千載一遇の大チャンス

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  • Amazon.co.jp ・本 (216ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784770041135

感想・レビュー・書評

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  • サブプライム問題で米国は次第に基軸通貨の座から堕ちていくだろうという予測がなされる中で、長谷川氏は当分の間は米国主導体制はゆるがないという論理を展開しています。

    米国の経済が少し悪くなっただけで、日本を始め、世界経済を牽引してきた中国、ロシア、インドまで大打撃を受けています。昨年秋頃からの経済変調の影響は、次第にその深刻さが明らかになってきています。この本において、長谷川氏の言われている、日米枢軸の世界経済が21世紀の人類に明るい時代をもたらしてほしいと切に願っています。

    以下はためになったポイントです。

    ・円高は長期にわたって続くものではない、2009年の年明けから、1ドルは105円程度の円安になると予想される(p35)

    ・1996年から世界のすべての国に対して、日本の技術貿易は黒字となった、2006年度の実績で8000億円である(p52)

    ・2006年の韓国全体の研究開発投資(1.2兆円)は、トヨタ自動車単体の投資額よりも少ない(p54)

    ・デフレは売り手に地獄買い手に天国となる、日本で売り手とは、地方の農家・中小企業の経営者である、買い手とは、大都市の住民が中心となる(p62)

    ・中国製の建設機械は3ヶ月でだめになるが、日本製のものは、5年以上は耐久性がある(p70)

    ・日本の製鉄所は例外なく、大量に発生する廃熱を電力にかえている発電所である(p82)

    ・デフレが定着する中では、余裕資金が大量に発生して、行き場を求めて金融市場をさまようことになる(p99)

    ・1982年に原油の先物取引がはじまった時は、米国産の中で最も生産量(日量200万バレル、現在は4分の1)の多い、品質の良い原油として、WTIが基準油種として採用された(p109)

    ・米国の投資銀行は、銀行と言う名前であっても、銀行法の規制を受けないし、民間銀行を監視しているFRBとの関係も存在しない(p111)

    ・2006年の世界全体の貿易量は14兆ドルである、決済期間を90日とすると、3兆5000億ドルの決済資金が必要、これだけの資金は、ニューヨークの米ドルを使わないと決済ができない、これがユーロ等の通貨が米ドルに代われない理由である(p115)

    ・今回の金融危機では、唯一日本円を例外として、ドルに対して下落した(p118)

    ・インドでの低価格自動車の発売計画は、2008年12月から、最低1年間先送りされることになった、これはほかの業界にも影響を与えている(p162)

  • ここ数年の長谷川さんの論調は、だいたいわかりました。

  • 右寄りな感じしますが読んでてなかなか面白かったです。

  • 長谷川慶太郎の最新刊(2008年12月29日発行)。世界経済全体を襲った「金融危機」は、日本にとってむしろ「ダメージ」が軽く、逆にそれをプラスに転じることもできる「千載一遇の大チャンス」のチャンスであるという。相変わらずの楽観論だが、日本が世界の流れを先取りしている個々の事例を挙げて論じているので、事実そのものは大いに参考にすべきだろう。

    日本は、「金融危機」の発生地であるニューヨークよりはるかに激しい株価の下落に見舞われたが、これは「換金売り」であって、合理的な採算に基づくものではない。したがって、「金融危機」の荒波から比較的安全だった日本に、資金を移動し、投資する動きが必ず起るだろうと、著者はいう。円高も長期に続くことはないと断言し、1ドル100円を割る円高は間もなく終息するのではないかともいう。

    また他の著作でも何度も指摘しているが、大きな戦争がない現在、経済の基調は必ずデフレになるという。原油や穀物の相場が高騰し、物価高に日本全体が不安におののいていたころも、著者のこの主張は全く変らなかった。変らないどころか、平和とデフレという基本的な流れに基づいて、21世紀はたいへん明るい時代になるだろうというのが、本書のテーマであり結論である。

    著者は、工業技術や軍事に専門的な知識を持ち、この分野での具体的なデータに基づいた主張は、傾聴するに値する。たとえば、これも著者の多くの本で取り上げられることだが、日本の工作機械の市場占有率が27%(2005年)と圧倒的なシェアを誇り、しかもNC(数値制御)装置つきの耕作機械など、その質のおいてもダントツの存在になっていること。大型原子力発電所を建設する能力は、日本にしか存在しないことなど。日本の技術力の強さは、今後ますます世界経済を下から支える基盤としての重要性を増していくだろう。また、米国の世界を圧倒する軍事技術という事実などに基づいてなされる、21世紀が「米国主導の一極支配体制」になるという主張も一考に価する。

    ただし、世界経済を襲った金融危機と世界同時不況が、なぜ日本にとって千載一遇のチャンスになるのか、金融危機のダメージが少なかったからだけなのか、その具体的な説明は、あまりなかったように思う。読後に物足りなさを感じたのはそのせいか。

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著者プロフィール

国際エコノミスト。1927年京都生まれ。1953年大阪大学工学部卒業。新聞記者、雑誌編集者、証券アナリストを経て、1963年に独立。1983年に出版した『世界が日本を見倣う日』(東洋経済新報社)で、第3回石橋湛山賞を受賞した。

「2020年 『中国は民主化する』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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