陸軍大将山下奉文の決断: 国民的英雄から戦犯刑死まで揺らぐことなき統率力 (光人社ノンフィクション文庫 900)

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  • 潮書房光人新社
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  • Amazon.co.jp ・本 (382ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784769829003

作品紹介・あらすじ

軍紀に厳格、人間教育に一家言を持った名指揮官、山下奉文の葛藤とはいかなるものであったのか-太平洋戦争劈頭、シンガポールを陥落させ、栄光の頂点に立った稀代の将軍は敗戦後、最後の戦場フィリピンで刑場の露と消えた。優しさと残酷さを合わせ持つその人間性と戦場という極限における軍人の心理に迫る。

感想・レビュー・書評

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  • 講談社「死は易きことなり」改題文庫化。
    旧日本陸軍大将山下奉文[やましたともゆき]1885~1946の伝記。主にシンガポール華僑粛清事件(1947シンガポール、マレーシア)での山下奉文の関わり方に焦点を当て、現地の華僑、および加害者側である日本軍関係者に取材し丁寧に描かれています。
    また、二・二六事件(1936東京)への山下奉文の関わり方も深く掘り下げており、事件の概要もおさらいする事ができます。
    第二次世界大戦に於いて、日本軍は近隣諸国に迷惑を掛けた。と言うことです。近年は、被害を声高にする国に注目しがちでした。では、実際はどうだったの? ちゃんとお勉強してみたくなり、この本を手にしました。
    実際に裁判が行われ、判決の結果死刑判決も出され、執行されているこのマレーシア華僑粛正事件。最高責任者で粛正の指示を出した山下奉文本人は裁判当時は、別件(フィリピンで、命令を聞かない海軍が起こした住民虐殺事件)で死刑判決を受け、執行済み。現在は、首謀者は、辻正信(1902-1962?)の発案を押し切られた形で山下奉文が軍に下命したと認識されているようです。
    さて、被害者、加害者ともに丹念に取材した本書での評価は如何なものか。僕は「なるほど、そう言う感じかも知れぬ。」とリアリティーを感じました。
    国際ルポとしても、さすがにアメリカの大学で学んだ著者ならではの、通訳を介したインタビューの特性、記事にする際には、必ず複数の証言、証拠の一致、裏取りが必要であることも具体例を示して訴えており、ノンフィクション作品としても、読み応えのある一冊でした。

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著者プロフィール

太田 尚樹:1941年東京生まれ。東海大学名誉教授。専門は比較文明論。著書に、『パエリャの故郷バレンシア』(中公文庫)、『満州裏史─甘粕正彦と岸信介が背負ったもの』(講談社文庫)、『死は易きことなり─陸軍大将山下奉文の決断』(講談社)、『伝説の日中文化サロン 上海・内山書店』(平凡社新書)、『満州と岸信介─巨魁を生んだ幻の帝国』(KADOKAWA)、『ヨーロッパに消えたサムライたち』(ちくま文庫)、『満洲帝国史─「新天地」に夢を託した人々』(新人物往来社)、『支倉常長遣欧使節 もうひとつの遺産─その旅路と日本姓スペイン人たち』(山川出版社)などがある。

「2022年 『南洋の日本人町』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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