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本 ・本 (240ページ) / ISBN・EAN: 9784768459669
作品紹介・あらすじ
自立にだまされるな。
支援をするなら、カネをくれ。
両親がいなくなったらどうするって?
安心してください。ひとはだれにでも寄生できる。
ひきこもり大反乱!
すいせん=栗原 康(アナキズム研究)
著者の勝山さんは1971年生まれ。高校3年生の時に不登校になり、以降、「ひきこもり」となりました。現在に至るまでの壮絶な人生は本書を読んでいただくとして、いわゆる「8050(はちまるごーまる)問題」世代のど真ん中です。勝山さんはここ数年の間に、母親(ママン)、そして父親(ダディー)を喪いました。「親亡き後のひきこもり」を生きています。
これまでも『安心ひきこもりライフ』(太田出版)などでひきこもりの生きる道を模索してきた勝山さんですが、今回のテーマはずばり、「自立」です。
2023年の内閣府調査によると、全国のひきこもりと呼ばれる人たちは140万人を超えています。これまで相当の「自立支援」を行ってきながらも、ひきこもりがなくならない、いやむしろ増加しています。そもそも140万人以上の不登校やひきこもり状態にある人たちを自立させるなんて、可能性を考えても目指すべきことなのでしょうか?
自立支援のほとんどは就労支援。でも、不登校にもひきこもりにならずに社会に出た人たちと同じスタート地点に立てるわけでも、同じ眼差しで迎えられるわけでもありません。そして結局のところ「働きたいけど働けない」と口にするようになる、そう勝山さんは書きます。
勝山さんはひきこもりを、「学校にも行かない、アルバイトもしない、ただ無条件で生きる権利が保障された世界を求める人間ストライキ」といいます。
「自立支援」ではなく「支援」が必要。「自立支援」は、ひきこもり支援ではなく自立支援団体の支援になっている。これはひきこもりだけでなく、障害者への支援とも響き合うことです。
感想・レビュー・書評
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当事者からの視点での話。
制度を調べたり、知識を身につけたりしていて、たくましさを感じました。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
自称ひきこもり名人による三冊目の本。ユーモアのある勝山節は健在で、所々笑いながら読んだ。しかしこれまでの著書より思想が強く出ていると感じた。
書いてあるのは、「自立」についての考察、ひきこもりのポスト8050問題、ひきこもりエッセイ、現状のひきこもり支援の非難、といったところだろうか。いろんなところで書いた文章をまとめた本らしく、一冊の本としては統一感に欠けるところがある。
それでも本のタイトル通り、この本の中心となるテーマは「自立からの卒業」になるだろう。近頃は「自立」というと「自立とは依存先の分散である」なんてことが言われがちだが、この本にそんなことは書いてない。むしろ主張しているのはシンプルに「寄生せよ」だ。「寄生せよ」は「依存せよ」に置き換え可能かもしれないが、「分散させろ」みたいなことは一切書いていない。そこに潔さを感じた。ひきこもり支援の問題点を指摘した部分や、直接給付を主張した部分も、自立ではなく寄生だ!という主張と繋がっているように思う。
ここで主張している「寄生せよ」は狩猟採集民や原始共産社会の有り方に近い気がする。それらの社会では富を蓄えたり独占することは許されず、持たざる者に分配させる社会圧力がある。東南アジアやインドには、まだそのような部分が少し残っているらしいが、今の日本社会では受け入れにくいと思う。しかし、自分も含めて自立に依存し過ぎではないか?という疑いを持つ必要はありそうだ。
持つ者から持たざる者へ分配させる原動力の一要素として「後ろめたさ」があると思う。それは、足がない、手がない、目が見えない、といったわかりやすい欠損を認識した時に発生しやすい。人間は視覚に頼っている部分が大きく、これらの欠損を視覚的に認識している。その点、「ひきこもり」は定義があいまいな上、視覚的に認識しにくい。それゆえ、持つ者が「後ろめたさ」を持ちにくく、分配も起こりにくいのかもしれない。
ただ、寄生するのも楽じゃない。著者は両親と険悪な状態のまま長年同居していたようだが、そのストレスは相当なものだろう。最悪の場合、警察沙汰の事案が発生してもおかしくない。そのストレスと「自立」するストレスだったら、「自立」するストレスの方がマシな気がする。
ポスト8050を描いた、親を看取った後の「親」という人間に対する見方が変わった話も印象的だった。ネガティブともポジティブとも言えない、言葉にしにくい感傷のようなものを感じた。この10年ほど、自分は親とコミュニケーションが断絶していた。しかしそろそろ、親と向き合わざるを得なくなっている。先は長くないだろう。親が亡くなった後、自分は何を思うのだろう。 -
文章が面白すぎる。本当に長い間文学に親しんで、それを自分の中でゆっくり熟成させたんだなという印象。いつまでも自立させようとする支援勢力に抗ってほしい!
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本の雑誌・年末ランキングから。お上得意のやってます感の押しつけはもういいから、本当に必要なもの、端的に言えば金銭的支援をっていう、ある意味、至極真っ当としか言いようのない主張。上っ面だけのパフォーマンスばかりがもてはやされる世界で、本書の叫びが、少しでも多方面に届きますように。