軍閥興亡史〈2〉昭和軍閥の形成まで (光人社NF文庫)

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  • Amazon.co.jp ・本 (378ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784769822080

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  • 1998年(底本1958年)刊。

     著者は戦前に時事新報社編集局長、戦後、共同通信社理事長・時事新報社社長・産経時事主幹・産経新聞顧問等に就く。
     全3巻中第2巻。
     日露戦終了直後から大正デモクラシー期、昭和軍部テロ事件を経て、日中戦争開始期迄を叙述対象とする。

     1巻はそれほどだったが、2巻はなかなか面白い。勿論、昭和軍部テロ事件(2.26事件を含)や満州事変は最近の書にもあって新奇性は乏しいが、軍部から見える政党・内閣との関係は新鮮だ。

     まず、
    ① 軍部大臣(現役)武官制の容認とその内実を巡る駆け引き。
    ② ①の制度が、内閣への予算や閣僚人事(これは昭和期になってから)への軍部の容喙と干渉に利用された点で叙述の方向性を一貫させる(特に予算獲得の視座)。
     この視座で切り取る様は、政治決定における他の要素の存在を考慮に入れた上で見ても、なかなか新鮮だ。特に予算との関係を念頭に置いた点がそれだ。
     また、あの山県有朋が一目置いたとされる政党政治家原敬をして、当時の海軍の建艦計画などで国家予算の5割近くが軍事費を構成し、数年後には6割に達する目していた。
     加えて重要なのは、一時期は国家予算の25%程度まで減少していた軍事費が、武官制を盾に昭和10年代には5割近くまで増加した件だ。武官制のみが要因ではないだろうか、内閣存続のキャスティングボードを軍が握ったことになれば、軍の予算への容喙という観点からは無視し得ないだろう。
    ③ しかも昭和軍閥は、広田内閣倒壊、宇垣内閣流産に武官制を利用したきらいありと言及する点も同様。

     さらに
    ④ 田中義一と宇垣一成、加藤友三郎への高評価。
     経済力に即した軍備限界を弁え、軍縮不可避とした宇垣と加藤の評価はそれほど意外ではないが、田中評は驚く。
     勿論、田中外交へは辛辣だが(例、山東出兵は政友会の選挙対策)、内政面の「損して得取れ」という柔軟対応を指摘するあたりはこちらに新鮮な驚きを与えてくれる。

    ⑤ 本書はシベリア介入戦争が割に詳しい。
    ⑥ 現役武官制の改正(予備役も可と)に自分の馘と陸軍での地位を引換えに賛成した陸相木越安綱の存在も新奇か。そもそも良識派というものを軍人に設定するとしても、それは木越のような人物を言うと思うが…。
    等。

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