世界と僕のあいだに

制作 : 池田 年穂 
  • 慶應義塾大学出版会
4.20
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本棚登録 : 82
レビュー : 6
  • Amazon.co.jp ・本 (192ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784766423914

作品紹介・あらすじ

▼これがお前の国なんだよ。
「これがお前の世界なんだよ。これがお前の肉体なんだよ。
だからお前は、その状況のなかで
生きていく方法を見つけなければならない」
アメリカにあって黒人であるということ、
この国の歴史を、この肉体とこの運命を生き抜くことを説く、
父から息子への長い長い手紙。

2015年度全米図書賞受賞の大ベストセラー
解説=都甲幸治

感想・レビュー・書評

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  • アメリカの人種差別の歴史については自分なりに勉強したつもりだったけれど、歴史だけではなく現実からもまだまだ知るべきことはたくさんあるのだと愕然とした。歴史研究者ではなく当事者の言葉で語られる重みが、この本にはあった。
    「許す許さない」というのは虐げた側の論理で、虐げられた側からすれば「忘れない」に尽きるのだ。これは人種だけでなく宗教や国の間の争いにも当てはまるだろうし、日本人と韓国や中国の人々の間の埋まらない溝と言うのもそういうところから来ているのではないかと考えさせられた。

  • もう一度映画「ムーンライト」を見たいと思う。

  •  トランプ大統領の支持層とされる「ラストベルト」(錆ついた工業地帯)の白人労働者が注目を集め、アメリカの格差問題がシンプルに経済格差、つまりお金の問題としてクロースアップされたことにより、一瞬、ほんの一瞬忘れかけた「人種」の問題をあらためて思い出させてくれたものとして、映画「ムーンライト」(アカデミー作品賞受賞)とともに、本書を挙げたい。
     著者は、現在アメリカで黒人問題のオピニオン・リーダーと目されるジャーナリスト。本書で全米図書賞、ピューリッツァー賞、全米批評家協会賞にノミネートされ、実際に全米図書賞(ノンフィクション部門)を受賞した。
     翻訳は順序が逆になったが、本国アメリカでは2008年にデビュー作『美しき闘争』が発売され、2015年に本書が発売されている。前者は著者と父親の関係を描き、後者は著者から息子への手紙形式で書かれている。著者を挟んで3代の黒人男性が背負った運命について、ときにコミカルに、ときにエモーショナルに語るこの連作は、オバマ政権下においてもなお厳しい黒人社会の現実を読者にあらためて印象付ける。
     無論、アメリカ社会に特に詳しくない日本人であっても、映画や小説や報道を通じて、アメリカの人種差別、黒人が現代でもなお不当に劣位な環境に置かれている現実について、知らないわけではない。ただ、黒人の「肉体」に刻まれた運命の深さについて、私たちはほんとうに想像し尽くせているだろうか。本書は、そのような問いを鋭く突き付ける。繰り返し登場する「肉体」という単語に、何度も揺さぶられる。
     「オバマの時代」が終わり、これからのアメリカについて思いを馳せるとき、聞き逃したくない声。知らぬままでなくてよかったと思わせる力に満ちたメッセージだ。

  • 黒人という人種も白人という人種も存在しない。自らを、白人、と信じるために創り出した装置にすぎない。
    在日コリアンや被差別部落出身者や性的マイノリティーや貧困は、街を歩いてるだけでは判別出来ないが、肌が黒いというのは歩いてるだけで判別され、時には射殺されるということ。その怖さは計り知れない。
    ムーンライトのレゲエ野郎が、なぜあないな子になってしまうんか、単純にアホでヤな奴と済まされない事情もあるんだなと痛感。

  • この本の感想を書くのはとても難しい
    要素が多すぎてまとめられない
    でも、いつかの自分のために書こうと思う
    それだけ大事なものがたくさん詰まっていた

    タナハシ・コーツの生まれた環境、彼らの人種の歴史を息子へあてた手紙として書かれた本

    黒人の肉体は自らの所有物ではなく、自由と平等を掲げてきたアメリカを支えてきた資源だった

    タナハシの目からみたアメリカの平等、自由は自らを白人だと思っている人間のドリームだと
    タナハシのいう白人とは肌の色だけではなく、略奪者で支配者のことを指す

    資源とされた黒人の肉体の上に積み重ねた現代の栄華
    欺瞞だらけのドリーマー達へ痛烈に語られる真実
    タナハシたちは自分の肉体に尊厳をもち神聖なものとして平等に扱うための権利のために今も苦しみ戦っている

    彼らの控えめな言動 行儀の良さ それは不当な暴力から身を守る術
    倫理や道徳などは教えてではなく、それは綺麗事でしかない残酷な現実

    タナハシの綴る言葉は明白で詩的で美しくそして静謐にとても悲しい
    尊厳を思考を肉体を搾取され国家政策規模という大きさで行われるそれに、抗いようもなく生きぬく術として捨て去った戦うという行動
    全てが悲しかった どうしようもなく
    悔しいという感情さえ奪われて

    タナハシは今も続く不公平な強奪に筆で戦っている

    黒人の現在をもって過去の人々の命の救済になってるなんて主張してはいけない
    これらの言葉はドリーマー達の詭弁欺瞞の全てを覆す力がある
    タナハシの筆の強さに偉大さに言葉にならない思いを抱いた

    80年代に復活した囚人労働は不公平で差別的な裁判制度を助長している
    私的な企業が健康保険、失業保険を支払う必要のない囚人労働を安価な労働力として使う
    監獄が民営化された現代のアメリカでは囚人の減少が企業収入の減少にもつながる
    だから若い黒人男性が集中的に警察に調べられ一度捕まると差別的裁判で白人よりも重い罪を課せられる
    すなわち黒人をターゲットにした新たな収容所群島に支えられている

    現代でも形を変えて肉体を搾取するシステムが国家規模で行われている
    これは私たち人類の問題
    私たちも真綿で締められるように資本主義の資本として労働を不当に搾取されていることに気付かなくてはいけない

    タナハシの言葉は美しい詩のように胸にしんしんと降り積もる
    人間としての何が大事かを教えてくれた一冊だった

  • 黄色い肌同士でも、差別は日常。むしろ、敢えて違う部分を見つけて比べたがっているように思える。テレビ番組にそういうの多い。

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