マローンおばさん

  • こぐま社
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感想 : 27
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  • Amazon.co.jp ・本 (47ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784772190244

感想・レビュー・書評

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  • ハンディサイズで、最後の英語の原詩を入れても47ページ。
    エリナー・ファージョンの一編の詩に、エドワード・アーディゾーニの挿絵がついている。
    【チムとゆかいなせんちょうさん】などのチムシリーズで有名な方だ。
    このペン画による挿絵の、またなんと繊細で素敵なことだろう。
    描きこみすぎず物足りなくもなく、質素でもじゅうぶん幸せな主人公をとても上手くあらわしている。
    見開きの左側に展開する挿絵だけを見ていても、じゅうぶんな物語。

    森の傍で貧しい一人暮らしをしているマローンおばさん。
    床の上に、古いぼろの荒布を敷いて眠っている。
    誰も、マローンおばさんのことを気にもかけない。
    そこに、月曜日から順にお腹をすかせた動物たちがやって来る。
    そのたびにおばさんが言う言葉は【あんたの居場所くらい、ここにはあるよ】。
    天国に召される最後は宗教色が入るが、そんなことは全然気にならない。
    なぜなら、【あなたの居場所が ここにはありますよ、マローンおばさん】という聖ペテロの言葉で終わるから。

    【君ひとりくらいなら守ってあげられるよ】と次々に声をかけてしまうため、大変な数になった我が家の猫たち。
    増えることを喜んでいるわけではもちろんなくて、ただ見ると放っておけないだけ。
    「幸せとは分け与えること」とか、「やさしさとはどういうことか」などというのは傍から見た見方で、【マローンおばさん】も、ただただそうしないではいられなかっただけのこと。
    自分もそうだから、よく分かる。
    食べ物や住みか、着るものを分けてあげたりすることが、楽しくてたまらないのだ。
    みんなで火にあたっている絵を見ると、おばさんがどんなに幸せだったかが分かるというもの。

    【どんな動物たちだって みんな生きていかなきゃいけない】・・その通り、まさに。

    エリナー・ファージョンの原詩も美しいけれど、日本語の訳も美しい。
    胸の中が、ぽおっと温かくなる一冊。
    ストーリーテリングのテキストとして借りたものだが、諦めて(笑)鑑賞だけにとどめておくことにした。
    ああ、読んでて私も幸せだった。

  • 大人向きの本。挿絵も素敵だ。分け与えるということが、いかに幸せか、挿絵と共に胸にせまる。マローンおばさんが天国の門の前に立った時、門番にかけられた言葉が心に残りました。何度も読み返したくなる。

  • 最期のとき、何を想うでしょう。

    地位も名誉も財産も、天国へ持っていくことはできません。

    その人が何で満たされているのか。

    どう生きてきたのか。

    天国の門の前に立ったとき

    神様にはどう見えるのでしょう。



    難しい宗教の本よりも、私にはこの本が響きました。

    私の居場所が、この本の中にあったからです。

  • 手のひらサイズの小さい絵本だけど、マローンおばさんの心はどこまでも広く、読み応え充分の絵本でした。

    マローンおばさんは貧しい暮らしをしていたけれど、飢えて傷ついた動物達に「あんたの居場所くらいここにあるよ」と言ってみんなを受け入れる。何でもみんなで分け合う。
    今の私にどれだけの事が出来るだろう。とにかく自分の周りの人から、そしてそれがずっと広がっていけばいいな。小さい絵本から広い世界へ。そのようなことを考えさせられる温かい絵本でした。
    原文の詩、ほとんどわからない。英語力の無さに涙。

  • へのへのもへじ文庫で、ファージョンの本やと借りてみた。どんな話かなと思ったら、これは、マローンおばさんがどんな人であるかをうたった詩なのだった。

    森のそばでひとり暮らしのマローンおばさん。おばさんをの様子をたずねる人はひとりとてなく、心にかける人もいない。

    おばさんの家へたどりついた、スズメ、ネコ、母ギツネと子ギツネ、ロバ、クマ―みな弱りはて、やせこけて、おなかをすかしていた。おばさんは、動物たちを中へ入れ、「あんたの居場所くらいここにはあるよ」と声をかけ、わずかずつでも食べ物を分けあった。

    「神さまは ご存じさ、どんな動物たちだって みんな 生きていかなきゃいけないってことを」(p.25)

    訳者があとがきで、この主人公のおばさんはファージョン自身に似ているといわれます、と書いている。彼女のところにはみんなの「居場所」があったとも。

    "There's room fer another"、「あんたの居場所くらいここにはあるよ」とおばさんは誰に対しても言い続ける。

    『町かどのジム』や『ムギと王さま』などと同じく、アーディゾーニのカバーと挿絵がまたいい。

    (10/4了)

  • 【あんたの居場所くらいここにはあるよ】

    寂しく一人森の中で暮らすマローンおばさん。

    決して裕福でも、身体が自由にきくわけでもない。

    それなのに、家に辿り着くたくさんの動物たちを温かく助ける。その姿にどこか心をよせてしまう。

    素敵な詩、そして挿絵、そこに抜擢された翻訳者のあとがきも熱意に溢れていて好きでした。

    居場所があること、その安心感をこの絵本に感じられたら嬉しい限りです。

  • 子供の頃からモノクロの挿絵は寂しそうで苦手でした。
    底無し沼のような不気味な深さが忍び寄ってくるようで
    苦手だったのでしょうか。
    困ったもので大人になっても引きずっておりました。
    そんな私をファージョンの「マローンおばさん」は
    優しい詩のような語り口で
    そしてモノクロでも暖炉のように優しい挿絵で
    この困ったトラウマを払拭してくれました。
    宝物です。我が家に届くまで
    こんな可愛らしい大きさの本だというのは知りませんでした。
    最後に英詩もついています。
    この本を制作された方々の愛情を強く感じる本当に良い本です。

  • "社会に居場所を失い、非行に走る子どもたち。そんな少年や少女に寄り添い、30年以上、その立ち直りを支えてきた女性がいる。“ばっちゃん”こと、元保護司の中本忠子(ちかこ)さん82歳。長年の経験から「非行の根っこには空腹がある」と確信した中本さんは、広島市内にある自宅を開放し、手料理を振る舞い、親身になって相談にのりながら、多くの子どもたちを更正させてきた。そんな中本さんと子どもたちの8年間の記録。"

    NHKホームページより。
    2017/1/7放送のNHKスペシャルで取り上げられた"ばっちゃん"、知人とその話をしていた時に紹介してもらったこの絵本。

    ばっちゃんもマローンおばさんも、ただ目の前のことに淡々と対応してるだけなんだろうな。
    ボランティアが自分さがしみたいになってしまう、それはかならずしも悪いことではないけど…助けが必要なものをただ助ける。そういう姿に学ぶことは多い。


  • 災害用持ち出し袋に入れておきたいと思った。

    「汝、隣人を愛せよ」というキリストの教えが基底にある。

    他者を慈しむ人が報われるようになっていて、カタルシスがある。

    現実では報われないこともある。それでも、相手を思いやって行為した記憶の積み重ねが、結果として自分への信頼になり、それが自分を支えてくれるときが来る。

    まわりまわって自分のためになるから情けをかける、というのとは違って。

    他者を他者として思いやることの尊さが、挿絵やことばひとつひとつに詰まっている。

  • 自分の居場所が見つかる大人向き絵本

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