今日拾った言葉たち

著者 :
  • 暮しの手帖社
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  • Amazon.co.jp ・本 (240ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784766002270

作品紹介・あらすじ

気鋭のライターが、不安だらけの現代を問う!
新聞、テレビ、ラジオ、書籍、雑誌、SNSなどから、著者の心の網にかかった言葉を拾い上げ、その裏に隠れた本質に根気よく迫る『暮しの手帖』の人気連載が、充実の一冊になりました。2016~2022年上半期分に大幅に加筆し、書き下ろしコラムや総論を収録。
人々が発する言葉の意味や、そこに映る「今」を見つめます。

感想・レビュー・書評

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  • 『暮らしの手帖』2016年から2022年に連載されたものを一冊にまとめたもの

    先日、松尾貴史との対談『ちょっと違和感』をリモートで視聴した
    二人とも淡々と大切なことを語っていた

    世界中で、とんでもないことが次々起こり、次々記憶から消えていく
    ふと気がつくととんでもないことに!

    自分の暮らしを大切に「おかしいな?」という感覚を常に持っていたい
    「言葉」を大切にしたい、と改めて思わせてくれた一冊だった

    ≪ ちょっと待て 溢れる言葉 立ち止まれ ≫

  • 作品紹介を全く調べずに図書館で予約したら、思った以上に社会問題がテーマ。街中のカフェとかで「偶然耳に入ってきた言葉」から何を思ったかをエッセイにしてるのかな、くらいに思っていたら全然違った…。

    2016年から2022年までに、新聞記事やニュース、著者が読んだ本などから「拾った」内容に、どう思ったか書かれている。
    読み応えありすぎて、お腹いっぱい。3年分くらいに区切って本にしてほしい。

    この本を読んでいる最中、子どもがやっている学習プリントに「知ることと考えることはちがう」という内容が出ていて、いやはやホントそれ…と思っている。

    社会の出来事を拾って、自分なりの考えを文章にする。
    できそうで、できない。やってない。
    手始めに、日記にもうちょっと何を考えたか書くようにしてみよう…。

    あとがきを先に読んだ。
    「それをやって何の意味があるんですか?」
    禁句だと思う。つい何の意味があるのかと思ってしまうけど、言ってはいけない一言だと思う。
    時間に追われる毎日で、タイパという言葉も生まれる中で、意味のあることばかり求められる。それもすぐに効果があることを求められる。それはけっこうしんどい。

    夫がイライラしながら子どもに「それ、なんの意味があってやってんの?」と聞いている。夫からすれば、意味なくやってる遊びは時間のムダなのだそうだ。彼にとっては、パズルや積み木、ブロックは意味のある遊び。おままごとは「なんの意味もない、ただ時間のムダ」なんだそう。
    いやいや。そりゃあ算数のセンスを磨くためにはブロックとかのほうがいいのかもしれない。でも、おままごとにもきっと何かの意味がある。そもそも、何の意味があるかなど、すぐに答えがでるわけじゃない。幼児期から「時間のムダ」とか「効率よく」とか怖すぎる。

    これはどうしたらいい、という事態に直面したとき、考える力が欲しい。いろいろ迷って、考える。それはきっと生きる力になる。

    声の大きい人の意見は通りやすい。社会の中でも、家の中でも。
    「私はこう思う」を繰り返すトレーニングの話。
    名付けようのない感情を持って生きている話。
    意味よりも大事なものの話。
    買うほどではないかな、ということで、感想の星をひとつ減らしたけど、考えるきっかけになった。

    知ることと、考えることはちがう。
    大きな声に飲み込まれずに、考えて「私はこう思う」を言語化していきたい。

  • ブクログの感想を見て、ちょっと興味がわいてきたので図書館で借りて読んでみました。
    普段ニュースを全く見ないしTVもほとんど見ないので、最後まで読めないかな?と思っていたのですが、読みやすくてスラスラと読めました。
    政治の事とか世の中の流れにもっと関心を持たないとダメですね。この本を読んで深くそう思いました。政治家がやりたい放題すぎw 笑い事ではないですね。危機感覚えました。
    普段ニュース見ない新聞読まない人こそ読んでみるといいかもしれません。

  • 「暮らしの手帖」に連載されたエッセイ。
    時が過ぎるというのはおもしろいもので、2016年から2021年までの五年間でも、後で見てみると当たりすぎて預言者ではないかと思うものも多々あります。

    2016年
    むのたけしさんは「たいまつ 遺稿集」で憲法について「憲法は生活の普段着です。だから、体に馴染むまで徹底的に着こなすことがまず先です。着こなす前に、新しいものを買ったのでは、自分にほうとうに似合うものがわからなくなりますよ」。現憲法では国民は守れないと「愛国者」を名乗る人たちが言う。
    2017年
    新聞の投書欄に本音。90歳の主婦が、今後ボケるかもしれない自分に何ができるかと考えてた結果、国会議員なんていいかもしれないと。都合が悪ければ「記憶にございません」で逃げれるし、大事な書類であっても、見当たらなかったり、なくしたら「見当たりません」で済ませられる。もし書類が発見されても、「丁寧に説明します」で時間切れを待って、うやむやにしてしまえばいいんだから・・・・。
    今年の経済再生担当大臣のことか。与党にはこのようにしなさいというマニュアルがあるんでしょうか。これを立派に習得したら大臣になれるのか。
    繰り返されてますな、それも蟻地獄とように奥へ奥へと。
    2017年
    久米宏さんが、日刊ゲンダイデジタルで、「開催まで強引に突き進む2020年東京五輪。どんなことでも放置されてしまうのは、大手新聞4紙が公式スポンサーとなったこととは無関係ではないだろう。」「日本人は“1億総オリンピック病”に蝕まれている」と・・・。
    たかだか数週間のために、街が壊され、人間の営みが放棄される。焼け太りするのは、ごく一部のお仲間ばかり。時代遅れの祭典に興奮する国は、それこそ国として時代遅れなのかもしれない。

    今頃になって“五輪汚職”、オリンピック大会組織委員会の高橋理事、紳士服大手、出版大手、広告会社、が事件と表沙汰に。一つでも多く売りたいと思うのが商人、でも正当性をもって正すのが政治。政治にたずさわる者が犯されてはやはり泥沼へと、ここにも蟻地獄がありましたな。
    2020年
    鴻上尚史・佐藤直樹の「同調圧力 日本社会はなぜ息苦しいのか」の本にある「税金と年貢は違います」
    菅総理の就任記者会見より「自助・共助・公助」の概念。震災の時の自分の身を自分で助けつつ、近くの人と助け合いという考えを、政治の基本理念に持ち込んでしまったのが菅総理。これって、政治の役割を豪快に放棄しているのでは・・・。
    まだまだ、あるんですが、書いているとムカムカしてきたのでこれぐらいにしときます。

    怒りながらも「今日拾った言葉たち」、
    世の中に溢れる言葉にふと立ち止まり、そこに映る「今」を考える。

  • 武田砂鉄さんを読むたびに
    馬鹿にならないように
    いや
    馬鹿にされないように
    ちゃんと
    考え続けなければ いけない
    と 思わせてもらえる

  • TV、ネットニュース、本、その他様々なメディアで拾った気になる言葉を筆者が読み解く。切れ味鋭い言葉が並んでいます。納得する点もあったり「そうなのかな」と疑問に思ったりと考えながら読みました。政治、国際・国内情勢に興味がある方におすすめです。

  • ここ3年ほどリモートワークのお供にラジオを聴くようになり、武田砂鉄さんを知った。声とテンション低めの喋り方が好きだなぁ、というのが最初の印象。いつもボソボソと何かをぼやいていて、若干面倒くさそうな人なのだけど、それがなんだか面白い。
    恥ずかしながら時事問題に疎く政治にまったく興味が持てない私にとっては、考えるきっかけをくれる貴重な人だ。政治家の酷い言動に呆れつつも、ついネタにして面白がってしまいがちなところを、砂鉄さんは淡々と批判する。批判はしても声高に煽らない。そこが信用できる。
    ラジオでもこの本の中でも「考えていかねばならない」という言葉が何度も出てくる。それっぽく話題を終わらせるためのよくある言葉なのだけど、砂鉄さんは本当に考え続けている。ほとぼりが冷め皆が忘れてしまった問題も、しつこく何度も話題に出してくる。
    政治は生活に直結している。そこに無関心ということは、生活を疎かにしているのと同じ。耳が痛いけど、落ちこぼれすぎてもはやどこから勉強すればいいのかもわからない…。そんな時この本をパラパラめくって気になった言葉をとっかかりにするのでもいいかなと思った。
    心に残る名言集のたぐいではない。素敵な言葉も問題ある言葉もどちらもある。どう捉えればよいかわからないものもいくつもあった。なるほどと頷いたり、そうは思わないけどなと首をかしげたりしながら、ゆっくり考えながら読んだ。

  • どうしても今年のうちに読み切りたかった本。
    濃いチーズケーキぐらい中身が濃く、示唆に富むので、あれこれ考え、行きつ戻りつしながらじっくり読みました。社会を映す言葉に対してじっくり向き合うことは社会と向き合うことであり、それはそれは濃かったです。
    僕たちが時代の流れの中でいつのまにか失ってしまった観点、人間として失いたくない観点に溢れており、過度に思考回路が自動化された現代人の脳の眠りについた部分を呼び起こしてくれる優しい本だと思います。
    やはり武田砂鉄さんの著作は素晴らしい。

  • わかってもらえないことや、わかってあげられないことが、ちゃんと心地よいままでいたい。わかんない部分があるからあなたと私は他人なんです。

  • 雑誌「暮しの手帖」で2016年から続く連載を1冊にまとめたもの。

    あとがきにもあるように、ここ数年は戦争・感染症・元首相の銃撃など大きな出来事が続いたが、著者はあくまで日常の暮らしの中にアンテナを張り言葉を拾い集める。

    これだけまとまった量の文章があると、著者が言葉に求めているもの、正確にいえば言葉を発する人間に求めるものが浮き彫りになっているように感じられる。
    それは決して「言葉遣いの巧みさ」などではなく、「言葉の根っこにある誠実さ」ではないかと思う。

    著者がその言葉に誠実さを認めれば、5歳の子供が電話相談で投げ掛ける質問さえ面白さと驚きと共に拾い上げるし、不誠実な言葉で責任を逃れ問題をうやむやにしようとする権力者はまっすぐに批判する。

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著者プロフィール

1982年、東京都生まれ。出版社勤務を経て、2014年よりライターに。近年ではラジオパーソナリティーも務める。
『紋切型社会――言葉で固まる現代社会を解きほぐす』(朝日出版社)で第25回Bunkamuraドゥマゴ文学賞などを受賞。他の著書に『日本の気配』(晶文社、のちにちくま文庫)、『マチズモを削り取れ』(集英社)などがある。

「2022年 『べつに怒ってない』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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