- Amazon.co.jp ・本 (222ページ)
- / ISBN・EAN: 9784768479629
作品紹介・あらすじ
死とは何か、幸福とは何か。虚栄心と名誉心、怒りと憎しみ、愛と嫉妬、孤独への恐れなど、人間であるかぎりまぬがれ得ないこうした感情とは何か。人間だからこそ生じるこうした問いに、哲学者・三木清はどうこたえたか。
1941年の刊行以来、多くの読者に人生の指針として長く読み継がれてきたロングセラー、三木清『人生論ノート』を、現代のベストセラー『嫌われる勇気』の著者・岸見一郎が読み解く。珠玉の人生論。
悩みにこたえるヒントがここにある。
感想・レビュー・書評
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幸福と成功の違い
成功は過程や進歩にかかわるものだが、幸福は存在にかかわるもの、人が人として存在することがそのまま幸福なのだ
幸福は各人においてオリジナル。
幸福は人格である。
「孤独について」社会化された感情に動かされないためには、個人の人格、知性、内面の独立を守ることが大切であって、そこに孤独の価値がある
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哲学者岸見一郎先生による、「人性論ノート」の解説本。最初の出版から70年以上も読み続けられている本だが、その意図するところを読み解くのは大変で、岸見先生の解説が大いに理解を深めてくれる。死と希望、怒りと悲しみ、虚栄、幸福と成功、孤独、愛と嫉妬など、普段身の回りにありながら、深く考えていない大切なテーマを考えさせられる。「幸福は質的なもの、成功は量的なもの」「我々の愛するものに対して、自分が幸福であること以上の善いことをなし得るであろうか」「成功と幸福を、不成功と不幸とを同一視するようになって以来、真の幸福はなんであるかを理解し得なくなった」
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留学先のドイツでハイデガーに学ぶ。
死と希望
死を恐ろしいと思わなくなる年齢とは?妻や知人の死を見たからか。「どんなに苦しんでいる病人にも死の瞬間には平和が来ることを目撃した」とも書いている。
亡くなった人を思い出す時、その人はここにいる。
幸福と成功
近ごろ幸福について論じられていない。「我々の時代は人々に幸福について考える気力をさえ失わせてしまったほど不幸なのではあるまいか」
国家総動員法が成立した三木の時代、滅私奉公、自己犠牲が奨励され、人間的な幸福の要求は抹殺されていた。
幸福については戦後も論じられず、高度成長期には、いつのまにか幸福は成功に置き換えられてしまった。
しかし、幸福と成功は違うもの。不幸と不成功も違う。幸福は存在に関わるのに対し、成功は過程、進歩に関わるものである。
幸福は各人のもの、人格的な、性質的なものであるが、成功は一般的なもの、量的に考えられるものである。したがって成功は他人の嫉妬を伴いやすい。
拝金主義も成功主義と同じ。成功主義者は報酬や地位で容易にコントロールされる。幸福は各人オリジナルなものであり、取り替えは効かないが、成功主義者の組織はいくらでも取り替えが効く。その組織に属する一人一人の個性や幸福や生命など関係ない。
幸福の追求とエゴイズム・利己主義の違いは原文を参照のこと。
幸福は感性的なものではない。幸福と幸福感は違う。他人から幸福そうに見られても、実際に本人が幸福でなければ意味はない。熱狂とか陶酔とかの高揚感や情緒的な幸福感とは違う。その極端な例が麻薬やドラッグ。
知性があれば、情緒的なものに訴え、ただ行動に駆り立てる反主知主義は幸福ではないと分かる。むしろ幸福を抹殺するものであると。
本当の幸福は伝染する。