1995年以後~次世代建築家の語る建築

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  • Amazon.co.jp ・本 (396ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784767807805

感想・レビュー・書評

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  • 今になってようやく1995年以後を読む。
    藤村さんを中心とした世代の建築観や問題意識がよくわかる本。いくつかまとまった言葉で1995年以後の建築が提言されているものかなと期待していた分、様々な作家論の集まりであった本書は期待に沿うような内容では無かった。
    しかし、インタビューという形式であるため、著者の主観的な時代の捉え方だけに留まらず、様々な建築家の言葉から、1995年以後の時代の感覚を読み取る事が出来た点は良かったと思う。
    郊外化を共通の問題意識として半ば強引に藤村さんが提起していた点と、この世代にとってコールハースは圧倒的な存在であるといった点が本書を通して感じれた大きなところ。

  • 大学の先輩方の本と、大学の特任教授の本。
    共通するテーマ「郊外」という概念について、「1995以後」ではインタビュー形式、「東京から」では二人の対談形式とどちらも会話形式を取っているため、個人の生まれた場所、育った場所、生活してきた場所の心象風景のようなものから話が展開されている。
    そのためか、「郊外」というものが文章の中で定義されていない印象がある。
    ニュータウンやロードサイドといったキーワードや記号で郊外が表現されるが、個人の印象の範囲を抜けきらない。
    「都心」、特に「東京の都心」を定義しきらない限り、「郊外」を表現しきれないのではないだろうか。

    自分個人の留学を含めた経験として東京には中心も郊外も無いのではと感じる。
    どちらかというと、世界一安全なスラム、バラック都市という印象。
    そのカオス的状況が東京の特徴であるとも言えるが、東京は都市というより、都市生成の過渡期に生まれている一つの状態にすぎないと思う。
    都市の中心というものは権力と資本によって担保されていて、丸の内や六本木ヒルズに代表されるような、大きな土地を持ち、動かしうる人々による再開発によって、ようやく弱い中心ができつつあるのではないか。それが良い悪いかは別として。
    「1995以後」で提示されているような都心の郊外化といったものは、今まで顕在化していなかった東京の大都市のようなものを形成していた無数の衛星都市の境界がうっすらと見え始めているのではと思う。
    ジェネリックシティという表現があるが、楽観的に考えれば、東京の場合の地域的な個性というものは、ジェネリックシティ化の先にあるのではないだろうか。まずはスラムからジェネリックな都市になることが必要なのではないか。

    ヨーロッパ世界では特に日本の若手建築家の住宅が注目されている。
    向こうの建築家は結構な年齢になっても殆ど実作を持たない人が多い。都市計画のマスタープランをずっとやっていたり、コンペだったり。実作があってもインテリアだけだったり、ペントハウスだったり。
    なので多くの人が大学や教育機関に所属しているのかもしれないが。
    日本の建築家の住宅作品のクオリティを支えているのがそもそもの住宅量であり、郊外という考え方であると思う。建築家として一軒家を建てられる敷地というものは、どんなに都心に見えたとしても郊外なのだろう。それはライトがアトリエを構え、多くの作品をつくったシカゴのオークパークのようなもの。
    なんとなく今の日本の建築の状況(特に東京の住宅、雑居ビル、マンションなど)が、バラックを修理し続けているだけなのではないかという不安がある。

    そうはいっても「東京から」で北田暁大が言及していたのと同じように、自分も横浜帰属型なのだろうと思う。東京の大学まで30分以内という場所にずっといても、住所である横浜への帰属意識は高い。
    都市構造であるとか、それぞれの地域・場所ごとの歴史の認識がしやすいからなのではないかと思うが、横浜は東京の郊外ではなく、地方都市であるという言葉に非常に共感した。
    海外では横浜といってもあまり理解されないので、だいたい東京から来たということにしてしまうのだが。

  • 1995年というのは、阪神大震災に始まり、地下鉄サリン事件やウインドウズ95の発売、エヴァンゲリオンの放映開始など、日本現代史のターニングポイントといわれる年らしい。
    個人的には、「北の国から95秘密」で、蛍が不倫して宮沢りえがAV出演過去のある役を演じるという、ある意味、青春時代の偶像が崩壊した年でもあります。

    そんな1995年以降に活躍してきた、1971年以降生まれの若手建築家、研究者ら32組へのインタビュー集。

    情報の編集、整理の方法として「本」の新しい役割を見直すことができた点では非常に良い本です。

    これからの建築家像について、俯瞰的ではなく参照的に読んでいける本だと思うので、一回読んで終わりではなく、ここ2~3年ぐらいで何度か読み返してみようと思ってます。

    たぶん、そのときどきで共感する人も違えば、この本がやや強引に通している藤村氏の問題意識への意見も違ってくるのだと思います。

  • 時代の流れを知れた

    そして時代の渦の中に呑み込まれていく本

  • 以前から、こういったオムニバスな時代を彩る建築家の本はある。
    そして、そこに登場する人々は往々にして残っていく。
    雑誌からの注目度なのか、雑誌に出演したからこその本人達の気概の変化なのか。

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著者プロフィール

藤村龍至:建築家。東京藝術大学准教授。RFA主宰。アーバンデザインセンター大宮(UDCO)副センター長。主な建築作品に「すばる保育園」(2018)「鶴ヶ島中央交流センター」(2018)「OM TERRACE」(2017)など。主な著書に『批判的工学主義の建築』『プロトタイピング』がある。

「2018年 『BIOCITY ビオシティ 74号 エコロジカル・デモクラシーのデザイン』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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