ブロードバンド市場の経済分析

  • 慶應義塾大学出版会
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  • Amazon.co.jp ・本 (220ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784766414837

作品紹介・あらすじ

データに基づく計量分析が明らかにするIT情報通信市場の特性と成果。新たに創出された市場の競争政策の在り方について、特に今後の光ファイバーの普及に向けての示唆を提供する。

感想・レビュー・書評

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  • 中央図書館で読む。最近、図書館は混んでいます。公立の図書館は、受験生の学習ルームは混んでいるが、一般フロアーは混んでいませんでした。席も満席でした。もちろん、冷房の問題もあるでしょう。僕の住んでいる町の図書館は、冷房が効いています。冷房の無い図書館もあります。冷房はあるが、ほとんど効いていない図書館もあります。省エネ、健康、そして、冷え性の女性のことを考えれば、問題があると思います。ただし、僕は、この温度が心地いいです。光ファイバーに関する論文を読みました。非常に読みやすい本でした。経済学者の論文は、必ずしも読みやすいものばかりではありません。しかし、この論文は、非常に読みやすい論文でした。光ファイバーの問題点は、その施設を持つ業者の設備を開放させるかどうかです。また、その施設の利用料をいかに設定すべきかという点です。光ファイバーを保有する業者は、必ずしも、その普及に積極的とは限りません。また、普及には、積極的でも、政府が望むスピードを満たすとは限りません。そこで、施設を他の業者に貸し出すことを認めれば、普及にはずみがつく場合があります。この主張は、一見正しいような気がします。この論文では、この政策の問題点を指摘しています。確かに、既存の光ファイバーは有効利用されることになるでしょう。ただし、多くの業者は、光ファイバーへの投資をためらうようになるからです。何故ならば、光ファイバーに投資しても、開放義務が存在するので、その利益を独占できなくなります。また、光ファイバーに投資しなくとも、開放義務があるので、他の業者が投資したものを利用すればいいのです。それでも、設備を持つ業者に開放義務を課さないのは、弊害があります。そのため、多くの国では、二つの問題のバランスをとりながら、適切な規制を探っています。開放義務を課さない国はありません。と同時に、利用料を極端に下げないことにも努力しています。例外は、韓国です。韓国は、世界一の光ファイバーの普及率です。と同時に、光ファイバーの施設の開放義務を課していません。この論文では、あくまでも、韓国の特殊事情に由来すると指摘しています。

  • ブロードバンドサービスに関する計量的な分析を主に行なっている本です。この主の本では、依田高典さんの『ブロードバンド・エコノミクス』がありますが、合わせて読むとより理解が進むか、より混迷するかのどちらかでしょう。数式もそれなりに出てきて、きちんと理解しようとするとやはり難しいです。

    その中で、あまり計算式の出てこない、2章のアンバンドルに関する議論は、興味深いです。今後の重要な論点ですね。

    ブロードバンドサービスのモード間の競争(FTTH、ADSL、CATV)についてはかなり紙幅を割いて、スイッチングコストやロックイン効果などを分析していますが、統計分析がうまくできていない感があります。
    またVOIPに関する議論については、状況認識について疑問が付く点もあったりするのですが、ADSL普及期の解説は思い出すところもあり、面白いです。

    完全な理解は難しいながらも、この業界に関わっているなら読んでおいてもよいかなと思われます。2007年末くらいまでの状況で書かれていますが、FTTH回りはここからまだ変化があるでしょうね。

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著者プロフィール

田中 辰雄(たなか たつお) 1957年、東京都に生まれる。東京大学大学院経済学研究科単位取得退学。国際大学グローバルコミュニケーションセンター研究員、コロンビア大学客員研究員を経て、現在、慶應義塾大学経済学部教授。専攻は計量経済学。主要著作:『ゲーム産業の経済分析』(共編著、東洋経済新報社、2003年)、『モジュール化の終焉』(NTT 出版、2007年)、『著作権保護期間』(共編著、勁草書房、2008年)、『ソーシャルゲームのビジネスモデル』(共著、勁草書房、2015年)、『ネット炎上の研究』(共著、勁草書房、2016年)、『ネットは社会を分断しない』(共著、角川新書、2019年)ほか。

「2022年 『ネット分断への処方箋』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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