に向けて発信はできても、内面化された自分の価値観を変えることはなかなか難しい。
    178ページ

     

  • 私が好きなラジオ番組「荻上チキ Session-22」のパーソナリティである評論家荻上チキ氏のエッセイ集。
    内容は雑誌「暮らしの手帖」に掲載されていたものを集めたものとのこと。
    挿絵を担当されたヨシタケシンスケさんの絵も印象的な本である。

    世間の固定観念に対してそれでいいのか、世界はそれだけではないと問いかけるような本である。
    一番印象に残っているのは、「ガラスの天井」という言葉から、荻上氏の母親が語る話のところ。
    女には教育は不要とか、女だからといろんなものが阻まれる時代の感覚は次の世代には味わってほしくない。

    私は男であるが、共感する。

    このほか、誰かを傷つけたり息苦しくしたりすることが一言も書かれておらず、できる限りそれを排除して行きたいと考える著者の考えに頷くところが多い。

  • 今 人気の若手評論家さんのエッセイ集を読んだ。この方はきちんと少数派や多様な人々に大事に寄り添うことができる人ですね。だからこそ人気が高い評論家でありリスナーが多いのでしょうけど。またヨシタケさんのイラストもとても効いていて楽しく読了しました。こうした若い評論家さんが人気なのも時代の流れを感じます 笑。良いエッセイ本でした。

  • この本が好きな理由は、著者のチキさんが過去の辛かった経験も踏まえながらいまの世の中を捉えていて、共感できるところが多かったからな気がします。弱さを知っている人の言葉は力強い。
    今の社会を、自分の経験を、身の回りに起こったことを、チキさんの「メガネ」を通じてみると、こういう見方もあるんじゃない?と提案されているような内容。ヨシタケシンスケさんの挿絵もさすがです。良い感じに文を緩めて、かつユーモアをもって理解を促してくれています。
    ちょうど子育てしているタイミングなのも刺さった理由の一つかもしれません。子どもには広い世界があると知って欲しい。差別や分断、呪いの言葉はなぜ悪なのか知って欲しい。
    わたしは普通に生活を送ってると、だんだんと世間にはびこる小さな悪を無意識にたいしたことないと思考停止しがちなので、こういう本でしゃきっとさせないとなぁ〜なんて思うのです。
    読みやすいよ。

  • 荻上さんのラジオを聴き始めてから、もうだいぶん経ちますが、著書を読んだのは初めてです。
    ラジオでは実に様々なテーマを取り扱い、少々難解なこともリスナーにわかりやすく解説してくれるし、時には気難しい政治家を相手に空気を読んでは聞けないこともズバズバと質問してしまう。わらかないことはわかりません、と言っちゃう。まだ若いのに・・荻上チキさん、どんなに優秀で隙のない人なんだろうと思っていました。もちろんラジオでは、飾らない顔を見せたりもしていたけれど。
    ところが、、読んでみて、、荻上さんも人間だったんだ・・というのが最初の感想でした。笑
    悩んだり、紆余曲折しながら生きてきて、今のチキさんがいるんですね。
    ところどころ、心を揺さぶられましたし、知的好奇心も刺激されました。この本で初めて知ったこともたくさんありました。
    自分の視野の狭さにも反省させられたり・・。チキさんくらいの柔軟な感覚を保っていきたいなぁと思います。
    私も「テクスト論」、学んでみたい!

  • LGBTのパレードを見に行った話、小中学生でいじめにあっていたこと、自分がうつ病であることの告白、子どもの不登校、差別について、ヨルダンに逃げたシリア難民、韓国の慰安婦問題、ドイツのアウシュヴィッツ強制収容所...荻上チキさんの視野の広さが伝わるエッセイだった。ラジオのパーソナリティーをされているのでほとんど休みがないのに、年一週間の休暇に海外取材をしてしまい、その話をまたラジオでされるそうだ。知らなかった。久しぶりにラジオを聴きたくなった。

    p84
    テクスト論という手法は、従来の文学研究とは異なる。作品や作者の時代背景などを検証する「実証主義」に対し、テクスト論は読みの多様性・可能性を追求する。作品を、作者の所有物とみなすことをやめ、目の前にある作品そのものに向き合っていく。文学であれ映画であれ、「これが正解」という絶対的な読みはない。色々な解釈の可能性があることを前提にし、それを言葉で説明していく。
    多様な読み方を探るためには、思想や理論のパターンを知る必要がある。人は誰もが、無意識のうちに「特定の読み方=イデオロギー」を内面化している。それぞれのイデオロギーには良し悪しがあれど、数々のイデオロギーのパターンを学ぶことで、テクストの批判的読解を行うことができる。
    解釈のための理論は多様だが、1960年代以降の現代思想は、ひと角潮流として「○○主義」を批判するような方法で運動や理論を形成してきた。例えば「男性」中心主義を批判する方法でフェミニズムの運動や理論が形成された。「白人」中心主義を批判する方法で公民権運動が形成された。「ヨーロッパ」中心主義を批判する方法で多文化研究が盛り上がっていった。「異性愛」中心主義を批判する方法で性的少数者の運動や理論が形成された。「健常者」中心主義を批判する方法で障害者運動や理論が形成された。特定の芸術のみを文化として評価する「ハイカルチャー」中心主義に対して、サブカルチャー研究が形成された。そんな具合に。
    それまで当たり前とされていた「読み方」を疑い、別の解釈を提示する。従来の文学研究が作者をめぐる研究だとすれば、テクスト論は読者のための研究だ。様々な立場から読むという思考実験を繰り返す。

  • いろいろなところにとてもシンパシーを感じた。
    うまく言葉にできないことをアウトプットしてくれる人が同時代にいるのは、運がいいことだし、心強いと思った。
    また、イラストとの掛け合いもとても素敵。
    続巻楽しみにしています。

  • 荻上チキさんの文章と、ヨシタケシンスケさんのお話、両方にふれられる超ぜいたくなエッセイ集です。

    まじめで真剣なんだけれども、くすっと笑えるところもあって。

    疲れちゃったなーという時にも、手に取りやすくて、ほっとする一冊です。

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著者プロフィール

1981年生まれ。評論家。メディア論を中心に、政治経済、社会問題、文化現象まで幅広く論じる。NPO法人ストップいじめ!ナビ代表理事。ラジオ番組『荻上チキ・Session-22』(TBSラジオ)メインパーソナリティー。同番組にて2015年度、2016年度ギャラクシー賞を受賞(DJパーソナリティー賞およびラジオ部門大賞)。

「2019年 『ネットと差別扇動』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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