カール・クラウスと危機のオーストリア

著者 :
  • 慶應義塾大学出版会株式会社
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  • Amazon.co.jp ・本 (288ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784766423310

作品紹介・あらすじ

▼オーストリア/ハプスブルク帝国の危機~ナチスの脅威に向き合い、それを乗り越えようとした孤高の言論人、カール・クラウス(1874-1936)の思想と行動を読み解くとともに、「世紀末」「第一次世界大戦」「ファシズム」という三つの時代における、オーストリア/ウィーンの政治思想・文化的状況を浮き彫りにする。
 
▼第一次大戦時には好戦的なメディアや政治家を、自らの個人評論雑誌『ファッケル』で厳しく批判したクラウス。彼は、戦争やナショナリズムにおいてメディアの果たす役割、戦争の背後にある経済的利害、総力戦であった第一次大戦の従来の戦争との質的差異を、鋭く指摘した。

▼一方で、解体した帝国からオーストリア共和国に再編成されたのち、彼はナチスから独立を守る擁護者としてのオーストリア・ファシズム=ドルフス政権への支持を表明する。彼の真意はどこにあったのか? これまで一見、政治的な解釈が難しいとされてきた彼に、本書はオーストリアの真の独立、「オーストリア理念」を追求する姿勢を見いだす。

▼建築家アドルフ・ロース、精神分析家フロイトや保守思想家ラマシュとの関係なども描かれ、オーストリアの世紀末から第二次大戦前夜までの文化的・思想的状況をも浮き彫りにする、注目の一冊。

感想・レビュー・書評

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  • オーストリアの言論人カール・クラウスの政治思想を論じる研究書。本書は、彼の活動に一貫した視座を読み取る研究である。中心となっているのは、クラウスがある種の保守主義者であったがゆえに、世紀末から戦間期にかけてのウィーンで啓蒙的・批判的言論活動を展開することができたという主張である。この主張が、世紀末の建築文化と精神分析に対するクラウスの批判的態度、第一次世界大戦時に保守的反戦思想にコミットするクラウスの態度、そしてナチスに対抗してオーストロ・ファシズムの中心ドルフスを支持した行動から、裏づけられてゆく。そして最後に、このようなクラウスの活動の意味を、エリック・フェーゲリンのクラウス論を下敷きにして、より一般的な視座から論じている。世紀末ウィーンは、フロイトやウィトゲンシュタインといった、現代文化を論じるうえで欠かせない人物たちを生み出した世界であるが、その中で言論人として輝きを放ったクラウスの思想を、通常イメージされる「文化」的な側面から政治思想的側面まで、幅広く、そして彼の『炬火』の記事を中心に内在的に論じた本書は、必ずしもこの時代について明るくないが政治思想に興味がある人にも、政治思想には明るくないがこの時代の文化に興味がある人にとっても、非常に興味深い内容であることは間違いない。

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著者プロフィール

1983年北海道生まれ。慶應義塾大学大学院法学研究科政治学専攻後期博士課程修了。博士(法学)。慶應義塾大学・専修大学・國學院大学栃木短期大学非常勤講師。
主要著作:「エリック・フェーゲリンのウィーン ―― オーストリア第一共和国とデモクラシーの危機」(『政治思想研究』第12号、2012年)、共訳書にリチャード・タック『戦争と平和の権利 ―― 政治思想と国際秩序:グロティウスからカントまで』(風行社、2015年)、ほか。

「2016年 『カール・クラウスと危機のオーストリア』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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