パターン・ランゲージ:創造的な未来をつくるための言語 (リアリティ・プラス)
- 慶應義塾大学出版会 (2013年10月23日発売)
- Amazon.co.jp ・本 (432ページ)
- / ISBN・EAN: 9784766419870
作品紹介・あらすじ
応急処置的な社会から、創造的な社会へ
▼パターン・ランゲージは、建築家クリストファー・アレグザンダーが提唱した知識記述の方法である。アレグザンダーは、町や建物に繰り返し現れる関係性を「パターン」と呼び、それを「ランゲージ」(言語)として記述・共有する方法を考案した。彼が目指したのは、誰もがデザインのプロセスに参加できる方法だった。ある「状況」で生じる「問題」をどのように「解決」すればよいのかという「デザインの知」を記述したパターン・ランゲージは、創造的な未来をつくるための共通言語となる。
▼建築分野で考案され、ソフトウェア分野で大きく発展したパターン・ランゲージは、いま、あらゆる分野の創造を誘発する「クリエイティブ・メディア」として進化する。本書では気鋭の研究者・井庭崇が、中埜博、江渡浩一郎、中西泰人、竹中平蔵、羽生田栄一という各界のフロントランナーを迎え、「パターン・ランゲージ」の可能性について徹底討論。読者のリアリティに新たな知をプラスする!
▼「リアリティ・プラス」(Reality+)
「プラス」は何かを加えるという意味であるが、「リアリティ」には二重の意味を込めてある。第一に、読者がもっている物事の見方のレパートリーに、新しい要素――アカデミックな分野での最先端の知と方法――を加えることで、それまで抱いていたものとは異なる現実感(リアリティ)を得られるようになることを支援したい。第二に、本書で提示される知と方法を踏まえた仕組みや道具、制度、組織をつくることで、現実(リアリティ)を変える力をもつことを支援したい。このような思いが、「リアリティ・プラス」という名称に込められている。
感想・レビュー・書評
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パターン・ランゲージについて、ちょっと興味がでてきたので、とりあえず「入門」的に読んでみた。
「入門」といっても、対話集なので、どこまで体系的に理解できるのかな?という不安があったり、まず原典というか、最初に始めた人(この場合、アレグザンダー)の本からスタートしてから「解説書」に進むという「パターン」が好きというのもあった。
が、そういう懸念などは全く不要な素晴らしい本でした。
パターン・ランゲージを当初の建築の分野からスタートし、ソフトウェア開発への応用、さらにはコミュニケーションなどの人間の活動への展開など、わかりやすく、丁寧に説明が進んでいく。
それも、著者による一方的な秩序ではなく、対話のなかで生み出されていくというまさに「パターン・ランゲージ」を実践しながら、本が形成されていくプロセスになっている。
さらには、竹中平蔵さんがでてきて、彼の政治経験をインタビューしながら、それをライブでパターン・ランゲージに整理していくところとか、手に汗握る展開。
こういうプロセスが見えるとなんか自分にもできそうな気になってくる。
井庭さんは、学びとか、プロジェクト、プレゼン、対話などをパターンランゲージにしている本とか、ダウンロードできるものを作っていて、しばし、その辺を読んだり、使ったりしてみたいな。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
パターン・ランゲージは建築やソフトウェア構築において、ある状況で発生する問題の解決方法を抽象化したパターンの集まりである。有限個のパターンを繋げ関連させ、言語化することで無限の関係を記述することができる。
建築家のアレグザンダーが唱えたもので建築においては253のパターンがある。"窓のある場所"、"守りの屋根"、"活動の節点"などがあり、それぞれがある状況における問題の解決策になっている。
パターン・ランゲージ1.0は建築など有形のものを対象とし、2.0は無形のソフトウェアなどに適用する。そして、3.0は人間の世界を記述する。竹中平蔵との対談で政策をデザインするパターン・ランゲージを作る様子はわかりやすい。
しかし、例えば同じ要求に対する建築物を別々に同じパターン言語でデザインしても全く異なる結果になることがある。良いものと、悪いもの。
生き生きとさせるための"センター"が必要なのだそうだ。アレグザンダーの最新に著作である"ネイチャー・オブ・オーダー"にこのあたりのことが書かれているとのことであるが難解だ。
生き生きとさせるためには従来のアーキテクトという役割だけでは駄目で、設計だけでなく建造もできる"アーキテクト・ビルダー"というロールが重要になるのだそうである。 -
ネイチャー・オブ・オーダーの章は読んでてエキサイティングで、ちょっと触れられてたけど、禅とオートバイ修理技術におけるクオリティの探求プロセスを下敷きにして自分のなかで身体知化していくのを入口にしながらパタンの理解を深めていけたらなーと思った。クオリティをどう生成するか、そのなかでセンター(群)をどう捉えるか、それをどう見つけて何に基づいて評価していくか(センタリングプロセス)とか。複雑系とも親和性高いし。というかそのものなんだろうけど。
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パターン・ランゲージの概念がはじめはピンとこなかったが、各分野の方々との鼎談形式になっているので、いろんな視点からパターンランゲージというものをとらえることができた。
パターン・ランゲージは単なる方法論ではなくて、まず美意識や哲学が最初にあって 、その理想や、「名づけえぬ質」を再現するための手段がパターン・ランゲージなのだと理解した。アカデミックな話のなかに、所々パターン・ランゲージに対する熱い思いが語られており、その部分にも引き込まれた。
個人的には、最後のアレグザンダー氏から日本へのメッセージが心に響いた。この読み応えある本を自分なりにに理解したあとに読むと、このメッセージにパターン・ランゲージの哲学が凝縮されていると感じた。
また読み返したい。 -
数年前、SFC ORFで耳にしたパターン・ランゲージ、暗黙知の経験のパターンを言語化して伝える手法。当時は、まちづくりの経験を共有・伝達する手段として面白いと思ったが、未だに腑に落ちない自治体の内部統制と監査といった検証分野でのデザインの構築にも使えそうな気がして読み返し なう。
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地方自治の課題解決をどう言語化していけばいいのか悩んでいて読んで、なるほどと腹落ち。続きはこちら。https://note.com/wvfujii/n/n6d3889e62530
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パターンというものを捉え、考える上で示唆に富む内容となっている。討論も多岐に渡るだけでなく、深い内容で個人的には一読では理解が溢れる感じがする。繰り返し読み、身に染み込ませたい。
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建築から始まり、様々な分野へ応用され、またひろがりつつあるパターン・ランゲージの考え方を、様々な分野の専門家との対談から現在を明らかにする。「名付け得ぬ質」という言葉に、修士研究をしているときに出会いたかった。著者が竹中平蔵氏の教え子というのは意外。
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細胞の喩えはしっくりきたかな。
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アレクサンダーの名作がこのように発展しているのは驚きです。