だれも知らないレオ・レオーニ

  • 玄光社
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感想 : 14
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  • Amazon.co.jp ・本 (221ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784768313480

作品紹介・あらすじ

『あおくんときいろちゃん』『スイミー』『フレデリック』などの作品でだれもが知っている絵本作家、レオ・レオーニ。意外にも絵本制作のはじまりは49歳と、早くはありません。彼の人生を紐解くと、さまざまな事実が浮かび上がります。ユダヤ系の父とオランダ人の母との間に生まれ、叔父たちのクレーやシャガールなどのアートコレクションに囲まれ育ったこと。大学で経済学を学ぶものの興味が持てず、映画やアート、グラフィックデザインなどのアーティストとして道を模索したこと。ファシズムの台頭により亡命を余儀なくされ、たどり着いたアメリカでビジネス雑誌『Fortune』やオリヴェッティのアメリカ支店、MoMAやユネスコと仕事をし、グラフィックデザイナー、アートディレクターとして大成したこと。アレクサンダー・カルダーや親友のベン・シャーンに影響を受け、絵画や彫刻に取り組んだこと。はじめての絵本『あおくんときいろちゃん』を出版以降、絵本の制作に真摯に取り組み、アートディレクター時代のレオに作品を持ち込んだことがきっかけで知り合ったエリック・カールにも後年絵本の制作を熱心に勧めたこと。また、戦争や人種や性別による差別に反対し、平和を訴え、政治的な活動に参加する一面もありました。本書には、それを裏付けるように近年の調査ではじめて発見された風刺画なども収録されています。彼が生涯模索した「アーティスト」の姿とは、一体どんなものだったのでしょうか。

感想・レビュー・書評

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  • 全国区ではないかもしれないが、小2の国語教科書に載っている「スイミー」。
    「フレデリック」や「アレクサンダとぜんまいねずみ」などは、読まれた方も多いかと。
    「あおくんときいろちゃん」は、読み聞かせの講座では必ずテキスト扱いになる名作だ。
    誰もが知る世界的な絵本作家さんだが・・・それだけではなかった。
    絵本を描きだしたのは49歳になってから。では、その前は?
    誰もが知るレオ・レオーニの、誰も知らない姿を追ったのがこの本。これが驚きの連続だ。

    ウディ・アレンに似た表紙のひとがレオ・レオーニ。
    1910年5月、アムステルダムのユダヤ系の家庭に生まれ、
    1999年10月にイタリアで亡くなるまでの芸術活動の足跡が、丹念に取材されている。
    芸術的な環境に恵まれながらも、専門的に学んだことはなかったという。
    様々なアートの技法を独学で、あるいは中世の徒弟制度のように「マイスター」本人の仕事の現場から習得した。

    ヨーロッパとアメリカを行き来しながらグラフィックデザイナーとして活躍。
    手がけた作品や広告などが数多く掲載されている。
    MOMA(ニューヨーク近代美術館)やユニセフの仕事、タイプライターのオリヴェッティ社、ビジネス誌「フォーチュン」のアートディレクション。
    素晴らしいのは、不採用になった作品も載せていること。
    これが80年前の作品とは到底思われない完成度だ。

    一度見ると形状を記憶し、手元に見本がなくても描けたという。
    本人の弁によれば「ものを見る方法を学んだから」らしい。
    他にも、評論家・編集者・イラストレーター・講師・言語学者・映画評論家等と、実に多彩な顔をもっていた。
    いわば「総合芸術」としての結晶が、絵本なのだ。

    「あおくんときいろちゃん」の誕生談がほのぼのとする。
    列車の中で騒ぎ出したふたりの子どもたちのために、とっさに思いついたという。
    以後一年に一冊ずつ発表し、生涯で37冊の絵本を出版している。

    どれも明確にメッセージを伝えるお話で、平和や友情、自分らしくあることの大切さなどを、真摯に子どもたちに届けようとする。
    「自分たちの作るものを通して、ひとつのモラルを明確に伝えるということはとても大切なこと」「独りよがりなテイストや知的な自己満足のみで、この責任から逃れるのはものをつくる者としての責任放棄だ」

    後年はパーキンソン病を患い、不自由な手となっても描き続けた。
    日常における私たちの心の持ちようがいかに大切か、レオの仕事は語り続ける。
    どんなに小さな行為でも、周りに良い影響を与えていくことが出来る。
    レオ・レオーニの作品は、もっともっと読まれていってほしい。
    芸術が人の心に与えるものの大きさに、あらためて感動させられた。
    著者であるおふたりの真摯な姿勢に感謝したい。

    • 猫丸(nyancomaru)さん
      nejidonさん
      また曖昧な記憶で申し訳ないのですが、光吉夏弥がレオニと言う読み方にケチをつけていた。
      それは兎も角、猫は「平行植物」が好...
      nejidonさん
      また曖昧な記憶で申し訳ないのですが、光吉夏弥がレオニと言う読み方にケチをつけていた。
      それは兎も角、猫は「平行植物」が好き、、、
      2021/02/11
    • nejidonさん
      猫丸さん♪
      名前の呼び方に厳しい意見を言う人っていますよね。
      教科書でも「レオ二」ですから(*^^*)
      あ、その平行植物も載っています...
      猫丸さん♪
      名前の呼び方に厳しい意見を言う人っていますよね。
      教科書でも「レオ二」ですから(*^^*)
      あ、その平行植物も載っています!!
      油彩と鉛筆とブロンズ彫刻のと。
      私ははじめて見たのでギョギョっとしました(笑)
      面白いモチーフですよね。ちょっと思いつきません。
      おうちの庭にもあって、写真が載っていました。
      2021/02/11
    • 猫丸(nyancomaru)さん
      nejidonさん
      あ〜早く読まなきゃ!
      nejidonさん
      あ〜早く読まなきゃ!
      2021/02/11
  • 『レオ・レオーニ 希望の絵本をつくる人』(松岡希代子著/2013年)の後、最新のレオ・レオーニ本が出ていると知り、早速入手!

    彼のキャリアを時系列に紹介したもので、企画展を彷彿とさせた。タイトルが示すように大半の作品が初見だったけど、アイデアの根源だったり見る価値は十二分にあるし、企画展を本当に開いちゃったとしても連日大入り間違いなしのはず。
    『希望の絵本』と重複する箇所もあったが、ファンにとっては親切におさらいしてくれているようなもので、まさにfan-friendlyな構成だと勝手に思っている。

    初期の画風は絵本の滑らかなタッチとは真逆のカクカクとした描き方で、生き物というよりもまるでオブジェだ。嫌いではないけど、(広告とは言え)生命力が損なわれている気がして同一人物によるものだとはどうしても信じられずにいる。心なしかグラフィックデザイナー時代の彼も作品を生み出す作家と言うよりビジネスマン然として見えた。(そこで得た手法が後の『あおくんときいろちゃん』で活かされるとは、本当に不思議な巡り合わせ。。)

    画家として活動を始めた時期(1940年代中頃)に描かれた作品群も無論「だれも知らない」だろうし、絵本のタッチとは似ても似つかない。寧ろキュビズムだったり部位のバランスがおかしかったりと、ピカソの展示室に迷い込んだみたいになった。

    絵本の出版以降はやっぱり自由になられたのかな。空間というものを上手く使いこなしている。(誰) オブジェ達も生き生きとしており、音楽も嗜んではった影響からか時には彼らが音に合わせて跳ねているようにも映る。

    「人類とは、もともとひとつのとてつもなく大きな家族であって、外国に行くということはようするに、いままで会ったことのない遠縁の者に会いに行くのと同じことなのである」
    『希望の絵本』の時に彼の言葉↑を書いたが、実はこれには続きがある。

    「そして別れの時には、置きみやげとして、ある仕草の影や、色の振動、声の余韻、同意の笑み、そして…筆の跡を残していくのだ」
    絵本やそれ以前のワークスには人種問題や反戦といった強いメッセージが含まれている。無論幼かった自分は気づきもしなかったけど、絵から溢れる優しさや幸福感には確かに触れていた。そして本書を読み終わり、改めて確認できた。大丈夫、レオ・レオーニ氏の置きみやげは失われていなかったと。

  • 絵本作家の評伝はいつも興味を惹かれる。それは多くは作品で歴史が語られるからであり、作品のスタイルの変化が、彼の人生と思考に深く関わっているからだ。
    この本も、作品を中心にまとめられており、私は目にすることがなかった、若い頃の多くの作品に出会って、改めて彼の才能に驚いた。

    「あおくんときいろちゃん」で絵本に衝撃を与えたレオ・レオーニは、その後パーキンソン病で手が不自由になってからも絵本の制作を続けた。それは亡くなる1994年まで、35年にわたった。

    「これまで培ってきた、イラストレーション、ストーリー、デザインなど、絵本を構成するすべての要素っで、彼は余すところなく自分の世界を表現することができました。」195p

    彼には、最もふさわしい芸術活動が、絵本であったと結んでいる。松岡希代子氏が細やかに作品を追って、レオーニの芸術の本質を突き止めた素晴らしい一冊。

  • レオ・レオーニ(レオ・レオニ)の名前は意識せず、幾つもの作品を目にしてきていたのですが、読ませてもらったことに、感謝いたします。また、数々の作品に出会えて幸せであります。そのうえで、この本を読んで、レオ・レオニさんは子どもを亡くされたこと以外では恵まれた人生だったように感じました。そういう立場のレオ・レオニさんだからこそ、表現できる役目を担うことになったのだと思いました。

  • だれも知らないレオ・レオーニ展|板橋区立美術館
    https://www.city.itabashi.tokyo.jp/artmuseum/4000016/4001385/4001386.html

    松岡 希代子 | 卒業生の活躍 | 女子美のキャリア・進路 | 女子美術大学付属高等学校・中学校
    http://www.joshibi.ac.jp/fuzoku/carrer/graduates/matsuoka_kiyoko/

  • 『スイミー』や『フレデリック』の著者、レオ・レオーニ。彼は、1910年にオランダ・アムステルダムでユダヤ系の家庭に生まれ、20代の頃にイタリアで仕事をしていましたが、ナチス台頭によりアメリカへ亡命します。アメリカで成功を治めた彼は、初めての絵本作りに取り組むことに。多くの作品を残していますが、『あいうえおのき』や『どうするティリー』には、反戦におけるメッセージが込められていることはご存じでしょうか。読んだことのある本も制作背景を知ることで新たな発見があるかもしれません。

  • パラ読み。

  • ユダヤ人のレオはオランダで生まれ、イタリア・アメリカを行き来する人生に、自分のアイデンティティを考えながらも世界との共通点を見つけ、ご自身の使命を全うされた実に多才な方。レオの知られざる魅力が満載の一冊です。(おーかせさん)

  • 絵柄が全く異なるものでビックリした!

  • 絵本だけでなくグラフィックの作品も素晴らしく、絵本作家だけには留まらないアーティストだとこの本を読んで驚きました。デザインの本も好きなので、絵本だけでなくデザインに興味がある方にはとてもおすすめの1冊です。

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著者プロフィール

森泉文美(Moriizumi Ayami)
1963年東京都生まれ。1974年までニューヨークに育つ。東京外国語大学イタリア語学科卒業。東京大学教養学部比較文化比較文学修士課程修了。1988年にイタリア政府給費留学生として渡伊。ボローニャ大学文哲学部歴史学科卒業。2002年から2009年ローマ大学東洋学部日本語日本文学学科非常勤。1989年よりイタリア・ボローニャ国際絵本原画展のコーディネーターを務める。ドキュメンタリー映像も制作。1997年の「レオ・レオーニ展」でレオーニ氏という知己を得、写真の腕を絶賛される。そのほか、日本のブルーノ・ムナーリ展、イエラ・マリ展などのコーディネート。2009年には日本未来派の詩と音楽のコンサートを企画、ローマ日本文化会館で開催。2017年イタリアの出版社エルセ『Memory Yōkai(妖怪メモリーカード)』編集。児童の語学教育や日本文化普及のワークショップを実施。

「2020年 『だれも知らないレオ・レオーニ』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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