海軍大学教育―戦略・戦術道場の功罪 (光人社NF文庫)

著者 :
  • 光人社
2.25
  • (0)
  • (0)
  • (2)
  • (1)
  • (1)
本棚登録 : 14
レビュー : 4
  • Amazon.co.jp ・本 (386ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784769820147

感想・レビュー・書評

並び替え
表示形式
表示件数
  • 海軍出身者が想い出と海軍大学校の教育の問題点などについて述べる、

  • 1993年(単行本1975年)刊。副題に「功罪」とあるが、本書では圧倒的に罪が大との感を強くする。例として、学生の「攻守は盾の両面で区別する必要はない…。英海軍もJ海戦後…艤装方針が変わった…。居住性と防御力について反省の余地はありませんか」との問いに対して、教官の嶋田繁太郎が「海戦要務令をもう一度読み直せ」と一喝した事実に如実に示されている。あるいは、山本五十六も油欲しさに、水から油ができる実験を技術系軍人の意見を無視して推進した等、些か合理的思考の欠如が過ぎよう。
    もちろん、統帥の本義を徹底的に窮理するとの観点から、硬直化した軍人勅諭・国体概念に公然と挑戦した寺本武治、海戦要務令の時代錯誤を認識し、間接的手法ではあるものの要務令軽視を説いた小沢冶三郎、英語教育の重視等、海軍大学校教育のリベラルアーツ化を推進した井上成美(海軍の空軍化論、新軍備計画論立案者)など、合理的思考の持ち主が皆無ではなかったが、大勢には影響しなかった。これは、井上が周りから嫌われ浮いていた事実からも明らかであろう。
    それにしても井上の慧眼には恐れ入る。本書から読解しうる範囲でも、彼の新軍備計画論は、太平洋戦争の推移を予言したものと評しうるからだ。なお、先の寺本が意見を求めたドイツのティルピッツ元帥が、常識教育を含む哲学的教育と歴史教育の重要性を説いていたのは、非常に示唆に富む。しかし、結果として、日本は独の緒戦の電撃戦に幻惑される等、情報の恒常的収集を軽視してきた事実を明らかにする。
    対米開戦の決定につき、独ソ戦の推移は極めて重要なファクターで、独の軍事物資(特に油・鉄)確保の実態(実はソ連に依存)には当然注目すべきで、その意味で、39年9月の独ソ信用協定、40年2月の独ソ経済協定成立と内容等を分析する要があったはず。逆に、航空戦に関心を寄せた一部米国軍人は、日本の真珠湾空襲を合理的思考から予期し、事前演習を実施。この差は大きい。なお、南京事件に連座した谷(第十軍所属師団長)が「追撃戦のとき略奪、強盗、強姦は…士気を旺盛にする」と講義で放言した点は、彼の本音を雄弁に語り、南京事件の傍証か。

  • 4-7698-2014-3 386p 1993・6・15 ?

全4件中 1 - 4件を表示

海軍大学教育―戦略・戦術道場の功罪 (光人社NF文庫)のその他の作品

実松譲の作品

ツイートする