昭和20年8月20日日本人を守る最後の戦い: 四万人の内蒙古引揚者を脱出させた軍旗なき兵団 (光人社ノンフィクション文庫 719)

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  • 潮書房光人新社
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  • Amazon.co.jp ・本 (229ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784769827191

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  • 2013.8記。

    友人と内モンゴルの砂漠地帯での植林ボランティアに参加したことがある。北京から寝台列車で出発、万里の長城跡(といっても大半はただの石垣)を一昼夜横目で見ながら西にひた走る。

    昭和20年8月、4万を超す内蒙古在留の日本人がこの鉄道ルートを逆走する形で帰国したそうだ。その背後には、終戦を知りながら楯となってソ連と戦った在蒙古日本軍の存在があった。避難が完了するまでのわずか数日間、戦闘停止の「大命」に背くことに苦悩しながらも、日本軍将兵は火力で圧倒するソ連軍を食い止めた。線路際に直立して見送る兵士に車中の女性たちが手を合わせるシーンは落涙を禁じ得ない。

    全ての財産を放棄させることになる「引揚命令」を出すことを現地領事館がためらう中、在蒙日本軍は避難を強行した。脱出が間に合わなかった満州で起きたシベリア抑留の悲劇を思えば、この判断が結果的に正しかったことは明らかに思える。が、予防的措置、というのは往々にして評価されない。

    色々な種類の「戦争の記憶」を知る努力をささやかながら怠らないようにしたいと思う。

  • 終戦後の大陸引き上げの背後にこのような戦闘があったとは全く知りませんでした。旧軍、中でも陸軍の問題は多く見聞しますが、最前線では規律と使命感をもった兵が存在していたことが救いだと思いました。

  • 稲垣武といえば『悪魔払いの戦後史』が有名。戦後日本を考察するに貴重な文献であるものの、精神衛生にはよろしくなく、たとえばブクログの本棚に置いておきたい本ではありません。『朝日新聞血風録』は、出版された当時、一読して怒髪天を衝くような怒りをおぼえましたが、いまとなっては…。須らくかの新聞ごときの類は無視すべし。ジャーナリズムの病弊についてというよりも、一ジャーナリストの生き様というものをこの血風録は教えてくれます。さて、軍事に疎くてはジャーナリストなど務まりません。汝、『沖縄 非遇の作戦』を読まずして沖縄問題について語るなかれ。そして本書ですが、戦前と戦後の断絶をつなぐ一助となる快著です。暴虐の限りを尽くすあのソ連軍の侵攻を食い止めた日本人兵士たちへの感謝の念に堪えません。著者にとって、若い人にもっとも読んでほしい自著は、おそらくこの『昭和20年8月20日』です。

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著者プロフィール

ジャーナリスト

「2015年 『「悪魔祓い」の戦後史』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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