亡国記

著者 :
  • 現代書館
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本棚登録 : 48
レビュー : 10
  • Amazon.co.jp ・本 (360ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784768457665

作品紹介・あらすじ

南海トラフ巨大地震発生!未曽有の原発大爆発!首都移転で国家機能停止!迫り来る放射能の脅威を逃れて、父と娘の命がけの旅が始まった。流浪する二人を待ち受ける世界の憎悪と救い。息もつかせぬ旅の終わりに、辿り着いた世界の果てで、二人を待ち受けていた"希望"とは?国家と国土が失われる究極の状況下で、日本人とは何かを問いかける近未来リアルノベル!

感想・レビュー・書評

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  • 斎藤美奈子さんが勧めていたので、いち早く図書館にリクエストした。まだ誰もこの本に気がついていなかったのか、まるで深田父娘のようにここ数年で1番早く手に取ることができた。

    斎藤さんは「最悪のシナリオ」だという。私は「最低最悪のシナリオ」だと思う。けれども、もっと最低なのは、私たちが生きているこの現代この段階が、著者が本を書いたその時よりも、さらに最悪の方向に向かっているということだ。

    本の中の設定はこうだ。岸辺首相(モデルはアベであることは明らか)になってから、秘密保護法、安保法制が次々と通り、原発も50基全て再稼働した。そして憲法が改正されて、何も言えない社会が出現しようとしていた。そんな時に、南海トラフ地震が発生する。静岡沖M8.6。浜松市の島岡原発(浜岡原発であることは明らか)は、三号機は圧力容器が壊れて即発臨海に、連鎖的に四、五号機もメルトダウン、今度は神風は吹かずに春風で関東を直撃、首相官邸はいち早く北海道へ逃げる。風はその後も関西にも吹き、事故発生から2日目までに日本人口の七割までが被曝する。

    深田父娘は妻の翠と共に反原発運動していて、危険性を熟知していたために、妻は浜松市にいて亡くなるが、京都から山陰を通って九州まで素早く逃げる。博多からソウル、大連、北京、リトアニアのヴィリニュス、ポーランドのギジツコ、ロンドン、カナダのトロント、そして最後はオーストラリアのケアンズへ。難民として落ち着くまで、一年間の旅が続く。

    深田父娘の素早さは教訓的ではあるが、一方では運が良かっただけの面もある。著者は主人公を難民の最先端に置くことで、日本の運命を俯瞰的に見る視点を持たせる。その狙いを分かった上で言うのだが、やはり主人公にあまり共感出来ない自分がいる。私は、おそらく渋滞に巻き込まれて被曝してしまう1人/7千万人だろうと思うからである。

    或いは、大国(アメリカ、中国、ロシア)に分割統治されてしまう日本人の1人だろうと思うからである。

    せっかく、反対運動はしてきた主人公たちに「大人の責任」を鋭く追求する青年を登場させたのだから、最後に主人公は父娘の安住で終わらすのではなく、「大人の決意」を見せて欲しかった、と思う。

    岸辺首相が終身刑を食らったあとに「これは東京裁判に劣らぬ一方的で不当な裁判であって、断じて承服することができない」と叫んだのは、あまりにも言いそうなことだったので、ホントにあることのように感じてしまった。哀しくなった。

    鬼怒川決壊の時に、またもや役人は「想定外」と言った。住民は「まさか」と言った。終わったあとにそう言うのは、もう止めにしたい。

    2015年9月15日読了

  • 2017.11 悪い方へ、悪い方へと描かれた小説で、読んでいて胸糞が悪くなった。まぁこの小説に書かれている下地は現存するので、起こりうる状況なんだが。原発反対、というコンセプトだけの本でした。

  • こんな事が起こりませんように。みんなの出方を見てから行動するのでアウトだわ。

  • 北海道のご両親はどうなったのだろう

  •  原発爆発の被害が、今後の展開は予断を許さないにしろ、今のところは現在の状況にとどまっているのは、爆発したのが東の外れに位置する福島原発だった、大気中に放出された放射性物質の大部分が偏西風によって海上へ運ばれた等、奇跡的な偶然が重なったおかげである。また、原発によって健康を大きく損なわれた者が当面、表に出ていなのは、被曝による健康被害が晩発性だからである。政府、御用学者、電力会社は、こうした事実を都合よく悪用して再び人々を洗脳し、己の利益のみのため、次々原発を再稼働させようとしている。それならば偶然の援護が望めない状況で、再び原発が爆発したらどうなるか、それを描いたのがこの小説である。
     京都に住む深田大輝は動物園の飼育係であり、原発廃止を訴える妻の翠との間に、小学1年生の娘、陽向(ひなた)がいる。東日本大震災から6年後、南海トラフ地震が発生、静岡県で島岡原発の立つ地盤が割れ、複数の原子炉が連鎖的に爆発する。100km圏内の人間は死滅、抗議活動でまさに島岡を訪れていた翠はもちろん即死する。原発の恐ろしさを理解していた大輝は、放射能から逃れるため、娘を連れて命がけで逃げる。物語はこの親子の逃避行を軸に展開する。放射能の拡散状況、国際状況、様々な国の思惑が複雑に絡む中、二人は、福岡~韓国~中国~リトアニア~ポーランド~ロンドン~カナダ~オーストラリアへと、生きる地を求めてさすらい、ときには「ジャップ!世界中に放射能をまき散らしながらいい気なもんだ!」と罵倒されながら、様々な経験をし、様々な人と出会う。
     一方、日本では、岸辺総理大臣(岸+安倍と思われる)は国体護持、政府機能存続を名目に札幌に逃れる。天皇はこれを拒否し東京に留まると主張、政府は天皇を見捨てる。しかし日本は国としての機能を維持できず、北海道はロシア、九州は中国の領土となり、汚染された本州、四国は米軍が接収し、日本は消滅する。また沖縄は、日本から独立する。公用語はロシア語や中国語となり、かつて言葉を奪われ、日本語を強制された沖縄のみが日本語の国になるのは、何とも皮肉である。
     とにかくリアルな小説である。耐用年数も活断層も巧みに無視する。理屈も仁義も正当性も、大半の人には経済性すらないのに、一部の関係者の目先の利益ため、原発維持という結論だけがある国、日本。この小説からは、この話がいずれノンフィクションにならないようにという、この国を大切に思う著者の切なる気持ちが伝わってくる。是非、多くの人に読んでほしいと思う。
     最後に、原発爆発に責任を負うものが国際法廷で裁かれ、終身刑を下されたときの岸辺元首相の狂った言葉を引用しておく。

     「これは東京裁判に劣らぬ一方的で不当な裁判であって、断じて承服することはできない。大日本国は未来永劫に不滅だ!わが大日本国、万歳!」

  • 荒野さん知人の介護の漫画家の女性たけしまさんのお薦め

    時間切れ

    原発事故で世界に避難で散らばる日本人たち 近未来というかありそうなお話し

  • 先日、あの福島原発がメルトダウンを起こし制御不能になりかかっていた時、実は当時の政権が”これ以上国民を守り切ることができない”という謝罪文の草案を作成していたことが判明しました。また、原発を制御できない日本政府に業を煮やしたアメリカがその主導を握るかもしれない事態も、もしかしたら、あったかもしれないのです。この小説は福島事故後も原発を止めない日本が、架空の島岡原発が地震で爆発、日本が壊滅し、人の住めない死の島と化し、北海道と九州がロシアと中国に、本土はアメリカが核のゴミを捨てる場所として占領するという、本当にあったかもしれない、今後もこのままでは起きてしまうかもしれない事故の、架空ではあるが、想像するに背筋が凍る話です。日本人は忘れ過ぎです。想像力を放棄しすぎです。あるかもしれないことを予測し、備えることを、非科学的、文学のたわごとのように片付けすぎではないでしょうか。予想や予測は科学の基本的態度ではなっかたでしょうか。最初からそれをせず、事がおきると想定外とはなんたる態度なのでしょうか。あれだけ大地が揺れている九州で、稼働中の原発を止めないのは狂気の沙汰であると、なぜ認めないのでしょうか。原発事故は一度起きると領土の喪失なのです。近隣諸国の脅威を声高に叫び過剰に自衛を叫ぶ、その準備の良さを、核発電を続け、自国の領土を消失させるかもしれない危険の方に振り向けるべきです。なぜそうしないのか、何に遠慮し、何を恐怖と思い、誰の利益だけを追っているのでしょうか。

  • リアリティ溢れる現代の日本沈没ですが、この悲劇で描かれている日本政府の対応はあまりに酷いなぁ(苦笑)。まるで喜劇。ありえない。

    日本の海外資産を担保に世界の援助を取り付け、日本軍を速やかに北と南に配置。アメリカと協力して対応に当たればいいだけの話。何も難しくない。

    九州と北海道で政治経済の再起を図り、その間、東南海地震によって引き起こされた火山噴火による大量の火山灰が放射能を清めてくれるのを待ちましょう。

    ところで、

    万景峰号で北朝鮮に渡った飯田彩智家族のその後が気になって気になって..

  • これは、近未来小説である。
    福島第一原発事故の事故原因の徹底的な究明、責任の所在の明確化、そして問題点の完全なレビューを行わないまま「多分大丈夫、わしら目先のお金が大事、次に事故が起こる頃はわしらは死んでるもんね」と、いち早く原発の再稼動を行う我が国に、近い将来に恐らく起きる、大災厄の預言書。

    それは、必ず高い確率で起きると、日本国政府ですら認め、多額の資金をつぎ込んで調査、準備している南海トラフでの地震発生から始まる。
    浜岡原発は、津波の到来を待たずに、地震によって一気に崩壊し、チェルノブイリを超える規模の大爆発を起こす。
    その上に、地震によって引き起こされた津波が襲いかかり、すべての希望は水泡と化す。

    福島第一原発事故では、たまたま多くの放射性物質が太平洋上に流れたが、浜岡原発事故では、折からの台風により関東から近畿を中心とする本州中央部に猛烈に降りかかる。
    多くの日本人は、自分がなぜ斃れるかも意識しないうちに、その未来を絶たれる。

    その、大災厄の中、生き延びた、父親と娘。
    母親は、すでに原発事故に巻き込まれ、行方は知れない。
    そのまま父娘は、国外への逃避行を続ける。
    祖国、日本を失った、父娘は、韓国、中国、そして欧州へ....

    政府が機能を停止し、国民を護る意志も能力もない日本は、近隣友好諸国によって救済の名のもとに割譲される。
    日本民族が、安心して生存できる国土は、もう世界中のどこを探しても、無い。
    当初は、国土を失った日本人に対する同情を持っていた人々も、福島原発事故を経験したにも関わらず、
    その災厄から学ばず、更なる原発事故を引き起こした日本人に対する憎しみを募らせていく。

    本書はファンタジーではない。
    すべての仮説は、少し考えれば想定できる範囲内。
    政府も、その危険を認識し、予算をつけ、調査研究していると言い続けている。
    その、危険の一部が、実際に起きた時に、日本は崩壊する。

    東日本大震災の後、伊勢湾フェリーで荷物を満載した東北ナンバーの小型車を見たことを覚えている。
    その時は、まだ、それは自分の姿だとは思っていなかった。
    しかし...

  • 151030図

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著者プロフィール

北海道大学文学部哲学科卒。出版社勤務を経て、韓国語翻訳を手掛けるかたわら小説を執筆。2015年に発表した『亡国記』が第3回城山三郎賞を受賞し、話題となる。

「2018年 『虚構の太陽』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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