アナログの逆襲: 「ポストデジタル経済」へ、ビジネスや発想はこう変わる

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  • Amazon.co.jp ・本 (400ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784772695626

作品紹介・あらすじ

::ポストデジタル経済へ、ビジネスや発想はこう変わる::

なぜいまアナログなモノや発想が、世界中で再注目され、ヒットしているのか?

・新世代  ------ 「リアルなモノや体験」が好き
・GAFA(デジタル有力企業 ) ------ 「アナログな発想や創造性」を重視
・仕事や教育  ------「人間的な共感・コミュニケーション」の再構築

デジタルの先にあるアナログへーー
アナログの隠れた力を明らかにし、大転換の深層を読み解く超話題作!

★年間ベストブック、多数!
 ーー『ニューヨーク・タイムズ』年間TOP10ブックスほか

★デジタル界の先導者、ケヴィン・ケリーも激賞!
 ーー「デジタルが進展するほど、アナログはいっそう重要になる」

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::目次::

はじめに: ポストデジタル経済へ

PART(1): アナログな「モノ」の逆襲
第1章: レコードの逆襲
第2章: 紙の逆襲
第3章: フィルムの逆襲
第4章: ボードゲームの逆襲

PART(2): アナログな「発想」の逆襲
第5章: プリントの逆襲
第6章: リアル店舗の逆襲
第7章: 仕事の逆襲
第8章: 教育の逆襲
第9章: デジタルの先端にあるアナログ

おわりに: 夏の逆襲

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::著者:: デイビッド・サックス
ジャーナリスト。ビジネスやカルチャー分野を得意とする。
『ブルームバーグビジネスウィーク』『ニューヨーク・タイムズ』『ガーディアン』などに寄稿。

::訳者:: 加藤万里子
翻訳家。訳書はアニー・ジェイコブセン『ペンタゴンの頭脳』、モイセス・ナイム『権力の終焉』、
エレナ・ボテロ&キム・パウエル『最速でトップに駆け上がる人は何が違うのか? 』ほか。

感想・レビュー・書評

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  • ペーパーレスなどサブスクリプション型音楽サービスなどデジタル化が進む中、逆にアナログの魅力が再確認されていることを書いた一冊。
    文中、著者は何度もデジタルが駄目と言っているわけではないと断っているが、だからこそ何故アナログを選ぶのかということがある程度客観性を持って書かれており大変おもしろく読んだ。
    事例は欧米が中心だが、日本にも遅かれ早かれ広がってくることと思う。デジタルとアナログ、それぞれの魅力があることは間違いないと思うので、流れに注目していきたい。

  • もしデジタルがアナログより前に現れていたら、アナログがデジタルを駆逐していたかも。ネット広告は費用はかからないけど、みんなすぐバツを押して消すので、実は見られておらず、出版の広告の方がみんな見ているとか、随所になるほどと思わせる、デジタルに囲まれている時代だからこそのアナログの良さが、いろんなテーマで書かれていました。テクノロジーの進歩と雇用創出のギャップ。技術革新は失業という脅威を生み出している。これも、最近のチャットGPTに絡むスト騒動を見ても納得。まぁ結局は、著者も書いているとおり、いかに両立させるかということと、新しいものが常にいいとは限らない、その時の状況に応じて最善の手段を使いながら、ベストを目指すことが大事だと感じました。

  • デジタル化が進む社会において、そのアンチテーゼとしてのアナログ復権をいろいろな事例を踏まえて紹介しています。例えばレコード、フィルム、紙の手帳、ボードゲームなどですが、確かにレコードは日本でも再ブームが起こっているようで、これは欧米だけの現象ではないのでしょう。

    本書の率直な感想ですが、テーマは大変面白いのですが、記述が冗長的な印象は正直否めず、途中何度か脱落しそうになりました。またタイトルも「アナログの逆襲」ということで、ゆきすぎるデジタル化に対する反動としてアナログの復権が起こっていることを主張してはいますが、このようなアンチテーゼ的なパターンは、そもそも産業革命以後の工業化の過程でも常に提唱されてきたわけです。その最たるものが工業社会での「自然に還れ」的な運動で、本書の「おわりに」にも書かれていた、ウォールデン的な生活様式が該当します(*ヘンリー・デイビッド・ソローによる、米国ボストン近郊のウォールデン湖畔での生活を記した『森の生活』は私も大好きな本です)。そのため本書面白いとは思いましたが、デジタルのアンチテーゼとしてのアナログ復権というストーリー展開は、ある程度想定内ではありました。

    むしろ最後に紹介されている、ケヴィン・ケリーの「将来はデジタルとアナログが融合する」というコメントの方が大変興味がありました。「デジタルかアナログか」という二項対立はまるで「1か0か」の議論であって(それこそデジタル的思想)、ケヴィン・ケリーの述べているお互いが溶け合う世界観、それが正しい未来像ではないかと個人的には思いました。テーゼとアンチテーゼが昇華したジンテーゼのようなものです。ただ著者も最後は両者の融合について述べていたので、そこは共感できました。

  • 研究書、インタビュー集、エッセイを混ぜた感じ。

    コロナ禍以前の2017年の刊行だが、本書のテーマは大きく4つ。
    ●アナログ商品市場の再形成
    ●ECは世界や各国の数社を除けば赤字
    ●デジタル自体に教育効果は無い
    ●GAFAなどデジタルサービストップ企業ほど業務ではアナログを重視している

    ●アナログ商品市場の再形成

    特に分かりやすい例としてレコードが挙げられている。
    現役を引退した高齢者でなく、若い世代を中心にレコードの市場が急拡大している。
    本書では2017年時点でアメリカのレコード製造工場がフル稼働状態であることが書かれているが、2021年に日本国内についても同様の報道があった。

    ここには音楽を聴く側、供給する側の利害の一致がある。

    聴く側については、レコードが若い世代交代にとって「新しい体験」であることが挙げられている。
    とはいえ、それが音楽ダウンロードやストリーミングに取って替わるとはされていない。

    一方、供給する側にとっては、ストリーミングで100万回再生されても収入がたった16ドルだったミュージシャンを例に挙げ、それに比べれば「物理的なレコードの販売による利益率は莫大」、つまり生産性が高いことが挙げられている。

    ●ECは世界や各国の数社を除けば赤字

    物理的にモノを届けるECは、利益を確保するのは困難か、不可能に近い。
    これはAmazonが通販事業を黒字化するのに20年を要し、黒字になっても利益が微々たるものであることから明らかだ。
    AppleはわざわざAppleストアを実店舗展開しているし(これはスティーブ・ジョブズが強硬に進めたらしい)、Amazonも実店舗を出店・模索してきる。
    日本でいえば楽天は黒字に見えるが、実態としてはモール(仲介)であり、在庫保管、発送作業、ロス負担を実際にしているEC出店者が利益を確保するのは簡単なことではない。
    (例外的なケースとしては実店舗を備えた企業が補完的にECを展開している場合である)

    また、ECに限らずデジタルサービス市場は「少数の勝者による総取り」の世界であり、少数の勝者と多数の敗者を生む。
    また同様に、少数の富裕層と多数の貧困労働者層を生む。

    ●デジタル自体に教育効果は無い

    AppleやGoogleの製品をはじめとしたデジタル端末やサービスを導入した結果について、アメリカにおける検証研究では、学力は変わらなかったか、下がったものがほとんどである。
    これはアメリカ国内でも、途上国でも同様だった。

    州全体にiPadを配ったものの、効果がないことからデジタル端末による教育を取り止めた州もある。

    それにも関わらず、相変わらず生徒がデジタル端末を持たせられているのは、教育市場規模がAppleやGoogleに取って魅力的であり、行政や学校はそれらを教育に取り入れることがアピールになるからに過ぎない。

    途上国に必要なのは、iPadでなくガタガタしない机や清潔なトイレである。

    ●GAFAなどデジタルサービストップ企業ほど業務ではアナログを重視している

    著者は実際に各社にインタビューを行い、アナログな方法を重視していることを確認している。
    Googleは、設計やデザインを紙に手書きする講座を全員受講しなければならないし、実際にサービスを作る際も最初は手書きから始まる。
    手書きや紙を重視しているのはアドビも同様である。
    スティーブ・ジョブズは子供にiPadを持たせなかった。

    つまりこれらの企業がデジタルサービスを提供しているのは、あくまで「商売」であり、業務の全てにデジタルが有効でないことや、むしろデバイスやゼロイチに制約されないアナログのほうが創造的であることは、デジタルサービス企業ほど良く知っている。

    ●著者は「おわりに」で述べている。
    Facebookは「急げ、そして破壊しろ」と言う。
    しかし「破壊のための破壊」の後に何が残るのか。
    修理する時間も必要ではないのか。

  • ■著者が扱っているメインテーマ
    デジタルにないアナログの良さが人間に与えるモノとは?

    ■筆者が最も伝えたかったメッセージ
    アナログの中にある非効率、制限、画一化されていない欠陥に
    人間の感情を刺激するものがある。
    (デジタルがそぎ落としてしまったものこそ人間には必要)

    ■学んだことは何か
    デジタルにないアナログの力は、人間社会に欠かせないものである。
    リアルな体験、アナログな発想や創造性、人間的な共感、対話の構造は
    アナログの中でしか生まれてない。
    アナログは、人とのつながり、教育、創造するなど感情をはぐぐむものとして
    メインで活用し、デジタルはそのメインの補助ツールとして活用すべきだ。

  • デジタル万能と安易に考えるべきでは無いと気付かされた本。
    一過性のアナログブームとは異なる本質、デジタルビジネス一本足の難しさを再認識した。

  • ふむ

  • タイトルに騙された。という感が否めない。

  • レコード、紙の本モレスキンのノート、フィルム、ボードゲーム、などが復活している。

    プリントの復活。印刷物のほうが価値が高い。

    送料無料は、出品者が払っているから、ということを認識する。シェアを取るため利益を犠牲にしている。
    デジタルブランドも実店舗を必要としている。

    デジタルは独占要素が大きく、健全な業界は育たない=雇用創出効果が少ない。

  •  レコードは死んでなどいなかった。音楽業界の売上をほぼ独占していた全盛期と比べれば、新規リリースの売上こそ急速に落ち込んだが、市場にすでに出回っている膨大な数のレコードはモノとして実在し、簡単に消滅しない。レコード店、フリーマーケット、家の地下室にある棚や段ボール箱のなかで眠っているだけだった。(中略)MP3の登場はレコードよりもCDに打撃を与え、CD(デジタル・ファイル)に勝る本物の音も美的なメリットもない)は移動性にすぐれて場所をとらないMP3にいたるさびれた通過駅に成り下がった。(pp36-37)

     レコードは大きくて重みがある。それに、お金と努力とセンスがなければ、作ることも、聴くこともできない。さらに、親指でそっとなぞり、状態を確かめてくれと訴えてくる。購入者は、お金を払って手に入れるからこそ、所有していると実感できる。それが誇りにつながるのだ。(p.38)

    「実のところ、紙にいちばん関心を持っているのはデジタル世代なんだ」とMOOに紙を卸しているニューヨーク州北部の創業85年の製紙会社「モホーク・ペーパー」のクリエイティブディレクター、クリス・ハロルドは言う。「ノスタルジックな気持ちからじゃなくて、単純に紙が美しくて新鮮だからだ。彼らにとってデジタル機器は便利なプラットフォームだけど、印刷ならデジタルではできないやり方で情報を整理できる。ウェブは、情報の無限ループにすぎない」(p.90)

     新雑誌は、数百から数戦というささやかな発行部数からスタートして、愛読者のコミュニティを通して徐々に読者を増やしていく。創刊号を数十万部刷って全国の書店に並べる、という伝統的な出版社のやり方とは正反対だ。それにもかかわらず、この10年間に創刊されたインディペンデント誌の多くが、多国籍出版社の雑誌の発行部数に迫りつつある。(p.78)

    「26ドルを本に使ったら、知性を刺激したい、文学と関わりたいと強く望んでいる証だ。知的好奇心を満たせる生活を手に入れたということなんだ。いまの時代、本を買ったり読んだりするのは、いちばんハイレベルな消費者だけだからね。つまり、お金の余裕があって、高い教育を受けた消費者、小売店が待ち望んでいる客たちだ。そういう客は黄金のように大切にされるべきだ。本は消費ピラミッドの頂点なんだ!」(p.235)

     20年間の学校生活を振り返るとき、私が覚えているのは特定の科目でも、教材でも、教室でもない。私が授かった教育に命を吹き込み、私の興味を促してくれた恩師たちだ。永い一日のあいだ、硬い椅子に座り、数々の困難にぶち当たっても、私が学ぶことへの情熱を失わぬように努めてくれた。彼らと彼女たちは偉大だった決して高くない給料で、さまざまなひどい扱いに耐えながら、教わった知識よりもはるかに価値のあるいまの私を作ってくれた。(p.316)

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著者プロフィール

ジャーナリスト。ビジネスやカルチャー分野を得意とする。
『ブルームバーグ・ビジネスウィーク』『ニューヨーク・タイムズ』『ガーディアン』などに寄稿。

「2018年 『アナログの逆襲』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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