- Amazon.co.jp ・本 (302ページ)
- / ISBN・EAN: 9784768479322
作品紹介・あらすじ
「国家」と「わたし」の関係はどうあるべきか。過去のシティズンシップ(「市民権」)論、主にリベラリズムの議論を批判的に再検討しながら、「平等で自由な人格」がよりよく尊重されるための新たな理念を構想する。いかなる者の視点をも排除しない可能性を秘めたフェミニズム・シティズンシップ論につづき、誰かに依存せざるを得ない存在であるわたしたちにとって不可欠の「ケア関係」に着目した章を増補。本書は、「シティズンシップ」論入門として最適であると同時に、社会科学の新局面をひらく挑戦の書である。
感想・レビュー・書評
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いわゆるリベラリズム批判の書だけれど,リベラリズムについて勉強になる本.
著者が言うにロールズを代表とする「リベラリズムが正義に適った社会を構想するさい要請する理念的な個人に,いかにしたらわたしたちは近づけるのか,何がそうした個人と〈なる〉ことが妨げているのか,どのような社会であればそうした個人を生み出し,非暴力的な形で諸個人が対話を媒介としながら自らの力で社会を新たに構想していけるのか,と論じることで,リベラリズムの理念へと回帰していくような構成になっている」.
本書の構成はリベラリズムを基底とするシティズンシップ論の紹介,それを批判する各論者を紹介していくスタイル.紹介というとあれだが,シティズンシップという論点において整理し,まとめあげたことが本書における著者のお仕事ということになろうか.実際,学部生や一般人向けにも書かれているようだ.様々な議論を知ることができ勉強になる.
増補版で追加された章(初出2007年)でケアの倫理に触れている.今後の研究の第一歩となる内容である旨述べられているが,それから5年で話題となった『フェミニズムの政治学』として形にしていると考えると凄まじい仕事ぶり(もっとも,同書の出版は元になった博士論文の提出から1年ほどかかったというので実質4年ほどか).詳細をみるコメント0件をすべて表示