陸軍人事: その無策が日本を亡国の淵に追いつめた (光人社ノンフィクション文庫 805)
- 潮書房光人新社 (2013年10月31日発売)
- Amazon.co.jp ・本 (303ページ)
- / ISBN・EAN: 9784769828051
作品紹介・あらすじ
なぜ石原莞爾は満州事変勃発時に関東軍作戦参謀なのか。なぜ辻政信は失策しても要職を渡り歩いたのか。栗林忠道は懲罰人事によって硫黄島に派遣された…。日本最大の組織・帝国陸軍の複雑怪奇な"人事"を解明する!
感想・レビュー・書評
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軍人とはいえ上層部は官僚にすぎない。太平洋戦争は軍組織の硬直化がもたらしたともいえるのかな。
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本書を読む前、陸軍人事のイメージは陸大を出ればエリートコースというこことと、戦死すれば二階級特進ということとくらいだった。そんな省部や昇進の話だけでなく、一般の兵士に召集令状が届くまでについても網羅している。
簡単ではあるが、中国戦線の拡大が人事の面から触れられている。各地方の連隊は戦争が始まると予備役を招集し、師団は平時編成から戦時編成へと生まれ変わる。生まれ変わるというのも、兵士の人数が倍増するのだから大げさではないと思う。そして出征した師団の留守に、特設師団が設けられてまた新たな人員の動員が始まる。師団増設の連鎖の始まりである。
佐官で予備役だった者はポスト確保に向けた敗者復活戦の好機だし、尉官の者は組織の拡大による昇進の好機だし、下士以下の兵士にとっては戦闘による給与の割増という好機であった。しかも、下士官であっても出世しやすい環境だったという。
これは本当は非常に重要なことなんじゃないかと思う。出先が戦線拡大を自ら助長しやすい環境であるからだ。さらには憶測だが、戦前の日本が海外への移民を積極的に行っていたことを思えば、足りない国内の雇用の解消への希望だったのかもしれない。戦線の拡大が当時の国民の多くにとってメリットだったことをもっと知る必要がある。