ブラックアース(上) ―― ホロコーストの歴史と警告

制作 : 池田 年穂 
  • 慶應義塾大学出版会
3.80
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本棚登録 : 94
レビュー : 5
  • Amazon.co.jp ・本 (308ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784766423501

作品紹介・あらすじ

ヒトラーの世界を目撃せよ

ヒトラーとは何者だったのか ――。
限られた資源、土地、食糧をめぐる生存競争の妄想にかられたヒトラーは、
ポーランド、そしてウクライナの肥沃な土壌(ブラックアース)を求めて侵攻し、
国家機構を完璧に破壊し始める。
ドイツの絶え間ない生存競争を、ユダヤ人の倫理観や法感覚が妨げると考えたヒトラーは、
やがて、人種に基づく世界、ユダヤ人のいない世界を構想し、
それを現実のものとすべく実行に移した ――。

前著『ブラッドランド』でホロコーストの歴史認識を根底から覆した気鋭の歴史家が、
ヒトラー「生存圏」(レーベンスラウム)の思想に鋭いメスを入れ、ホロコーストの真因を明らかにする傑作。

感想・レビュー・書評

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  • 『ブラッドランド』がとてもよかったのでこれも読んだ。『ブラッドランド』補完編といった印象。色んなレビューサイトで翻訳がダメということが書かれているが,確かに意味がとりづらい文章は多かった気がする。ただ訳者は同著者の『赤い大公』のほうも訳していて,そちらでは読みにくさをそんなに感じなかった。原文自体が読みづらいものなのか,『ブラッドランド』の人気にあやかるために急いで出版したのかはわからないが,いずれにしても歴史観の変更を迫るようなよい本なので,一般的なホロコーストの知識は前提として持っておかないとたぶん難しくて読めない。『ブラッドランド』を先に読んでおいて,それがとても気に入ったらこちらも読めばいいと思う。

  • 「アウシュビッツ」はナチによるユダヤ人虐殺の象徴であるが、あまりに有名になりすぎて、虐殺は収容所という非日常の中よりも、むしろ日常の中に多くあったという事実を遠ざける。

     原文をそのまま翻訳したのだろうか婉曲した言い回しが多く読解には労を要する。その中でどうにか読み取った最も重要そうな記述が冒頭の指摘である。
     ドイツ国内で殺されたユダヤ人は少ない、が、それは殺害場所がドイツ国外というだけであってドイツ内で捕らえられたユダヤ人は当然多い。
     またドイツ人のみがユダヤ人を虐殺したのではなく、ドイツの同盟国、例えばルーマニアも虐殺に参加したし、ソ連の犠牲になったユダヤ人もいた。

     資料や証言が膨大であり、またインパクトも絶大であったために様々な誤解や誇張がはびこるホロコーストについて、研究者の視点から丁寧に記述しなおす意欲作なのではあろうが、とにかく読みづらい。読解力不足で申し訳ない。

  • 我々は犠牲者を思い出すが、記念を理解と混同しがちだ。我々は記念された犠牲者だけでなく、忘れられた加害者とも世界を共有している。ヒトラーの時代にはなじみ深いものだったし、彼がそれに応えて見せた恐怖を蘇らせながら、世界は今も変わりつつある。ホロコーストの歴史は終わっていない。先例としてのホロコーストは永劫のものだし、それが与えた教訓はまだ学習されたとはいえない。ヨーロッパのユダヤ人大量虐殺の啓発的な説明は、地球規模で解釈されるべきである。というのも、ヒトラーの考え方はユダヤ人を自然の受けた板でとして扱うので、生態学的だからだ。そうした歴史は否応なく国際的になる。というのもドイツ人らがユダヤ人を殺害したのはドイツ国内においてではなく、他の国々においてだったからだ。

  • 234.074||Sn||2

  • [あの悪とこれからと]「なぜホロコーストは起きたのか」という疑問と,そこから得られる警告は何かを徹底的に問うた作品。時が経つにつれ簡略化されていくホロコースト像にメスを入れた力作です。著者は,ハンナ・アーレント賞を受賞したイェール大学教授のティモシー・スナイダー。訳者は,著者の作品を他にも翻訳している池田年穂。原題は,『Black Earth: The Holocaust as History and Warning』。


    現段階での今年ナンバー1。「国家の喪失」と「市民権」を軸としながら,ホロコーストがどのように起きたかを鋭利に描いていく著者の筆は本当に凄まじいものがあります。特に下巻の分析には圧倒されるものがあるのですが,数あるホロコースト本の中での新たな古典と言い切ることができるのではないでしょうか。

    〜我々は,ヒトラーと同じ惑星に住んでいるし,彼の関心事のいくつかを共有している。我々は自分で考えているほどには変わっていない。我々は自分たちの生存圏を好んでいるし,政府を破壊することを夢想しているし,科学を誹謗するし,大災厄を夢想する。仮に我々が,自分たちは何らかのグローバルな陰謀の犠牲者であると考えるなら,我々はまっすぐではないにせよヒトラーの方へとじりじりと進んでいるのだ。仮に我々が,ホロコーストは,ユダヤ人,ドイツ人,ポーランド人,リトアニア人,ウクライナ人等々どの民族でも良いが,彼らに固有の民族性の結果だと信じたなら,その時点で我々はヒトラーの世界の中を動き回ることになるのだ。〜

    この読後感は久しぶり☆5つ

    ※:本レビューは上下巻を通してのものになります。

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プロフィール

ティモシー・スナイダー
1969年オハイオ州生まれ。イェール大学歴史学部リチャード・レヴィン講座教授。オクスフォード大学でPh.D.を取得。専攻は中東欧史、ホロコースト史、近代ナショナリズム研究。邦訳されている著書として『赤い大公――ハプスブルク家と東欧の20世紀』『ブラックアース――ホロコーストの歴史と教訓』(共に慶應義塾大学出版会、2014年、2016年)、『ブラッドランド――ヒトラーとスターリン 大虐殺の真実』(2015年)、インタビュアーを務めたトニー・ジャットの遺著『20世紀を考える』(2015年)がある。11のヨーロッパ系言語(とりわけスラヴ系言語)を駆使することで、ホロコースト研究に新しい地平を拓いた。ハンナ・アーレント賞をはじめ多彩な受賞歴を誇る。有力紙誌への寄稿も数多い。

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