忘れないでおくこと 随筆集 あなたの暮らしを教えてください2 (随筆集 あなたの暮らしを教えてください 2)
- 暮しの手帖社 (2023年3月20日発売)
- Amazon.co.jp ・本 (228ページ)
- / ISBN・EAN: 9784766002300
作品紹介・あらすじ
豪華執筆陣で贈る珠玉の随筆集「あなたの暮らしを教えてください」は、『暮しの手帖』の本誌と別冊に寄せられた「暮らし」がテーマの随筆作品を選りすぐり、全4冊にまとめたシリーズです。
第2集は、日々の気付きにまつわるお話を集めています。当時の話題に触れて感じたこと、近所の猫やお店のこと、仕事や家事を通しての発見や、趣味や学びのなかで思うことなど、小さな日常をいつくしみたくなる一冊です。
感想・レビュー・書評
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800〜1000字位なのかな?
短い量でピリッと気の利いた文章を書けるって
ほんとうに憧れてしまいます。
真面目な題材よりも
その人のアンテナにしか引っかからないような
たわいもない事を書いたものが好みです。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
短文ながらもその人が見えてくる暮らし。
みんな上手く纏めていて読みやすい。
そしてたくさんの人の話を知ることができるのもこの本の醍醐味。
作家、写真家、詩人、音楽家、俳優、ライターなど。
なかでも印象深いのは、「サイトウには日常がないねぇ」の斎藤明美さんの話。
洗濯物が乾くかどうかなんてどうでもいい話のことだが、大女優である高峰秀子さんの日常を見て、日々のささやかな暮らしがいかに大切か、なぜ大切かを痛切に感じたということ。
これは、年齢を重ねるごとに感じることではないかなと思った。
「忘れないでおくこと」の中島京子さんは、コロナのことを書いてある。
確かにコロナ禍の数年、驚くほどに激変した町並み。マスクしていない人などいない日常。
コロナ禍を生きた自分たちは、忘れない出来事になるだろう。
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町田康氏、津村記久子氏、いとうせいこう氏などなど好きな人の名前がいっぱいある随筆集。くすりと笑っちゃうお話もあれば、ほろりやぐぐぐーっと涙腺にきそうなお話も。この短さで気持ちを動かせるのはさすがあらゆる方面で日々いろいろ感じながら活動なさっているからであろう。この随筆集のテーマは忘れられないことでもなく、忘れてはいけないことでもなく、忘れないでおくこと、であることも読みながら時に振り返ったりする。
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ひとつひとつがとても短いので隙間時間にほっこりしたい時におすすめです
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知ってる方は期待を裏切らず、知らない方も新しい発見があり、とってもお得な随筆集です。
なかでも、岸本佐知子さんや長嶋 有さん、期待を裏切らず、冴えてます! -
知ってる人の文章もあれば知らない人の文章もある。大好きなヤマザキマリさんのイタリアの食堂の店主と老人客とのやりとりについての文章はとても良くって、これだけでもこの本を読む価値がある。
他のも、何気ない文章だけど読みやすくて、読み出すとあっという間に読み終わった。
またいつか読むかもしれない。 -
七十三人分の随筆を読んでいると、当然のことながら既に読み親しんでいる人もいれば、名前は存じ上げているものの著作には手が伸びていなかった人もいる。この随筆集を読む切っ掛けとなったのは津村記久子や岸本佐知子が何を書いているのかが知りたいからであったりするのだけれど、読んだことのない人の中にも、今度はこの人の本も読んでみたいなと思わせてくれる人もいるし、ちょっと自分には荷が重いかもと感じてしまう人もいる。そんな出会いがこのような随筆集のいいところなのかも知れない。
第一集同様「あなたの暮らしを教えてください」という問い掛けに答えた随筆の中から「日々の気付き」に関するものを集めたという第二集。「忘れないでおくこと」とのタイトルの本の扉には『無心でからっぽな、この美しいもの』との言葉がある。その言葉の意味は読み終えても尚つかみかねるけれど「忘れないでおくこと」というタイトルにはピンとくる。
随筆は概ね年代順に並んでおり、2007年から始まって2021年のものまで。その間「忘れないでおく」と皆が思ったであろう二つのことがあったことは、静かに、だが確かに、随筆の並びの中に、そして特に2011年以降の随筆に、通底しているように読める。けれど一つ目の大きな出来事の記憶は、時が経つとともに少しずつ意識下の浅いところから深いところへ沈んでいく。その沈みゆく様が、別々の人の随筆でありながら見て取れるように思うのは不思議な気もするし、やはり人というのはミームのようなものに支配されている生き物なのだと再確認するだけのことなのかも知れないとも思う。そうして最初の大きな出来事が徐々に意識下の深いところへ沈んでいったと思ったら、その次にはより汎世界的な規模の出来事が起こり、そこからまた随筆の調子も少し変わる。巻末に置かれた中島京子の『忘れないでおくこと』で言及されているパオロ・ジョルダーノの言葉を引くまでもなく、心への大きな負荷は余りにも鮮明過ぎて忘れようがないと思えるが、岡崎京子が言ったように「ぼくたちは何だかすべて忘れてしまうね」な生き物なのだ。
「忘れないでおく」と思うことは、当たり前だけれど、過去のこと。それがついさっき起きたことだとしても、既に何十年も、ひょっとしたら自分が生まれる以前の歴史上の出来事だとしても、過去に属している。「属している」と整理した途端に気付くのだけれど、この言葉が示唆する行為は「コト」を「モノ」として見てしまう思考に繋がり易い。過去をモノ的に捉えて記憶に留めようとすれば、記憶の劣化に伴ってそれはいつか忘れ去られてしまう。けれど「忘れないでおこう」という思いはコトであり、その視線は未来に向いている。記憶を情報(モノ)として覚えておくのではなく思考(コト)として覚えておくには行為が必要だ。多分、お祭りや儀礼の決まり事や所作も、忘れないでおく「コト」の工夫なんだろうなと随筆集から思考がふらふらと漂っていく。随筆を寄せている人の多くが日々やっていることを書いているのもそんな無意識の心の働きなのかも知れない。何故そんなことをやっているのか理由も忘れてしまったようなことでも、それを繰り返す内に解ることもある。それはひょっとすると「蘇る」思いなのかも知れない。