ブラックアース(下)―― ホロコーストの歴史と警告

制作 : 池田 年穂 
  • 慶應義塾大学出版会
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本棚登録 : 67
レビュー : 3
  • Amazon.co.jp ・本 (308ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784766423518

作品紹介・あらすじ

▼ホロコーストの胎動を聴け

ホロコーストはなぜ起きたのか ――。
ホロコーストはドイツだけで起きたのか?
実はホロコーストは、その多くが戦前のドイツの国境線の外で起きたことだった。
ホロコーストは強制収容所のみで起きたのか? 
ユダヤ人は、現実には死の穴の縁で殺害されたのが半数にのぼり、
収容所ではなく、特別なガス殺の設備で殺害された。
加害者はすべてナチスだったのか?
殺害に携わったドイツ人の多くはナチスではなかったし、
そもそも殺害した者のほぼ半分はドイツ人でさえなかった ――。

ヒトラーとスターリンの狭間で、完膚なきまでに国家機構が破壊され、
無法地帯に陥ったその地で、一体何が起こったのか。
極限状況における悪(イーブル)を問い直し、未来の大虐殺に警鐘を鳴らす世界的ベストセラー。

感想・レビュー・書評

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  • 上巻と同じく,前著『ブラッドランド』の補足的な位置づけであるように感じた。未来と結びつけた最終章は読み応えあったが,前著に比べより抽象度が高く,筆者のメッセージ性が押し出されていて,スケッチのような印象が強かった。個人的には章立ての仕方に読みづらさの原因があるのかもしれないと思った。(もっとも,『赤い大公』では見事に整理された美しい章立てがなされているから,簡単には展開がつかめない章立てにも意味があるのかもしれない)

    (追記)
    『ブラックアース』の理解のためにもう一度『ブラッドランド』を読みましたが,両者を比較すると,『ブラッドランド』が毒ソ間の流血地帯を国民国家の枠にとらわれず描きつつもやはり軸がベルリンとモスクワに置かれているのに対し,『ブラックアース』はヒトラー個人の視点(ユダヤ=ボルシェヴィズム)・ポーランドの視点(中立政策や独自のシオニズム支援)・オーストリア(アンシュルス)・ルーマニア(独自のユダヤ人弾圧)など中東欧諸国の視点・バルト三国の視点・フランスなど西欧諸国の視点といった風にホロコーストを軸にしながらどんどん広く舞台が移り変わっていく印象がある。これが『ブラックアース』の読みづらさの原因かなと思う。また,ホロコーストを描くための本なので,ソ連の政策については言及が少なく,時系列的な理解をするのにも『ブラックアース』は向いていない。でもそれはこの本が悪いということではなくて,難しいけれど『ブラッドランド』にはない魅力があり,もう一冊が書かれる必要はあったということです。ふたつの本で重複する部分はあっても別の結論がちゃんと引き出されています。

  • 実際にヒトラーにとっては、人類の歴史などそのものとしては存在しなかった。「世界の歴史で起きたことなど、良かれ悪しかれ、どれもこれも人種の自己保存本能の表れにすぎない」とヒトラーは喝破した。過去のことで記録にとどめておかねばならぬことは、自然の構造を歪ませるユダヤ人どもの絶え間ない試みだけだ。これはユダヤ人が地球上に住んでいる限り続くことになろう。「この秩序をつねに破壊するのはユダヤ人どもだ」とヒトラーは口にしていた。強者は弱者を飢えさせるべきだが、ユダヤ人は弱者が強者を受け支えるように事を運ぶことができた。これは通常の感覚では不正ではないが、「存在の論理」を侵害していたのだ。ユダヤ的思想によって歪まされた宇宙においては、闘争は思いもよらぬ結果を招来することがありえた。適者生存どころか適者の飢えである。この論法ではドイツ人はユダヤ人が生存しているかぎり、常に犠牲者となろう。最優等人種としてドイツ人は最大のものを受けるに値するが、失うのもまた最大なのだ。ユダヤ人の自然に反する力は「将来を殺す」のだ。

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