最後の撃墜王: 紫電改戦闘機隊長菅野直の生涯 (光人社ノンフィクション文庫 542)

著者 :
  • 潮書房光人新社
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感想 : 9
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  • Amazon.co.jp ・本 (492ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784769825425

感想・レビュー・書評

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  • 前半は割と学園物。でも短い人生ですとそうなるかな…

  • 幼少期から死期まで、菅野大尉の一生を知ろうとするなら欠かせない一冊。
    某漫画にも描かれている様に元気一杯で破天荒、豪胆なエピソードが多い。しかし一方、啄木に傾倒した少年時代をすごした軟派な文学青年でもあり後年までその気質は残っていたように感じた。
    彼の死生観や特攻観が垣間見えるエピソードも幾つもあり、個人的な解釈に過ぎないが菅野大尉の考えに触れられた気がする。
    同期の記憶の中の菅野が揃いも揃って爽やかだったり颯爽として溌剌とか総じてかっこいい。
    多くの部下が「この隊長なら」と信頼し、心酔し、この人のためなら死んでもいいと思ったとまで語られる理由がわかる。

  • 旧日本軍の軍艦を調べていたある日、偶然目にした一枚の写真に写る若者が気になりその人物について調べていくと、菅野直という旧帝国海軍の戦闘機パイロットであることがわかった。

    本書には題名通り、その菅野直の出生から死を迎えるまで書き綴られている。
    23年の生涯はあまりにも短すぎると思えたが、当時の厳しい世相の中を精一杯に生きた一人の青年の生涯は大変濃厚なものであった。

    菅野直というと、その生涯を通じて子供のような腕白さを持つ人という印象が強い。
    大胆で、決して並の人間ではできないようなこともすいすいとやってのける行動力。でも、手に負えない乱暴者というわけではない。
    軍人となった後もその手の話は尽きない方だけど、一見粗野にも思える彼の行動の根幹には、常に守るべき他者の存在を感じる。それは友人であり、家族であり、部下でもある。彼の原動力というのはそうした身近な人のためにと、実にわかりやすく温かみのあるものであった。

    腕白で粗野。けれど、それがただの自己中心的な暴力ではないのは、彼が持つもう一つの面、文学少年であったことも影響するのではないか。
    荒っぽい一面と文学を好む繊細な一面。その反する性質からなかなか複雑な人柄であったことを考えずにはいられないが、かえってその質のおかげで戦乱の中にあっても今も語り継がれる伝説的な活躍をされるに至ったことだと思う。それを本人が良しと思うか否かは知るところではないが、当時の日本に対しマイナスの感情しか持てずにいた私が当時の人物(それも軍人さん)について書かれた本を手に取るに至ったように、入り口は違えど多くの人が彼に惹かれる。本当に魅力的な人であった。

    当時の軍人というと、とても遠い存在のように思えて仕方がないが(尽忠報国とか、個よりも全(国)と、とにかく個人というものを感じさせない雰囲気。民衆との間にも厚い壁を感じる)、この一冊を読み、菅野直という軍人の生涯を知ると、軍人もまたひとりの人間であり、それまでに至る人生や人間関係、趣味もあるという当たり前のことを当たり前と感じさせてくれた。
    菅野直の生涯として読むのも面白いが、軍人とはどんな人であったかという視点からみても今まで感じていたものが変わる、そういう一冊であった。

  • 漫画で菅野大尉のことを初めて知り、wikiで調べたところ、その人物像に一気に惹かれて気が付いたら本を買っていました。
    果敢に戦った元気いっぱいガキ大将な彼と、文学少年で石川啄木に傾倒していた彼。その二面性が大変魅力的でした。
    とにかくエピソードが面白く、そして泣かされるものばかり。
    近年の戦争については、精神的ダメージが大きいため、あまり積極的に知ろうとしていなかったけど、彼を知って、初めてちゃんと知ろうと思えました。
    よいきっかけになったと思います。
    23歳という若さで亡くなった彼を、また同じように戦って亡くなっていった彼の仲間たちを、忘れてはならないなぁと思いました。

  • 菅野隊長がすごい人だったというのは分かるけれども。

    戦争の犠牲者にでも仕立てたいのだろうか、この著者は。

    私はそうは思わない。
    菅野は自分でこの道を選んだのだ。

    今の社会でも、こういう人はいくらでもいる。
    戦争のせいではないのだ。私はそう思う。
    だからこの隊長はすごいのだ。

  • われらが角田市出身のエース。大胆不敵、傍若無人な軍人としての姿、中学時代では文学に傾倒する「軟派」な姿このギャップは面白い。某マンガでインパネを「バカヤロウ」と蹴飛ばし紫電改を生き返らせるシーンもあるが軍人としての姿はまさにそうだったのだろう。過酷な戦争という時代にありながらもさわやかさを持っているそんな人物であったのだろう。機会があればお墓へ伺いたい。

  • 太平洋戦争での海軍航空隊343空の菅野直氏の生涯を綴りながら、とりまく戦友達との青春を描いています。前半は、学生生活での交流、卒業時での開戦に伴い、一気に戦争色に変わり、紫電改を駆り終戦の匂いを感じつつ出撃していきます。戦争のノンフィクションでありながら、清々しさを感じます。

  • やんちゃな印象があったのですが学生時代に文学に傾倒していたエピソードや家族の話等で実際は大人しい優しい人だったのだと知りました。
    海軍入隊前と後で随分と受ける印象が違うのが心に残ります。
    『戦争』を身をもって知った彼の中で何が変わっていったのだろう、何を捨てて何を残そうとしたのだろう、と詮無いことを思います。

    終戦二週間前の死が本当に惜しいです。

  •  その正確は豪放磊落、清廉潔白、腕白小僧。小さい頃は軟派ものといわれていたが、大戦末期には紫電改に乗り、三四三空のエースパイロットであった。
     周りの人からの逸話が、彼の外郭をつくっていくが、その内面は幾分かかけ離れたものであったようだ。敵機を撃つ為にギリギリまで肉薄するその特攻にも似た精神は、実は文学を愛し、平穏を好む青年だった。
     終戦の二週間前に亡くなった彼を思うと、目頭が思わず熱くなる。

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