あるノルウェーの大工の日記

制作 : 牧尾 晴喜  リセ・スコウ  中村 冬美 
  • エクスナレッジ (2017年9月29日発売)
3.82
  • (5)
  • (6)
  • (4)
  • (2)
  • (0)
  • 本棚登録 :93
  • レビュー :9
  • Amazon.co.jp ・本 (296ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784767823911

あるノルウェーの大工の日記の感想・レビュー・書評

並び替え:

表示形式:

表示件数:

  • ノルウェーの大工さんが、屋根裏のリフォームを請け負って、引き渡すまで。
    想像すらつかない土地で、身の回りによくある事が、やはり普通に行われているという、当たり前だけど、ちょっと不思議に思える、そんな感覚を抱く。
    少し世界が身近になった感じ。

  • 穏やかな方なんだろうなぁと思いながら読み進めた。大工仕事の細かなところはイメージできなかったけれど、ひとつひとつの仕事を丁寧に進めていることが伝わってきた。

  • -

  • ノルウェー大工の日常を描いた作品、著者のオーレ・トシュテンセン氏は現役の職人さん。大工の日記なんて面白いのかと半信半疑だったが、これが意外なほど面白い。

    トシュテンセン氏は個人経営の公務店を営んでおり、入札で得た仕事を下請けの仲間たちと共同で施工している。本作では彼がオスロ市内で実際に行った、共同住宅の屋根裏改築工事を通じて、作業の工程や仕事に対する想いなどを綴っている。

    個人経営という事もあり、施主に対する見積もり作成などの事務仕事や、材料搬入や職人のスケジュール管理など、基本的には一人で行わなければならない。大工の仕事というのは、自分の持っている能力や技術を最大限に発揮し顧客の期待に応えるという、まさに労働の原点ともいえる仕事なのだと感じた。

    一連の工事の様子を読んで、トシュテンセン氏の仕事に対する真摯な姿勢とスマートな考え方、そして顧客や仕事仲間への細やかな気配りにとても感銘を受けた。もし今後家を改築する機会があるならば、こんな職人さんへお願いしたいなと思う。

  • これはいいな
    なんか、派手な展開とか、ストーリーとか、大量虐殺とか、宇宙とか、そんな興味を引きまくるものではなく。
    当たり前の生活に、食事、交流に仲間、絆、思いやり、繋がり、仕事のこと、生活、そんな当たり前のことを知ることで、人は幸せになれるんだなと改めて思った。生きてるといいな、
    素朴なこと当たり前のことで、こんなにも、心を温かくしてくれるなんて、新たな発見をしました。
    その個人と繋がり、そんな生活の当たり前なこと、盲点であり、幸せってそんなことにあるんだな。大変だけどな

  • ノルウェーの大工である著者が、ある一家の屋根裏を改築し、子ども部屋とバスルームを作る仕事の入札から工事完成までを細かく記したエッセイ。
    施主から電話で大まかな工事の内容を告げられ、4社による入札をしたいと持ち掛けられる。見事落札し、冬から春にかけて工事をし、無事引き渡しになるまで。
    ノルウェーと日本では、システムや法律も違うと思うので、すべて同じく考えるわけにはいかないが、著者の職人っぽいこだわりや細かな配慮が気持ちいい。施主のヤンチャ盛りの息子二人に対する接し方も、ステキだ。

  • ノルウェーの大工さんが屋根裏を改築する話なんて、面白いんだろうかと疑いながら読み始めたが、ページを繰る手が止まらなかった。いや、時々、考えさせられる文章があり、そこではいろいろ考えた。
    現役の大工さんでありながら、すごい書き手だなぁと感心した。また、とても読みやすい日本語に訳してくださった翻訳者にも感謝したい気分だ。

    考えさせられた部分を引用したいのだが、ちょっと長過ぎる。


    "私は酔っ払いが丸のこを持つなど考えるだけでも耐えられないから、自分が引き受けた現場での飲酒は一切認めない。しかし、効率のためにある種の人々を完全に締め出すようなことを続けていけば、やがて社会は大きなツケを支払うことになるだろう。職場での飲酒は一例にすぎない。以前は許されたことが、今の社会では問題視される。合理化は人々の心に不寛容をもたらし、ルールや権力による圧迫を生む。その結果、皆が70%の能力では足りず100%の能力を発揮することを求められ、労働市場から多くの人がこぼれ落ちていく。個人の能力は千差万別なのだが、それがほとんど認められない社会へと変化してきている。" 58ページ


    "ものを作るということの基本的な部分は、私たちの日常生活から取り除かれつつある。一般の人々の目に触れる機会は徐々に減り、興味も薄れている。人々は汚れや騒音を受け入れないのだ。製造の現場に関わる職種に対する人々の態度は、この心理的な距離感からきている。
    職人の仕事を単純化しすぎた結果がもたらすものは、思ったより複雑である。生産現場も生産者も存在しないかのように作られたカタログは、私たちの生活の不毛なカリカチュアだ。汚い面はいらない、単純で、安い製品がほしい、と。
    ものづくりに対するこうした態度が生むのは、身体が汚れ、疲れきってしまう仕事に対する拒否感だ。生産労働はできるだけ避けることが好ましい。生産現場が管理可能な環境、つまり工場へと移されるのは当然の流れだろう。さらに次の段階では、この現実を物理的に目の前から消し去る。賃金が低く、耐え難いような環境で人々が働かされる地域へ仕事をアウトソーシングするのだ。これ以上清潔で効率的なことはない。" 76ページ


    "建築基準や技術規定といったものは、いつの時代も曖昧で、砂に引いた線のごとくいくらでも修正が利く。省エネルギー住宅の定義も同じだ。省エネルギー住宅を建てるというと複雑で格好いいもののように聞こえるが、実際には古い物件を改築する方が、よっぽど環境には負荷がかからない。だがリフォームではありきたりだし、汚いといったイメージがついて回る。省エネルギー住宅や最新テクノロジーの方が、現代的でもてはやされるのだ。
    (略)
    政治家にしてみれば、常にメンテナンスや改築を必要とする面倒な建築プロジェクトよりも、省エネルギー住宅についてもっともらしく語る方が信用を得やすいのだろう。複雑な状況を説明するよりも、シンプルな例をひとつ打ち出す方が、聞こえがいいのだ。
    こうしたさまざまな課題を解決するには、手工業や職人の仕事に対して、現在とは異なるアプローチが必要だ。顧客や消費者は言葉を慎重に選び、自分の選択に責任を持たなければならない。商品に個性を取り戻すのだ。地球の反対側で生産される商品からは、品質や個性に関する選択肢はますます減るだろう。生産段階で個性を消しておきながら、完成品で再び個性が加わるわけがないのだ。
    (略)
    職人の多様性も大事な要素だ。アイデアを形にできるということは、設計者やデザイナーにとって最大の強みであり、物づくりな原動力である。どれだけ多くの優秀なデザイナーがいても、それを実際に形にできる職人がいなければ、いったい何を売るのだ?デザインやアイデアを輸出するか、あるいはデザイナー自身を輸出するのだろうか?" 78ページ


    "もし生まれ変わるなら、偉人などではなく、自分の経験を持ったまま、何度でも職人として生まれ変わりたいと思う。"
    217ページ

  • いい職人のまわりには気のいい奴らが集まる。熟練した技術を持っていても決して気取らず、1ミリでも良質な仕事を目指す姿に引き寄せられるかのように。その美しさは施主の子どもの心を踊らせ、バーで居合わせた会社員を嫉妬させたりもする。そして納得のいく仕事が出来た時、彼らは口々にこう語る。「よし、ツイてたな!」って。職人ってすげぇな。

全9件中 1 - 9件を表示

この本を読んでいる人は、こんな本も本棚に登録しています。

有効な左矢印 無効な左矢印
ヴィクトール・E...
本屋図鑑編集部
大竹 昭子
植本一子
エラ・フランシス...
宮下 奈都
夏目漱石
カズオ イシグロ
西 加奈子
恩田 陸
有効な右矢印 無効な右矢印

あるノルウェーの大工の日記を本棚に登録しているひと

ツイートする