韓国を強国に変えた男朴正煕: その知られざる思想と生涯 (光人社ノンフィクション文庫 419)

著者 :
  • 潮書房光人新社
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  • Amazon.co.jp ・本 (358ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784769824190

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  • 40歳前後の人が読むと韓国の近代から現代までの流れがうまく繋がるのではないかと思う。歴史の中でも近現代はダイナミックで、今まさに変わりゆく世界、自分を取り巻く世界そのものが歴史の最前線だと感じさせてくれる。

  • 4-7698-2419-x 357p 2004・5・15 

  •  ケネディから指導者として認知された正煕は、米国からの帰途、日本に立ち寄り、池田首相と会談した。
    「われわれは戦争に負けたが、経済は今や戦前の水準を遥かに超えたのです。過ぎたことを今さら、ああだこうだとほじくり返しても仕方がない。過去は水に流し、同じ民主主義陣営に属する国として、仲良くしましょう。わが国は貴国に経済的支援を与えることが出来ます。まず経済を復興させることです。人間は生活が豊かになれば、考えに余裕が出来る。所得が倍増すれば、反対派は半減し、支持者は増えるのです」
     池田は事もなげに言った。正煕はにこやかな笑みを浮かべる日本首相を見ながら、李承晩(Syngman Rhee)前大統領がなぜ、対日交渉をストップさせたのかが分かった。植民地支配への反省のかけらもないこの加害者意識の欠如が、抗日闘士であった前大統領を怒らせたのであろう。

     1963年12月17日、新憲法発布とともに第三共和国が発足し、朴正煕(Park Chung-hee)が第5代大統領に就任した。

     強固な基盤の上に立った正煕は、いよいよ韓日階段に本腰を入れる。
    「国家百年の計だ。第二の李完用と国民から非難されても、会談は妥結させねばならない」
     李完用は、李朝の学部大臣(文部大臣)であったが、伊藤博文の脅迫に屈して乙巳条約締結に協力し、さらに韓日併合条約に総理として調印し、売国奴の代名詞となっている。

    「岸信介を知っているか。A級戦犯が総理になった日本に、植民地支配への反省があると思うか。彼らに過去の問題を持ち出して、話がまとまるはずがない。びた一文出さないだろう。李承晩の轍を踏んではならない。心にもない謝罪を貰ったところで、気休めにもならない。われわれは貧乏で、弱い立場なのだ。日本はわれわれが血を流した戦争でたらふく儲け、外貨保有は20億ドルを超える。その4分の1を回させても罰はあたるまい。それを元手にひたすら国力培養に励み、しかる後に言いたいことがあれば言えばいい。外交とはそういうものだ。それまで、過去の問題は先送りだ」

     正煕は、演壇の左後方を振り返った。白衣の民族服をまとった妻の陸英修は、場内の混乱をよそに悠然と来賓席に座っていた、だが、次の瞬間、崩れるように倒れ込んだ。頭から肩の辺りが、みるみる真っ赤に染まった。
    「早く病院に連れて行け!」
     正煕は警護員に命令し、妻が担架で運ばれるのを見届けてから、ふたたび演壇に戻った。そして、何もなかったかのように演説を続けた。

     東アジアは長い中華帝国一極支配時代から日本が急台頭した近代の二強一弱時代を経て現在は三国対等時代に向かいつつある。日本が突出したのは一時的な現象で、本来の姿に帰りつつあるということである。

  • 親日派、民族主義者、共産主義者、反共主義者、変節漢、独裁者、信念の人、など様々な評価を持ち、5・16軍事クーデターによって政権を奪取し、最後には暗殺されるという波乱万丈の人生を送った韓国大統領の生涯。
    強烈な世論の反対に遭いながら日韓基本条約を結び、そこで得た資金の大半を社会インフラ整備に着手。世界最貧国から先進国の仲間入りを果たした「漢江の奇跡」は彼抜きでは語れない。
    経済成長をはじめ、財閥、地域間の対立、ハングルの推進など彼が現在の韓国に与えた影響は非常に大きい。
    韓国の戦後史を理解したければ読む価値はある。

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著者プロフィール

は・しんぎ
ジャーナリスト。
著書に、
『韓国を強国に変えた男 朴正煕
――その知られざる思想と生涯』(光人社NF文庫)、
『酒鬼薔薇聖斗の告白――悪魔に憑かれたとき』
(元就出版社)、『韓国IT 革命の勝利』(宝島社)、
『金正日の後継者は「在日」の息子
──日本のメディアが報じない北朝鮮「高度成長」論』
(講談社)、
『証言「北」ビジネス裏外交
──金正日と稲山嘉寛、小泉、金丸をつなぐもの』
(講談社)、
『〝二人のプリンス〟と中国共産党
――張作霖の直系孫が語る天皇裕仁・張学良・習近平』
(彩流社)ほか。

「2017年 『日本改革の今昔』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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