- Amazon.co.jp ・本 (360ページ)
- / ISBN・EAN: 9784768458044
感想・レビュー・書評
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日本という国にとって「戦中派」はキカイダーの良心回路みたいなものだったんじゃないか…と、近頃、特にそう思います。戦争は嫌だ、と理屈じゃなく体験として語れる世代もどんどん召されていく年代に入っています。そう、今、日本は「戦争を知らない子供たち」100%の国に変わりつつあるのです。でも、憲法の問題も基地の問題も敗戦のあの日から地続きで何も変わらないまま。そんな時代に「帰ってきたウルトラマン」の上原正三が、まさに帰ってきました。故郷の過酷な戦争の記憶と戦後の理不尽を物語にして。その物語は時代を超えて世代を超えて渡され続けなければならないバトンなのだと思います。著者の実体験から生まれた物語だと思いますが、沖縄の怒りと哀しみを出来るだけ優しさと希望に変換しようとしている意志を感じます。断罪じゃなくて受け止める力、これ、帰ってきたウルトラマンの郷秀樹の悩みと繋がるような気がしました。フリムン軍曹の強さ、凄いです。広島に原爆資料館があるように、沖縄の永遠の記憶としてウチナーグチで書かれたこの本、もっとみんなに読まれますように、永久保存されますように。
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上原正三さんの子供の頃の話だけだった。タイトルからすりゃその朝通りなのだが、予想と違ったな。
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二十年ほど前に
チビチリ壕(ガマ)に寄せてもらった時
ウチナンチュの宮里さんから
「艦砲射撃というのは
むちゃですよ
絶対に反撃されない海の上から
もうめちゃくちゃに
爆弾を本土に打ち込む
のですから
家が吹き飛ばされ
木が吹き飛ばされ
土が吹き飛ばされ
あとに珊瑚の真っ白の地盤が
むき出しにされてしまった
だから
壕から顔を出したときに
梅雨の合間のティダァに
さらされた
空の青さ と
何もかも吹き飛ばされた
一面のまぶしい白っぽさは
一生わすれられません」
と語ってくださった時のことを
鮮明に思い出しました。
沖縄の暮らしと歴史を
抱えておられる
上原さんだからこそ
書ける一冊なのでしょう -
東京新聞の大波小波でこの本のことを知った。前半は冒険小説みたいに躍動感があるが、後半になると徐々に沖縄戦に向き合わざるを得ない少年たちの現実が描かれしんどくなる。それでも少しずつ成長していく彼らの様子に救われる気持ちになった。
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この本は 私が読んだ沖縄の本の中で
一番素敵なものになりました
戦後の話なので 勿論辛いのですが
ちょっと 遠くに感じていた
沖縄の戦後を追体験できました
そして上原正三 さんが
素晴らしいお仕事をされたのも
十分に理解できたと思います
なるほど 少年の心が
ここに生きていました -
日本が敗戦して、アメリカの時代が始まって・・・の沖縄。沖縄戦は直接描かれていないけれど、行間から伝わるものがあります。
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2018年02月11日に紹介されました!
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沖縄方言とか戦争とかなかなか入っていけなかった。 2017.11.9
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沖縄版『またやぶけの夕焼け』みたいな感じかと思って読んだが、予想以上に戦争に捲き込まれた沖縄の人々の苦しみが伝わる作品だった。
戦後間もない沖縄の少年たちが、米軍の物資を盗んだり、秘密基地を作ったりするのは面白いが、笑顔の裏にはみんなとてつもない苦しみを抱えている。
特にベーグァの、集団自決で生き残ったエピソードや、ひめゆり部隊の話は他の本で読んで知っていてもやっぱり辛い。
自らパンパンになった少女も、アメリカ兵に強姦され殺されてごみ捨て場に捨てられた女性にも人権なんてものはないのだ。
それでもサンシン弾いてカチャーシー踊って、辛さを乗り越えてきたんだな、沖縄の人々は。
戦後70年以上経った今も日本の国からもアメリカ軍からもちゃんと扱われてるようには思えない。沖縄の人々が普通に生きられる世の中にしないといけない。
悲しみの中にも爽やかな後味の残る小説だった。
でも、闘鶏は良くないよ。もうやってないことを祈る。闘犬も闘鶏も闘牛も動物虐待です。 -
スタンドバイミーのような悪ガキ四人組プラス様子のいいサンデー.お腹をすかせた彼らが食料を手に入れようとアレヤコレヤ悪知恵を働かせるところや秘密基地を作るところは面白かった.でもそれだけでなく,悲惨な敗戦の後,それぞれの事情を抱えながらたくましく生きる沖縄の人々.現在にもつながるアメリカ兵の横暴や敗戦時の悲劇をさらりと触れながら,人を殺してはいけないと強く訴えている.沖縄言葉はまるで分からないが,物語の中でとても効果的だと感じた.