独楽吟

著者 :
  • グラフ社
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本棚登録 : 37
レビュー : 8
  • Amazon.co.jp ・本 (118ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784766213096

感想・レビュー・書評

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  • 日常のささやかなことを生き生きと楽しんでいる著者。
    そんな歌に、そうだよねって一緒に笑える自分が好き。
    心が疲れた時に良い本です。

  • 巻き寿司を作ると祖母と母の懐かしい手料理を思い出す。


    そして三好達治の「乳母車」と山奥の祖母の家の風景を思い出して、立原道造の「のちのおもひに」を口ずさむ。

    今日は少し風邪気味なので気分転換に「楽しみは」の短歌を思い出して覗いてみた。
    そうだったそうだった、清貧の中ででささやかな楽しみを歌った「独楽吟」の52首
    今でも読むたびにその時々に合った、昨日と違う歌が見つかる。☆今日の気分にぴったりな歌(^^)



     たのしみは草のいほりの筵(むしろ)敷(しき)ひとりこゝろを靜めをるとき

    ☆たのしみはすびつのもとにうち倒れゆすり起(おこ)すも知らで寝し時

    ☆たのしみは珍しき書(ふみ)人にかり始め一ひらひろげたる時

    ☆たのしみは紙をひろげてとる筆の思ひの外に能くかけし時

    ☆たのしみは百日(ももか)ひねれど成らぬ歌のふとおもしろく出(いで)きぬる時

     たのしみは妻子(めこ)むつまじくうちつどひ頭(かしら)ならべて物をくふ時

     たのしみは物をかゝせて善き價惜(をし)みげもなく人のくれし時

     たのしみは空暖(あたた)かにうち(はれ)し春秋の日に出でありく時

    ☆たのしみは朝おきいでゝ昨日まで無(なか)りし花の咲ける見る時

     たのしみは心にうかぶはかなごと思ひつゞけて煙草(たばこ)すふとき

     たのしみは意(こころ)にかなふ山水のあたりしづかに見てありくとき

    ☆たのしみは尋常(よのつね)ならぬ書(ふみ)に畫(ゑ)にうちひろげつゝ見もてゆく時

     たのしみは常に見なれぬ鳥の來て軒遠からぬ樹に鳴(なき)しとき

     たのしみはあき米櫃に米いでき今一月はよしといふとき

    ☆たのしみは物識人(ものしりびと)に稀にあひて古(いに)しへ今を語りあふとき

     たのしみは門(かど)賣りありく魚買(かひ)て煮(に)る鐺(なべ)の香を鼻に嗅ぐ時

     たのしみはまれに魚煮て兒等(こら)皆がうましうましといひて食ふ時

    ☆たのしみはそゞろ讀(よみ)ゆく書(ふみ)の中に我とひとしき人をみし時

     たのしみは雪ふるよさり酒の糟あぶりて食(くひ)て火にあたる時

     たのしみは書よみ倦(うめ)るをりしもあれ聲知る人の門たゝく時

    ☆たのしみは世に解(とき)がたくする書の心をひとりさとり得し時

     たのしみは錢なくなりてわびをるに人の來(きた)りて錢くれし時

     たのしみは炭さしすてゝおきし火の紅(あか)くなりきて湯の煮(にゆ)る時

    ☆たのしみは心をおかぬ友どちと笑ひかたりて腹をよるとき

     たのしみは晝寝せしまに庭ぬらしふりたる雨をさめてしる時

     たのしみは晝寝目ざむる枕べにことことと湯の煮(にえ)てある時

     たのしみは湯わかしわかし埋火(うづみび)を中にさし置(おき)て人とかたる時

     たのしみはとぼしきまゝに人集め酒飲め物を食へといふ時

     たのしみは客人(まらうど)えたる折しもあれ瓢(ひさご)に酒のありあへる時

    ☆たのしみは家内(やうち)五人(いつたり)五たりが風だにひかでありあへる時

     たのしみは機(はた)おりたてゝ新しきころもを縫(ぬひ)て妻が着する時

     たのしみは三人の兒どもすくすくと大きくなれる姿みる時

    ☆たのしみは人も訪ひこず事もなく心をいれて書(ふみ)を見る時

     たのしみは明日物くるといふ占(うら)を咲くともし火の花にみる時

     たのしみはたのむをよびて門(かど)あけて物もて來つる使(つかひ)えし時

     たのしみは木芽(きのめ)煮(にや)して大きなる饅頭(まんぢゆう)を一つほゝばりしとき

    ☆たのしみはつねに好める燒豆腐うまく煮(に)たてゝ食(くは)せけるとき

     たのしみは小豆の飯の冷(ひえ)たるを茶漬(ちやづけ)てふ物になしてくふ時

    ☆たのしみはいやなる人の來たりしが長くもをらでかへりけるとき

     たのしみは田づらに行(ゆき)しわらは等が耒(すき)鍬(くは)とりて歸りくる時

     たのしみは衾(ふすま)かづきて物がたりいひをるうちに寝入(ねいり)たるとき

     たのしみはわらは墨するかたはらに筆の運びを思ひをる時

     たのしみは好き筆をえて先(まづ)水にひたしねぶりて試(こころみ)るとき

    ☆たのしみは庭にうゑたる春秋の花のさかりにあへる時々

     たのしみはほしかりし物錢ぶくろうちかたぶけてかひえたるとき

     たのしみは神の御國の民として神の(をしへ)をふかくおもふとき

     たのしみは戎夷(えみし)よろこぶ世の中に皇國(みくに)忘れぬ人を見るとき

     たのしみは鈴屋大人(すすのやうし)の後(のち)に生れその御諭(みさとし)をうくる思ふ時

    ☆たのしみは數ある書(ふみ)を辛くしてうつし竟(をへ)つゝとぢて見るとき

     たのしみは野寺山里日をくらしやどれといはれやどりけるとき

     たのしみは野山のさとに人遇(あひ)て我を見しりてあるじするとき

     たのしみはふと見てほしくおもふ物辛くはかりて手にいれしとき

  • たのしみは〜からの短歌

    橘曙覧
    https://ja.m.wikipedia.org/wiki/橘曙覧

    独楽吟は春明草の中に含まれる166首の中の連作の52首で
    いずれも「楽しみは〜」とうたいだし、末句を「時」で結ぶ

    たのしみは 艸のいほりの 筵敷き
    ひとりこころを 静めをるとき

    たのしみは 珍しき書(ふみ) 人にかり
    始め一ひら ひろげたる時

    たのひみは 紙をひろげて とる筆よ
    思ひの外に 能くかけし時

    たのしみは 百日ひねれど 成らぬ歌の
    ふとおもしろく 出てわきぬる時

  • 『たのしみ』はから始まり、『〜とき』で終わる歌集。江戸時代に生きた橘曙覧の短歌を、岡本信弘さんが、やさしく解説。
    天皇皇后両陛下が、米国を訪問なさった際、歓迎レセプションでクリントン元大統領が、スピーチに曙覧の歌を引用とあり、心憎い演出だと感じ入った。その時の歌が『たのしみは朝おきいでて昨日まで無かりし花な咲ける見る時』。
    今秋の大統領選、奥さまの勝利を祈る。
    また、小学6年生が思い思いに自分の好きな歌を選び、その理由を発表するという国語の授業を見せてもらった。3人兄弟の子は、『たのしみは三人の児どもすくすくと大きくなれる姿見る時』であった。長男である彼の優しさを感じた。
    どの年代の人にも、自分の心に重なる楽しみ、喜びの瞬間を見つける事が出来る歌集である。そして、自分でも歌を詠みたくなってくる。

  • 楽しみは、から始まる日常の中の何気無い一コマから感じる喜び、幸せを綴った詩。もっと、もっとを求める現代社会に対し、物が人を幸せにするのではなく、幸せを見つける心が大切ということを教えてくれる。薄いので本棚においておき、疲れた時に読むと元気が出ること間違いない。
    以下、個人的なメモ。
    ・たのしみは すびつのもとに うち倒れ ゆすり起こすも 知らで寝し時
    ・たのしみは 空暖かに うち晴れし 春秋の日に 出でありく時
    ・たのしみは 常に見慣れぬ 鳥の来て 軒遠からぬ 樹に鳴きし時
    ・たのしみは 昼寝せしまに 庭ぬらし ふりたる雨を さめてしる時
    ・たのしみは 明日物くると いう占を 咲くともし火の 花にみる時

  • 人から与えられる様々ではなく
    自分の尺度で生きた橘曙覧という
    生き方に潔さを感じる

  • 清貧と赤貧。 理想と現実的内容・・?(仮)

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