武士道 (講談社バイリンガル・ブックス)

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  • Amazon.co.jp ・本 (301ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784770024022

作品紹介・あらすじ

本書は、国際連盟事務次長として、「ジューネーブの星」と謳われた著者が、日本人の道徳観を支えている「武士道」を、神道、仏教、儒教の中に探りつつ、キリスト教、騎士道、西洋哲学と対比し、世界の人々に「日本の魂」を説き明かしたものである。

感想・レビュー・書評

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  • 日本人固有の精神「武士道」。命やお金ではなく名誉を大事にする精神。しかし、それは犬死という言葉があるように、命を粗末にすると訳ではない。己の信念を持ち、その信念を全うするために勉学に励むことが求められる。
    キリスト教が布教しなかった理由として日本文化を学ばなかったことがある。相手に敬意を持ってこそ、互いに理解することができる。
    自分の根源となる美意識を、少し理解できるようになる一冊。

  • 非常にわかりやすく書かれていてすばらしい本。西洋人向けなので、西洋の歴史やキリスト教での例えを山ほど使っていて、これぐらい読者に寄り添うという良いお手本。それができる教養がすごい。見開きで日英対訳なのも良いし、須知徳平という人の和訳も良い。岩波文庫より全然読みやすい。 

    出版された1900年は明治時代で武士道はまだ残っていたのだろうが、100年以上経った現代では一見もう残っていないように思える。本書は日本には宗教教育は無いが代わりに武士道があるというストーリーだが、現代は宗教教育も無いし武士道教育も無い。では道徳の掟は何なんだろう。実は武士道がまだ残っているのかも。この本を読んですっと入ってくるのだから、実はまだ残っているのかも。

  • この本の背景:日本という新しい国が世界にその雄姿を示す、日清・日露戦争の合間に出版された。
    その思想が西洋思想に比肩する点を強調した。

    仏教は武士道に、運命を穏やかに受け入れ、常に心を平静に保ち、性に執着せず、死と親しむ心をあたえた。

    知識というものは、これを学ぶものが心に同化させ、その人の品性に表れて初めて真の知識になる。ゆえに、武士道は知識を重んじるものではなく、重んずるは行動であった。

    「義」は「自分の身の処し方」を道理に従ってためらわずに決断する力であり、死すべき時は死に、討つべきときには討つことである。しかし、いたずらに死ぬことは、身分の卑しきものでもできる。生きるべき時には生き、死ぬべき時には死ぬことが真の勇気だ。
    また、不正や卑劣な行動をみずから近似、死をも恐れない正義を遂行する精神のこと。

    「勇」は、「ただしき事をなすこと」。
    勇気の精神的側面は、平静さにあり、その精神の均衡を乱されないことである。

    「仁」は、愛、寛容、他者への情愛として、人間の魂でもっとも気高きもの。
    「礼」は、他を思いやる心が外に表れたものでなければならない。社会的地位に対する正当な尊敬。
    この礼には真実と誠実、すなわち「誠」が伴う必要あり。
    「名誉」は境遇から生まれるものでは無く、個人個人が役割をまっとうに果たすこと。
    「忠義」「克己(己に勝つこと)」

    武士道では、個人より国家が先にあり、国家のために生きて死なねばならぬと考えた。よって、一族や家族の利害は一体不可分。

    武士の教育において重んじられたのは「品格」。知的才能はあくまで副次的なもの。

    日本人にとっては、感情を表に出さず、心が乱された時であっても、微笑みで心の平穏を取り戻そうとする。

    真の名誉とは、天の命じることをやり遂げることであり、それを遂行するために招いた切腹は名誉であるが、天が与えようとしているものを避けるための死は、まさに卑怯だ。
    武士道は生来の常識に支えられ、道徳的均衡を維持するための「道徳法廷」として、仇討の制度を作らしめた。

    夫が国のために身を捨てることとと同じように、妻は夫と家族のために身を犠牲にすることがあるが、当然、それは大変な名誉とされた。自己犠牲の精神は男性と女性の両方に見られた。

    女性は男性の奴隷ではなく、妻たちが果たした役割は、「内助」すなわち「内側からの助け」として尊ばれた。

    日本人が西洋近代化を成し遂げたその行動力の源泉は、内なる力、すなわち武士道であった。列島国として見下されることに耐えられない名誉心、これが日本人の最大の動機であった。

    武士道の終焉は、1871年に封建制を正式に廃止する廃藩置県と、その5年後の廃刀令。

  • 日本人の精神のようなものを武士道と名付け、言語化し一冊にまとめていただき、日本人としての自分のルーツのようなものを感じられた。ただし、12章の切腹および敵討ちだけがどうしても腹落ちさせることができないでいる。ここに関しては、もっと読み込むか葉隠など武士道に通づる本から学び取ろうと思う。


  • 明治32年(1899)に米国で出版された新渡戸稲造の英文の著作「武士道」の日本語対訳本。著者は、魂としての武士道を通して、日本の道徳観念の源を伝えたかった。国際人とは何かを考えるきっかけになる一冊。
    Inazo Nitobe found the sources of Japanese morality in Bushido, the Way of the Warrior.

    2023年1月期展示本です。
    最新の所在はOPACを確認してください。

    TEA-OPACへのリンクはこちら↓
    https://opac.tenri-u.ac.jp/opac/opac_details/?bibid=BB00200151

  • 2021.06.26
    今まで何回もこの本の海外からの評価を聞いていたが、偶然手にして読んでみた。
    素晴らしい!
    バイブルにしよう。出会えたことに感謝!

  • いつか読もうと思っていたものの数年経ってようやく読了。日本人が暗黙的に持っている精神的なものをここまで言語化できるのは素晴らしいと感じた。
    一時期テレビでもよく聞いた「惻隠の心」について、この本を読むことで思い出し、日本人の美徳を忘れないように生きていこうと思った次第である。

  • 何回か読むたびに理解が深まる。この内容を英文で書けるのはすごいの一言。日本人の無意識な部分を表現しているものと思う。

  • 課題図書、読了。ほぼ1日で読み終えました。

    新渡戸稲造が1900年に書いた武士道。

    明治という新しい時代に移り、失われつつあった武士道。
    海外に対し日本というものを伝えるために書かれたこの本は、100年以上経過した私に、当時の日本人の在り方、価値観を伝えてくれました。

    脈々と育まれた武士道という日本の価値観は、1世代経ってもなお、無意識の中で、今も生きているように思います。

    良くも悪くも武士道は変わり、私たちの一部になっています。

    改めて、私たちはどうあるべきなのか、問われている気がします。

    私も、以下の点において武士道をもっと取り入れたい、自分の在り方を高めたいと思いました。

    <要点>
    ①義
     自分の正義に基づいて判断、行動する。
     卑劣、卑怯なことをしない。フェアに。

    ②勇気・敢為堅忍の精神
     忍耐。困難を乗り越えやり通す。
     落ち着いた心の状態

    ③仁・惻隠の心
     愛情、情け。思いやり、他者への寛容。

    ④礼
     相手を思いやることで生まれる作法。礼儀。
     心身ともに行われてこそ意味がある。

    ⑤誠
     武士に二言なし。
     口約束で十分。契約や誓いは侮辱。

    ⑥名誉
     名を尊び、恥を知らない生き方をすること、
     恥を避けようとすること。

    ⑦忠義
     主君や師に忠義を尽くすこと。

    ⑧武士の教育
     全ては武士の行動につなげるための学び。
     必要なのは知識ではなく知恵。品性。
     品格の形成が第一
     富は智恵を妨げる。質素。

    ⑨克己
    不平不満を言わない。
    自分の苦しみや悲しみを面に出さない。自制。
    常に冷静でいる。

    ⑩自殺
     死生観。誇りを大切にする。

    11.婦人の教育
     女性の役割。家庭を守る。内助の功。

    12.武士道の感化
     武士の在り方は規範となり庶民にも電波。
     大和魂。


    P.S, NPOの時に、人の行動変容、文化作りをしようとしていましたが、数年単位ではなく、数十年、数世代かけて育まれていくものなんですね。

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著者プロフィール

1862年南部藩士の子として生まれる。札幌農学校(現在の北海道大学)に学び、その後、アメリカ、ドイツで農政学等を研究。1899年、アメリカで静養中に本書を執筆。帰国後、第一高等学校校長などを歴任。1920年から26年まで国際連盟事務局次長を務め、国際平和に尽力した。辞任後は貴族院議員などを務め、33年逝去。

「2017年 『1分間武士道』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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