ハンガリーの民話

著者 : 池田雅之

• 恒文社 (1980年1月1日発売)

感想・レビュー・書評

[やまさんの感想 · 2023年3月17日]

ハンガリーの民話を扱った本としては先に岩波の『オルトゥタイ ハンガリー民話集』を読んでいたが、そちらよりも語り手の個性が前面に出た内容で、展開の柔軟さや臨場感が伝わってくる（収録された話には重複あり）。他地域でも見られる普遍的なモチーフを取り入れつつもティサ川にまつわる壮大な伝説が語られたり、マーチャーシュ王やラーコーツィ・フェレンツ2世、コシュート・ラヨシュにロージャ・シャーンドルといった歴史上の有名人が登場したりと地域色が楽しめる内容になっており、とてもおもしろかった。

収録作品
「おんどりとめんどり」「結婚式の狐と狼」「木から生まれたペーテル」「楓の木で作った笛」「正直な泥棒マルツィ」「うぬぼれ王様」「マーチャーシュ王と老人」「青髭王」「妬みの報い」「三つの願い」「二人の少女と鉄鼻の妖婆」「七羽の鴉」「ハンガリー人が本当に怒る時」「イエス様が疲れた時」「イエス様の喉が渇く時」「韃靼人がやって来た時」「なぜ人間は歳をとるのか？」「なぜある女はぐちっぽく、またある女は不精なのか？」「黄色い鳥」「マーニョーが死んだ」「さらわれた子供」「つむじ風と共にやって来た魔女」「狩りでの出来事（ラーコーツィ伝説）」「ラーコーツィと魔法使いの娘（ラーコーツィ伝説）」「コシュート・ラヨシュとロージャ・シャーンドル」「田舎を旅するコシュート」「義賊ゲステーン・ヨーシュカ、わが道を行く」「にせめくら」「羊飼いと腹を立てた妻」「薄ばかな靴屋の名医」「<真実>と<偽り>の旅」「髪の毛で首を胴体にしばりつけた奉公人」「頓智娘」「不精な娘」「牛乳の井戸」「口髭バンディ」「カツォル王」「星の王子と妖精のイロナ」「もらわれっ子とアニチカ」「ルダシュ・マティ」「マーチャーシュ王とトルディ」「鎖で岩につながれたゲルゲイ」「三本枝の樫の木の妖精」「美少女イブロンカ」「ティサの真珠」「勇者ヤーノシュと黒龍フェルニゲシュ」

著者プロフィール

昭和21年（1946年）三重県尾鷲市生まれ、東京育ち。早稲田大学文学部英文科卒業。明治学院大学大学院文学研究科（英文学）博士課程修了。現在、早稲田大学社会科学部総合学術院教授・同国際言語文化研究所所長。子どもと若者の育成プロジェクト、『鎌倉てらこや』の会長も務めている。専門は比較文学・比較基層文化論。著書に『複眼の比較文化』『想像力の比較文学』『共生と循環のコスモロジー』『ヨーロッパ世界のことばと文化』（以上、成文堂）『不登校・引きこもりをなくすために』（春秋社）ほか多数。主な訳書に、『小泉八雲コレクション』三巻、『キャッツ』（以上、ちくま文庫）『日本の面影』『日本の怪談』（以上、角川文庫）ほか多数。

「2006年 『野見宿禰と大和出雲』 で使われていた紹介文から引用しています。」