コミュニティのちから―“遠慮がちな”ソーシャル・キャピタルの発見

  • 慶應義塾大学出版会
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  • Amazon.co.jp ・本 (310ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784766417524

作品紹介・あらすじ

急速に高齢化が進む日本。健康は誰しもの関心事。全国さまざまな事例をよく見ると、健康でかつ医療費が低い地域の背景に、また、複雑な医療問題が見事に解決された背後に「コミュニティのちから」が存在する。そのちからをどう発揮させて「いいコミュニティ」をどう作るか。豊富な事例に基づいてそのレシピを示す。

感想・レビュー・書評

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  • 長野県の保健補導員コミュニティや鹿児島県鹿屋市の地域医療改革などの事例をもとに、地域医療をよくするには、「コミュニティのちから」(=ソーシャル・キャピタル)が必要であると主張している。本書の特色は、「コミュニティのちから」を育むにはどうすればよいかということについて実践的でかつ戦略的なアプローチを提案していることと、日本に独特に「〝遠慮がちな”ソーシャル・キャピタル」という考え方を発見したことであるとしている。
    本書で紹介されている長野県の保健補導員などの事例は本書で初めて知ったので、非常に素晴らしい取組であると感じるとともに、改めて地域医療を含めた地域の課題解決における「コミュニティのちから」(=ソーシャル・キャピタル)の重要性を感じた。「ルール」「ロール」「ツール」に着目した本書の「コミュニティのちから」を育む提案も、それなりに納得感のあるものだった。今後、少子高齢化が進み地方がどんどん疲弊していくことが想定される中で、各地域において「コミュニティのちから」をいかに育んでいくかが重要であり、その点で本書の内容は非常に有意義であると感じた。

  • これ、英語で出してほしいなあ。

  • ソーシャルキャピタルはずっと保健師が取り組んできたと聞いてきたけど、やっぱりそうだと再確認した。明日の活動の力になる一冊。

  • 主張をあまりしない日本人だが、西洋と違い”おつきあい”や”おたがいさま”で行われる地域活動。小さなことが繋がって大きな動きになるというソーシャル・キャピタルの現れ方。
    これを”遠慮がちな”ソーシャル・キャピタルと名付け、日本でそれに相当する活動が紹介されています。
    参考にしたいモデルがいっぱいです。地域のプライマリケアチームを作るためにもまずは活動ありきなんですが。

  • ソーシャルキャピタルの解説もありながら、「遠慮がちな・・・」という視点もあり、なかなか良かったです。
    図書館で借りたけど、買おうかな・・・

  • ―“遠慮がちな”ソーシャルキャピタルの発見―の副題が気になって購入。
    近年、あらゆる分野・領域でキーワードとなっているソーシャルキャピタルについて、健康・医療・福祉の分野から事例を紹介しつつ論じた一冊。


    長野県は、健康・長寿県として有名であるが、その理由は「保健補導員」の存在にある。
    最近でこそ、全国各地に「健康づくり推進員」なる組織が活動をしているが、はるか以前からその活動を継続していることは特筆すべきことだ。
    女性の五人に一人は「補導員」経験者ということも驚く。

    まだ戦時中であった、1945年4月に、須坂市(旧高甫村)で正式に活動を始めた。
    「家庭の健康管理者は主婦である。その家庭の主婦に、ある程度の医 学常識と健康を守る技術を身につけるよう、研修を系統的に与えていく。家庭のよき健康管理者になれば、この理想をそのまま小地域社会に発展させていく。これが補導員活動であり、やがては全家庭の主婦が補導員二カ年コースの修了者となる。その時こそ、須坂市は住民自ら築いた健康都市となる」

    主な活動としては、「草の根検診」「一部屋温室運動」「塩分濃度測定」の三つであり、当時健康課題となっていた脳卒中やその他成人病の予防を目的としたものであった。
    活動が具体的かつ、活動自体のハードルがそれほど高くなかったのも普及する要因になったのだろうと思う。

    長野県の長寿は、偶然の産物ではなくて、地域住民、行政、医療機関等が連携して、長い年月をかけて築きあげたコミュニティの力が勝ち取った成果であるということが言える。
    この事例は他の地域にも参考になるし、希望となる。


    さらに細かい話は本書に譲るとして、本書が強調するもうひとつのポイントが、“遠慮がちな”ソーシャルキャピタルである。
    自己主張の強い欧米を中心に論じられる「ソーシャルキャピタル」に対して、自ら手を挙げることはしないが、誘われれば引き受けるといった日本的「ソーシャルキャピタル」を発見したというのだ。
    それもアリじゃないかと。

    311以降、各所で“つながり”を求めている。
    “遠慮がち”な住民を巻き込むために重要な視点だと思う。


    リアルでも、ネット上においても、ウィークタイを可視化して、いかにアクションに結び付けていくかというところがポイントなのだろう。
    読んでる途中に、「一般意志2.0」を思いだした。

  • 今まで上手く言語化できなかった自分のモヤモヤが解消された本。記念すべき我々のブッククラブの題材1冊目。最後は、なんとなくこじつけられた感じもあり、少し微妙な感じも受けたけども…。

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著者プロフィール

東邦大学医学部 社会医学講座衛生学分野助教、慶應義塾大学大学院 政策・メディア研究科特任助教(非常勤)
2001年慶應義塾大学総合政策学部卒業後、出版社勤務。2008年に慶應義塾大学大学院政策・メディア研究科修士課程修了、2013年に同研究科の後期博士課程単位取得退学。現在、東邦大学医学部社会医学講座衛生学分野助教、慶應義塾大学大学院政策・メディア研究科特任助教(非常勤)。ソーシャル・キャピタルと健康を研究のキーワードとしている。これまで長野県の保健補導員活動の調査や、地域在住高齢者の社会疫学調査などに従事。著書に『コミュニティのちから』(共著)など。

「2014年 『サクセスフル・エイジング 』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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