ジャマーノ編集長 学術論文出版のすすめ

制作 : William Germano  原田 範行  松井 貴子 
  • 慶應義塾大学出版会
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本棚登録 : 21
レビュー : 3
  • Amazon.co.jp ・本 (261ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784766419399

作品紹介・あらすじ

30年ちかくにわたり学術出版に従事し、数々の名著を手がけてきた名編集者が、学術論文の出版を本気で考えるすべての人に向けて、学術出版の基本的な知識や具体的な手続きを分かりやすくユーモアを交えて解説。

感想・レビュー・書評

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  •  本書は、学術論文を出版する際の手引についてまとめられたもので、類書がない中で非常に重要な役割を果たしている。

     学術論文を出版すると言っても、通常は、学位論文の出版、学位論文ではないもののそれに類する重量感(枚数内容共に)を有する論文、もしくは論文集の刊行などが考えられるわけだが、これの違いやその準備に必要な心構えなどもフォローしており、興味深い。

     訳者も述べる様に日本と欧米の出版文化は若干違うので、そのまま使える部分と日本の状況に則して理解すべき部分があるのは言うまでもない事だが、他方で、一つの出版社に企画を持ち込みながらも同じ企画を平行して違う出版社に持ち込み、双方の見積を見た上で判断しようなどという「二人の女性にプロポーズ」するような事はしてはいけませんよ、という話は納得。

     塩○という売れない俳優がこういう事をしていましたが、男女の関係ではなく、学位論文の出版においても3社にくらいに見積依頼(出版伺い)を同時に出して怒られたとあっけらかんと述べる某女史がいたのを思い出し、はっとした。

  • 配架場所 : 一般図書
    請求記号 : 021@G100@1
    Book ID : 80100445659

  • 回送先:品川区役所大井町行政サービスコーナー(OM01)

    コロンビア大学出版局で人文科学分野の学術書の編集長を務めたウィリアム・ジャマーノ氏による学術出版書籍刊行までの書き手、編集者の心構えについてまとめた一冊。学術書がどのように書店に並ぶのかという質問への見取り図としても使える。随所にユーモアを効かせた内容で飽きをもたせず、しかし重要なポイントには念を押すように語り掛ける編集者魂ものぞかせる。本書でいわれているのは基本的には人文科学領域であるが少なくとも社会科学領域でも同じ傾向であると想像する。

    個人的に感心したのは「リーダー(Reader)」システムの存在だ。現在日本の学術論考においてこのようなシステムはシステマティックに存在するとは言いがたい。確かに学位請求論文などでは、査読制度は存在する。しかし多くの書き手にとって査読とはオフェンス/ディフェンス関係で認識されているもの、すなわち執筆者にとって「この研究を認めてくれるか否か」という承認欲求的な問題認識に転じてしまう危うさがあるのもまた事実である。ジャマーノはこのリーダー制度はそうした査読制度とは別個にありかつ、編集者にとっても一種の試練に等しいものであるとしている。つまり、学術出版を世に出すことの落とし前は単に執筆者のみに帰するのみならず、編集者、あるいは執筆者が属する研究領域全体が責任を有するという見方に立っていることに留意する必要がある、ということになるのである。

    また本書は、学術書にせよ、版元としてよい関係を持ちたい執筆者の姿を暗に仄めかしている(書き方の見本として出されている手紙や書簡の数々を見よ)。そして同時に学術研究の同人誌は、一般的にまったく相手にされないこと(つまり、文学フリマ的な価値観は学術出版と呼ぶことはできない)、電子書籍として出すには電子書籍自体の博打性との兼ね合いで見る必要があること、英語圏の人文学術書の版元の多くが大手版元の子会社になっていることにも注意する必要があることも指摘している。

    本書とハワード・ベッカーの『ベッカー先生の論文教室』は表裏の関係にある(版元もそれを見越して同時刊行としている)。そのことの意味は大きいのかもしれない。

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